第16話 私は丸くおさめたい(王太子・ギルベルト視点)
「テオドール、ちょっといいか?」
「なんですか? 今忙しいんですよ」
テオドールは私の弟だ。年が8歳離れている。ふたりいる妹達はそれぞれに友好国に嫁に行ったので、この城に残っているの兄弟はテオドールだけだ。
テオドールは変な男で子供の頃からドレスが好きで将来はドレス工房を作りオーナーデザイナーとして暮らしたいと言い、この国のアカデミーに入学する前に、妹の嫁ぎ先の国にあるドレスメーカーの養成校に留学していて、私が隣国に行っている間に戻ってきていた。
私の婚約者のドレスを作ってプレゼントしたいと母が言ってくれていたのは知っていたが、まさかテオドールとべべちゃんと、数人のお針子さん達が城に泊まり込み、作っているとは驚いた。
「テオドール、ランスが戻ってきたし、べべちゃんは通いでは無理か?」
「ソフィア叔母上の提案なんです。ランス兄上が戻ってきたらべべちゃんは身動きが取れなくなるから、ドレスの納期が間に合わなくなる。それならいっそドレスが出来上がるまで王宮に泊まり込んだらってね」
ソフィア叔母上か。
ソフィア叔母上は母の妹でランスの母上だ。母とよく似ていて見た目は優しいが中身ははっきりしている。テオドールもそうだ。見た目は優しいが中身は苛烈だ。
「ランス兄上とべべちゃん、うまく行ってないなら僕がもらっちゃおうかな? べべちゃんなら仕事も一緒にできるし、大歓迎だよ」
「お前、口が裂けてもそんなこと言うなよ。ランスに消されるぞ」
ランスがべべちゃんと結婚するために何をしたか私は知っている。
弟は口はたつが腕はからっきしだ。ランスは口も腕もたつ。腹黒策士だ。テオドールを陥れるなど朝飯前だ。味方に持つと頼りになるが、敵に回すと恐ろしい奴だ。まぁ、べべちゃんの前では完全に残念なヘタレ男だかな。
「兄上、ランス兄上はまだ別れた元婚約者が好きなんでしょう?」
「えっ! 無い無い。元から全くそれは無い」
「そうなんですか? べべちゃんはそう思っていますよ。隣国でランス兄上が、元婚約者に会ったことを聞いて、べべちゃんは心痛めていたみたいですよ」
なんだそれ。
「早くランス兄上に言って誤解を解かないと。溝は深くなりますよ」
「全くランスはヘタレ過ぎるし、べべちゃんは天然過ぎるな。とにかくランスに話をするよ。おまえはあまりべべちゃんにベタベタするなよ」
「どうしよ~かなぁ~」
テオドールは笑いながら部屋に戻った。
あのふたりはお互いに拗らせているわけか。ランスは好きすぎて拗らせているし、べべちゃんはランスはマデレイネ嬢が好きだと勘違いしている。確かにマデレイネ嬢は凛とした美人だからな。
ランスがちゃんと会話をすれば全て解決するのに。あ~めんどくさいな。
中に入るべきか、ほっとくべきか?
でも、確かにランスと、離婚してテオドールのところに来てくれたら、父母は大喜びだな。私の妻もべべが義妹なら年も近いし。淋しくないだろう。
それもありかもな。
いや、無い無い。
そんなこと言ったら王家はランスに消されてしまうな。
私はやっぱりランスを応援しよう。
「ギル。ソフィアには悪いけど、私もべべちゃんがテオのところにきてくれたらすごく嬉しいわ。ランスよりテオの方がべべちゃんにはいいのではなくて?」
「母上、それはここだけにしてくださいよ。ランスの耳に入ったら、私達は皆消されますよ。あいつは影より影なんですよ。べべちゃんがからむとポンコツですが、それ以外は敵にしたくない男です」
「そ、そうね。そうだったわね。これは私の願望。夢物語よ。さぁ、私も仕事しましょうっと」
全くテオドールにも、母上にも困ったものだ。
とにかく先ぶれを出し、ランスの家に行こう。
叔母上とも一度話をしなくてはならないな。
オリヴィア姉上にも来てもらうか。
私は使いの者をブリーデン公爵家とゲイル公爵家に送った。
*すみません。優勝番組を深夜まで見ていたせいで書けておりません。
今夜と明日の朝はお休みさせて下さい。明日の夜には更新できるように頑張ります!
バモス!!
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