第39話 ダブルデートの結果。

柊と渋谷晴子が海に入った後は俺と柚子香が海に入る。

お互いにナンパ防止の為に、海に入る前にトイレなんかは済ませておくことで、柊達もナンパの危険がなく砂浜でのんびり出来る。


俺たちは海に入ると水の冷たさに驚きながらも、それだけで笑顔になって「海に来れたな」、「うん。約束を守ってくれてありがとう雄大」と言い合う。


「後、可愛い水着もありがとう。あの黒いのはもう少し大人になったらにさせてね」

「…今でも十分綺麗で似合ってるのに」


俺たちは沖には出ずに、そこそこの深さの所で水に浸かり波に身体を任せて離れないように抱き合う。


周りの目がなければキスをする事もやぶさかではない。

そんな中、柚子香とは見つめ合って、「周りの目が気になる」、「私もよ、お父さんに抱かされた女の子と目が合っちゃうと出来ないわ」と言ってから笑ってしまう。


「海って貸し切れないのかな?」

「え?キスの為に?」


「そうしたら邪魔入らないだろ?」

「まあそうだけど…。でもそれなら海中でなら出来るわよ?」


「…たしかに。でもそれなら我慢して、エアコンの効いた部屋の中でのんびりとしたいや」

「私もよ。おんなじね」


俺達は波に身体を任せながら笑いあう。

少しして柚子香が「柊には悪い事をしたかしら?」と聞いてくるので、俺は「丁度いいと思うぜ?まあ渋谷さんの魅力でメロメロになったり、ナンパ男が来なきゃ万々歳だよな」と言ったのだが、世の中にはフラグがある。

怪我をするなよと言われたり、気をつけろと言われると、その時ばかりは怪我をしたりする。


俺は「ナンパ男が来なきゃ万々歳だよな」と言った自分を恨んだ。


柚子香が「あれ?雄大、柊と晴子のところに人が居るわ」と言う。

俺は嫌な予感に「戻るぞ柚子香」と言って砂浜を目指す。


少し離れていて戻るのに時間がかかると、2人のナンパ男は柊を揶揄いながら渋谷晴子を連れて行こうとしていた。

「やめろ!晴子さんに触るな!」と怒鳴り付ける柊に、男どもは「中坊が生意気なんだよ」とバカにしながら渋谷晴子に手を伸ばして、「こんな子供より大人のデートを教えてやるよ」と言った時に、柊は「やめろ!」と言って男の手を払うと男は柊を殴った。


柊の奴は殴られはしたが、睨み付けて「やめろ」ともう一度言う。

柊を殴った男は柊の圧に気圧されたが、もう1人は気にせずに渋谷晴子の手を取った。


俺と柚子香はそこに間に合って「やめろ」と言って止める。

俺はアルバイトのせいもあって体が筋肉質になっていたので、残りの男も気圧された所にライフセーバーが仲裁にやってきてナンパは事なきを得た。


だがこれで終わる訳にはいかない。

「雄大、ごめん」と謝った柊を殴り飛ばして、「何故戦わなかった。渋谷さんを危険に晒してどうする!」と怒鳴り付けると、柊の奴は立ち上がりながら「格闘技は習っているけど実戦はしていないし、無闇に使うなと言われた。それにまだ話せば何とかなるかと思ったんだ」と言ってきて、苛立った俺はもう一度柊を殴る。


柊の奴も内春の…誉の孫として鍛えるように言われていて、何かしら習っているので殴った感触から素人ではない事はわかる。

柊なら問題なく相手を倒せるのにやらなかった事が俺を苛立たせた。


俺が「俺たちが戻らなかったらどうするつもりだったんだ。彼氏なら彼女を守ってみせろ!」と怒鳴ると、柊は渋谷晴子に「晴子さん、ごめんなさい」と謝る。

渋谷晴子は首を横に振って「柊さんはあんな怖い男の人に立ち向かってくれましたよ?格好良かったです。最後まで暴力を振るわなかった所も素敵です」と言うと、「頬が腫れました、洗って冷やしましょう?」と言いながら柊を救護室に連れて行ってしまった。


俺は暴力的な男として周りの連中は離れていって、狭い砂浜なのに快適になってしまい「柚子香、ムカつくから膝の上」と言って柚子香を膝の上に座らせると、「ヤバい、反応する」と言ってしまう。


「もう、降りる?」

「やだ」


俺は柚子香を見ながら「俺は柚子香を守る。柚子香に手を出す奴がいたらぶちのめすからな」と言うと、柚子香は「うん。ありがとう」と言ってくれた。



何があったかは聞いていないし知らない。

柊と渋谷晴子は手を繋いで戻ってくる。

ぎこちなさも消えていて、一瞬カップルに見えてしまった。


後で渋谷晴子がそっと教えてくれたのは、また柊と渋谷晴子は絡まれたが、柊は眼力と圧力だけで相手を引き下がらせていた。

その時に「僕の彼女」と言ったらしい。

渋谷晴子はとても頼もしかったと言っていた。


話を聞いた俺が「またダブルデートしてくれる?」と聞くと、渋谷晴子は「はい!私達はチームですね!」と言ってくれた。



まだそんな事も知らない時、帰りに俺達は海鮮丼を食べて、柚子香はワガママと甘えの違いがわからずに困惑していて、俺は「甘えてこい」と言って少し甘やかした。


柊と渋谷晴子にはまだ無理な話だが、それでも柊に免疫はついただろう。

帰りの電車はまだ混雑前で座れた。

だが4人横並びは無理で俺と柚子香の向かいに柊と渋谷晴子が座る。

2人は疲れていたのだろう。

あっという間に眠りにつくと2人で肩を寄せ合いながら眠り、マナーはよろしくないが人の切れ間を狙って写真を撮った。


帰宅して誉に見せると「おやおや。こりゃ臨時ボーナスだね」と喜ぶ。


「ボーナスいらないから柊と風呂屋行ってきていい?」

俺の企みを理解した誉は「まったく。構わないよ。柚子香は家風呂にしなさい」と言い、俺は柊を風呂屋に連れて行くと柊は地獄を見た。


日焼け直後の銭湯とか釜茹で地獄相当で、苦しむ柊に「タダじゃねぇんだ入れ」と圧をかけておいた。


帰ると柚子香も風呂で地獄を見たのだろう。涙目になっていたが、珍しく柊が「姉さん、銭湯のお湯はもっと熱かったよ」と言い、甘ったれを許さない感じだった。


柚子香は柊の事を話したのだろう。

誉から「やるべき時はやりな」と注意を受けた柊が、「わかってます」と言った顔は男の顔になっていた。



「あ、そうだ。柊」

「何さ雄大?」


俺はカレンダーを指差して「秋の柚子香の所の文化祭、お前もだからな」と言うと、柊は目を丸くして「え!?」と聞き返してくる。

柚子香が「あら?柊は来てくれないの?」と言うが、それは拒否なんて認めない感じで、柊は諦めながらも肩を落として、「僕は受験生」、「えぇ…?」、「なんで?」、「女子校に?」と言っているので、「渋谷晴子が待ってるぞ」と言うと「わかったよ」と言っていた。

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