第38話 夏の海へ。

夏だ!

今、俺のテンションはクソ高い。

なぜかと言えば簡単で、バイト代を持って柚子香と柊と渋谷晴子を連れて水着を買いに行き、ひたすら柚子香に試着をしてもらったからだ。


柊は「巻き込まないでよ!」と言っていたが、夏の海には危険がいっぱいだ。

千葉の時以上にナンパの危険がある。

俺がトイレに行った時に、俺の代わりに柚子香を守れる存在が必要だ。


更衣室やトイレにも危険がいっぱいだ。

そう思った俺は渋谷晴子に、「海に行くから是非一緒に」と誘った。


初めは2人きりだと思っていた柚子香は機嫌を悪くしたが、「ナンパが怖いから」と説明して、「男ならもう1人いるから平気だ。ダブルデートだ」と言って柚子香の部屋を出てリビングに行って、夏期講習の予定と学校の宿題を並べて睨めっこをしている柊の肩に手を置いて、「もやしっ子、海だ。決定だ。受験勉強?知らん。帰ってきてから頑張れ」と一方的に言い、柊が嫌がる前に「いいよね誉婆ちゃん?」と聞くと、誉はニコニコと「楽しいねえ。好きにしな」と答え、柊は肩を落として諦めた。

これが梅雨明け前の話で、次の週末には柊と渋谷晴子を連れて水着を買いに来た。


誉は柚子香に水着代を渡そうとしたが俺はそれを断る。


「おや、アンタが出すのかい?」

「そうだよ。俺が出すから柚子香は俺好みの水着を着るんだ」


「に゛ゃ!?」と言って真っ赤になる柚子香を見て、ご満悦の誉は「それはいいね。柚子香、可愛いのを買ってもらいな」と言って俺たちを送り出した。


そして試着ラッシュに、柚子香は「え?」、「まだ?」、「そこまで?」と言う。

俺と言えば片っ端から写真を撮って吟味をしている。

申し訳ないが渋谷晴子の事は柊に任せた。

まあある種純情BOYな柊は真っ赤になって倒れそうで、渋谷晴子が柊係をしてくれている。


柚子香の奴、黒のビキニが似合ったのだが流石に刺激が強い。ナンパ危険度が跳ね上がりかねないから、致し方なくカラフルな模様のパレオ付きに落ち着いた。


「高いけどいいの?」

「意義ある金の使い道だ。本当ならあの黒いのも買って、部屋の中でだけ着て欲しい」

柚子香は黒のビキニを思い出して「…それは恥ずかしいわよ」と言うので、俺は「だから諦めた」と言った。


会計を済ませた俺は柊達を探したが居ないので、「2人で何処かに行っていかがわしい事を?」とボケてみたが、真相は柊が水着売り場の刺激にダウンしていて、渋谷晴子が介抱してくれていた。


「ありがとう晴子。水着は決められた?」

「はい!柊さんが選んでくれました!」

「おお、むっつり柊の好みがわかるんだな」

「雄大?僕を勝手にむっつり認定しないでよね」


「まあ渋谷さんは見た目も可愛いから、柊がよほど変な水着を買わなければ似合うよな」

「雄大こそ姉さんに変な水着選ばなかったよね?」

俺が真顔で「…黒のビキニは諦めた」と言うと柊は「あ、そう」と言っていた。


そんな事があり、お盆に柊が休みになると朝から海に向けて出かける。


まあ流石に柊は渋谷晴子とはいづらいのだろうが、あれでは柚子香を取られてしまうので、「柊、俺たちは1チームだが今日はダブルデートだと思え。お前は1日渋谷さんをお守りしろ」と言って恋人設定を押し付ける。


柊が目を白黒させるのを無視して、渋谷晴子に「柊は免疫ないから鍛えてくれないかな?」と聞くと、「私も彼氏がいた事はないので、鍛えさせてもらいます」と言ってくれる。


そして柊と渋谷晴子は、「柊さん」、「晴子さん」と呼び合う設定にした。



海、マジサイコー。

俺は泳ぐ気はあまりないので、先に柊と渋谷晴子を海に行かせて柚子香と荷物番をする。

柚子香は「日焼け止めを塗って」と言うので、柚子香に塗りたくるとあの千葉の夜を思い出して手が止まらなくなる。


だがここで反応したらアウトだ。

手を止めて柚子香と砂浜に寝転がって手を繋ぐ。

「後でイカ食う?それとも駅に向かう最中で何か食べる?」

「海でイカ焼き、憧れてたの…」


「じゃあ半分こだな」

「うん」


「後で柊達が戻ったら海入るか?」

「うん」


「泳ぐより浸かろうぜ」

「うん。そうする」


もうそれだけで良かった。

暑さすら気持ちよくて楽しい。

暫くすると柊と渋谷晴子が戻ってくるので、俺は「やり直し!手を繋いで来るんだ!」と言って手を繋がせると、柊は日焼けなのか恥ずかしさなのか真っ赤になっていた。


「柊、俺は柚子香に日焼け止めを塗ったぞ?」

「雄大!?」


俺は「まあセクハラだからそれ以上は言わない」と言ったのだが、渋谷晴子は大胆になっていて、「どうぞ!」と言ってうつ伏せになるので柊に塗らせておいた。


俺と柚子香はムービーと写真を撮っておいた。



まあ柊が赤くなるのもわかる。

渋谷晴子は着痩せするのだろう。

あの優しくフワッとした風貌なのに、脱ぐとデカいのはどこの世界からやってきましたか?と聞きたくなる。

そして柊はすでにそれを知っていた。

アイツは水着を選ぶ時に見知っている。服の上からだが身につけた時に見ていて真っ白なビキニを選ぶ辺りがエロい。


俺たちはずっと海に居るのではなく、午後まで海にいて帰りに駅に向かいながら美味いものを食べて帰ろうと言っている。

それは混雑回避と受験生柊の事を考えてで、渋谷晴子も「疲れちゃいますから、それくらいの方が助かります」と言ってくれていた。

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