第17話 ランス頑張れ(オリヴィア視点)
*遅くなりました。なんとか本日中にUPできました。
ギルベルトから使いが来た。ブリーデン公爵家で話がしたいと。
ランスのことか。
最近はべべは好きな刺繍でテオドールのドレス作りを手伝っているらしい。
問題はそれだろうか。
母は、ランスが戻ると思うように仕事ができないから、王妃である伯母様にべべを預けたと言っていた。
ギルベルトは何をするためにブリーデン家にくるのだろう?
そりゃランスの話だろうな。離婚させてテオドールの嫁にするとでも言いにくるのか? それともランスにどうにかさせろということか。
さて、どうしたものか?
全てはランスが悪い。ランスがべべにと話をして、自分はべべが大好きと伝えればいいだけなのに。
実家に向かう馬車の中でため息を大量生産した。
実家に到着すると、もうみんな揃っていた。
「王国の若き獅子にご挨拶申し上げます……」
「オリヴィア姉上、ふざけてるだろ?」
ギルベルトが尋ねる。ふざけてますよ。
「ふざけないとやってられないでしょ? ギル、今日はランスとべべのこと?」
「あぁ、みんなはどうしたいんだ? ランスと離婚させてテオと再婚させるつもりか?」
そうなの?
母はギルベルトを見てふふふと笑った。
「それもいいわね。ランスとべべちゃん次第よ」
確かにふたり次第だ。
「ランスは?」
私は母に聞いた。
「お城に行っているわ。べべちゃんに会わせろって座り込みしてるらしいわ」
何をしているんだか。
母はまた笑っている。
「とりあえずドレスができればべべちゃんは戻ってくるから、そこでランスがどう出るか見ればいいんじゃないかしら? そこでランスが変わらなければ離縁もあるわね。だってべべちゃん可哀想じゃない?」
母は離婚してもいいのだろうか?
「叔母上は離婚してもよろしいのか?」
ギルベルトは眉根を寄せている。
「そうね。べべちゃんはどちらが幸せなのかしらね。私達はいつもべべちゃん抜きで話をしているでしょ? ランスと結婚する時も誰もべべちゃんの気持ちは聞いてないし、今ここでランスとの離婚やテオとの結婚の話をしているけど、べべちゃんは蚊帳の外でしょう。私はべべちゃんが自分の意思でランスと離婚してテオと結婚するならそれもありだと思うの。あくまでべべちゃんの意思ならね。それにテオはどうなの? あの子はドライだからべべちゃんに愛より利益を感じているんじゃないかしらね。結婚したら仕事のパートナーとしてずっと一緒にできるとか。引き抜きされないとか」
なるほど。私もべべの気持ちを優先させたい。べべはどうしたいのか?
とりあえずランスに話をさせなきゃな。
「ギル、とにかくドレスが完成さたらべべをここに戻して。それから先はしばらくそっと見守りましょう。べべが決めるから」
ギルベルトは頷いた。
「わかった。私としてはランスを応援したいな。あいつはべべちゃんに振られたら使い物にならなくなるからね」
確かにそうだわね。引きこもるか自害するかもね。
「私もテオにドレス頼んでいるだけれど、あなたのお嫁さん優先で後回しにされてるのよ。テオに早く作ってと言っといてね」
母がどうでもいい話をする。
それにしてもランスはべべに会えないまま王宮でもんもんとしているのか。なんだか笑いが込み上げてくる。我が弟が拗らせている間に横から掻っ攫われなければいいけど。
それからしばらくしてべべが戻ってくると母から連絡が来たので実家でべべを待っていた。
公爵家の家紋の入った馬車でべべとドロシーが戻ってきた。
「お義姉様〜、来てらしたのですか。やっと帰ってこれました」
「お疲れ様。ドレスは完成したの?」
まだ仕上がってはないのですが、私の刺繍を刺すところは全て終わったので帰らせてもらいました。やっぱりここに帰ってくるとほっとします」
おぉ! ランスが一歩リードかしらね。
「帰り際にランス様が何度も訪ねてきてくださったと聞いてびっくりしました。忙しくて私のところまでランス様が来られているとお話がこなかったのでお会いできなかったのです。ランス様怒ってらっしゃいませんか?」
テオドールが意地悪して取り継がなかったことをべべは知らないようだ。
「ところでランス様は?」
「ランスは王宮で仕事よ。すれ違いね」
「あら、まぁでも、夜にはお戻りになられるでしょうし、それまでちょっと荷解きをしてのんびりしますわ」
べべは自室に戻った。
仕事が大変だったのか少し痩せていたような気がする。
それにしてもこんな時に仕事とは、神様はきっと面白がっているのだろうな。
*オリヴィアと王太子のギルベルトは従姉弟です。今回はブリーデン公爵家の中でプライベートな会話なので砕けた話し方になっています。
公式の場では、ふたりとも王太子とゲイル小公爵夫人の猫を被ります。
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