第6話 私は決してぐーたらな嫁ではないのです

 ランス様が着替えてサロンに戻ってきた。オリヴィアお姉様の腕を掴んで引っ張って行く。何事だろう?


「何かあったのですか?」


 私はオリヴィアお義姉様に聞いてみた。


「何もないのよ。ただ馬鹿に懇願されちゃっただけ」


 そう言ってふふふと笑う。


 みんなでディナーを食べてお茶を飲んでいたら、オリヴィアお義姉様の旦那様のゲイル小公爵が来た。


 どうやらお義姉様を迎えに来たらしい。泊まりは嫌みたいだ。ラブラブでいいなぁ。私が実家に泊まると言ってもランス様はきっと『うん』と言うだけだろう。


「べべごめんなさいね。泊まってゆっくり話がしたかったのに。また、ランスがいない時に来るわね」


 なんでランス様がいない時なんだろう?


「はい。近いですし、私も遊びに行きますわ」


「そ、そうね。ランスからOKもらってからね」


 ランス様の顔を見ると首を左右に振っている。お義姉様のところに行っちゃダメなのかな?


 そっか、ラブラブだから邪魔するなってことか。


 お姉様を見送ってから、私は自室に戻り、ドロシーに湯浴みを手伝ってもらった。


 見れば見るほど恥ずかしい。閨事の跡が身体中にある。跡継ぎ作りの為なら子種を注ぐだけでいいんじゃないのかな?


 まぁ、気持ちよかったけど。


 しかし、あんなことやこんなことをされるなんて夢にも思わなかった。


 先に結婚した友人に閨事は閨教育で勉強した事とは全く違うと聞いていたが、あんな恥ずかしい格好にされて、あんな恥ずかしいことをされるなんて知らなかった。


 それにあれがあんなに大きいとはびっくりした。よく入ったものだわ。そりゃ痛いはずだ。他のみんなも朝まであんなことしてるのかな? それなのに朝から起きている。偉いなぁ。私は昼まで動けないなんて情けないわ。体力不足なのかもしれない。体力つけなきゃね。


 でも、まぁ、昨夜ので孕んだかもしれないし、それがわかるまではもうないだろう。今日は自分の部屋でぐっすり寝よう。


「お嬢様、今日の夜着はこれでいきましょう」


 ドロシーはニヤニヤしながら、また露出の多い夜着を持ってきた。


「今日は無いわよ。普通の夜着にしてちょうだい」


「無いわけないじゃありませんか。今日何も無かったドロシーは逆立ちして階段を降りますよ」


 あらあら、ドロシー、逆立ちして階段降りられるのかしら?


 今日は無いだろうと自室にいた。


コンコン


 寝室側の扉を叩く音が聞こえる聞こえる。


「はい」


 扉を開けるとランス様が立っていた。


「寝るぞ」


 そう言っていきなり私を抱き上げて歩き出し、そのままベッドへ降ろす。そしてまた覆いかぶさってきた。


 今日もありなの!


 ドロシーの逆立ち階段降りは見れないのか……。


 妻だから、別にいいんだけどね。私の仕事は跡継ぎを産むことだから、いいんだけどね。


『寝るぞ』じゃなくて、嘘でもいいから甘い言葉を囁いて欲しいよ。


「ランス様、閨事の時は甘い言葉を囁いてほしいです」


 言わなきゃわからないだろうと思い言ってみた。


 ランス様は不思議そうに私の顔を見ている。


 そしていつものように『あぁ』と頷いた。


 だがしかし、その日も甘い囁きより先にコケコッコーと鶏の声が聞こえてきた。


 次の日も、そのまた次の日も月の障りがくるまでランス様と私の閨事は毎日続いた。もちろん甘い囁きは無い。


 ランス様は身体が目当てなのかしら? 甘い言葉を囁きたく無いほど嫌いな女でも妻なら無料だから? 娼館に行くとお金かかるからなのかしら? それとも早く跡継ぎを作るために仕方なく頑張っているのかしら?


 なんとなくもやもやするなぁ。今度お茶会の時にでも結婚している友人たちに聞いてみよう。


 それにしても結婚して2週間、ずっと昼間まで寝ている私をこの家の使用人たちはぐーたら嫁と言っているんじゃ無いかと心配になる。

 ちゃんと朝起きてお義母様の仕事を手伝いたいし、頼まれたままで、待ってもらっている刺繍もいっぱいある。


 私はやる気はあるのです。身体がついてきません。ランス様のせいであって、決してぐーたら嫁ではないのです! と声を大にして言いたいのよ~。

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