魔法でお金を作ってはいけない理由

あおいそこの

報復されるから。

お金を作り出すことはこの世界では犯罪になる。きっとどこの世界でもそうだ。


魔法が使えるこの世界でも。


ここ、ワンダーランドでも。


何故かというとバレてしまうから。いつかきっと誰かの損になってしまうから。人の魔力は有限で、人によって総量も大きく異なる。故にいつか消えてしまうものしか作り出せない。


水を作り出してもいつかは無に帰す。

炎も、土も、木も、なにもかも。森羅万象全て。


不可能に思えるようなことも可能にできるのが魔法だ。だからこそ気をつけなければいけない。

自分の力には限界がある。バレたときに魔力の痕跡が残るからむやみやたらにワンダーランドの法に触れるようなことをしてはいけない。


お金を作り出すことは魔法のABCを教わっていない子供にとっても造作もないこと。けれどバレないようにするにはそれに常に魔力を割き続けなければいけない。


積み上げ続けなければいけない。自分の魔力が寝たり、食べたりして回復したとしても作り出したお金の分だけ、それを消さないために必要な分だけ減り続ける。量に比例する。


そしていつか魔力が尽きたり、瞬間的にでも魔力量がゼロになった瞬間硬貨は消える。


何より死んだ時に魔法で作られた森羅万象は全てが消え去るのである。魔法で保たれていた家は崩壊するし、結界の魔法も少しずつ自然に近づいて行く。


だから多くの魔法使いは木を組み立てて家を作る。お金が払えない時には自分の身の回りの物を売ってお金にする。強い魔法使いは寝る時や、物騒な噂が広まっている時にしか結界を張らなかったりする。


お金の例に戻る。


基本的に魔法で守られているところに金は置かれている。もし置かれていなかったらそれは保管者、管理者の責任になる。ワンダーランドはそういうところだ。お金が消えると責任者が魔力の揺れを感知し、誰の仕業かを確認する。


ワンダーランドは大きくない世界だからみんながみんな顔見知り。話したことはなくても、食を共にしたことがなくても、なんとなく知っている。その程度の関係性が保たれている。


その中には仲良しグループがあったり、強い人同士の対立、一族。そういうものあるし、起こり得る。


このワンダーランドでは空想を現実に出来るから、自分含む損害が許せないのだ。頑張れば叶うのだからせこい方法を使わなくたっていずれは叶う。そのステップを無視すること。それはいけないこと。


裏技のように決まり事を無視して自分だけの利益に突っ走るやつは二度とそんなことが出来ないようにワンダーランド全体から制裁を食らう。


何度も続けば追放されて二度と魔法が使えないように言葉を奪われる。記憶をいじられて魔法を思い出せないようにさせられる。強い魔法を継続的にかけられて魔法を発動しようとする度にストッパーが働く。


人に対してもそうだし、自分に対しての損はさらに敏感になる。

自分が負いたくないのならば、他人にも追わせないように。


他人にしたことはどんな形であれいずれ返ってくる。


ワンダーランドの全ての生物がそう教わってくる。

喋る花木、イモムシ、猫、犬、うさぎなど動物。言葉を持って人のように会話や、営みを交わせるワンダーランド。

人を傷つけずに、自分の欲を達成させることが簡単に出来るから尚のことを気を付けなければいけない。人に対しても。自分に対しても。


よって魔法が使える世界でもお金を作り出してはいけない。


【完】

あおいそこのです。

From Sokono Aoi.

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