第36話 柚子香、泥酔。

夕飯後にソワソワする柚子香を見て邪推した母親はまた新品の避妊具を渡して来る。

「またかよ」よりも気になったのは前回とパッケージデザインが違っていた事。


いや、まあ母親は今年38で父親は今年40。

まだあっても良いんだが気付かれないようにしようよ。


「使わないよ」

「だからナマはやめてあげて!」


俺はお前こそやめろと言いたかったが言えずに済ませると、柚子香は真面目にローテーブルに乗せた缶チューハイの試供品をじっと見ている。

俺はコップに氷を入れてから柚子香に渡して「ひと口ずつな」と言うと柚子香は返事もなく生唾を飲みながら頷く。


どうしてこの場は「やめよう」にならなかったのか。

俺は自分を恨んだ。


柚子香はたったひと口で泥酔しやがった。


赤い顔でヘラヘラと笑った柚子香は「ふわふわする〜」と言うとバカでかい声で「雄大〜!」と言って俺に飛び付くとキスをして来るがそれは普段と違っていた。


俺の口の中に舌を捩じ込んできて俺の舌を舐め回した。

俺は目を白黒させると柚子香は嬉しそうに写真に収めながら「雄大が照れてる。でも嬉しそう!」と喜んで更に舌を絡めてきて「ふふふ。晴子と勉強したんだから」と言う。


渋谷晴子と勉強?

何やったんだ?

実践!?


俺はまた暴走しかけたがそれより先に柚子香が「晴子がオススメの映画を教えてくれたから2人で観たり、お父さんのタブレットで勝手に動画を買って観たのよ!」と言う。


映画はラブロマンスだろうが動画はなんだ?何にせよ親父さんは興味もない知らない作品を娘に勝手に買われてしまっている。

本当に憐れで何も言えねぇ。


柚子香は本当にひと口のアルコールで壊れた。

壊れた声量で何回も俺の名を呼んで俺に覆い被さって馬乗りになると腰の辺りで身体をグリグリと動かして「どう?」と聞いてくる。


どうも何もない。

辛抱たまらん。


柚子香はスマホを俺に向けて「ふふ。柚子香に乗られる雄大!」と言って写真に収めると自撮りで「柚子香ぁ〜。雄大に乗ってる!」と言ってシャッターを切った。


柚子香は「柚子香、ちゃんと晴子と勉強したんだよ」と言って俺に覆い被さると「お兄ちゃん、柚子香を抱いて」と言い出した。


話を逸らし茶を濁す為にも抱きしめると「違う!それじゃないの!」と言って「お兄ちゃん!柚子香はずっと待ってるの!」と怒り出す。


酔っ払い特有のからみ酒が始まった所で母親が「雄大?柚子香さん?もう少しだけ声を抑えて」と言ってノックしてきた。


俺が「母さん!助けろ!」と声をかけると柚子香は「お母様!」と壊れた声で母親を呼ぶ。


ドアを開けた母親は混乱しただろう。

ローテーブルの缶チューハイと俺に馬乗りになる真っ赤な柚子香。

柚子香は壊れた声量で「お母様!私は雄大の妻になります!良妻になります!」と挨拶をする。


「え…ええ。よろしくね柚子香さん」と言った母親は俺に何があったかを聞き、阿部のやらかしに頭を抑えて「ご近所に聞かれちゃうから何とかして」と言われる。


俺は必死に「何とかってどうすんだよ」と言うが母親は「うまくやりなさい」と言って逃げ出した。


柚子香は俺に身体を擦り付け続けていて「なんか気持ちいい」と言っている。


馬鹿野郎。耐えられんわ。

俺はすかさず録画にして俺の上で身体を擦り付けて気持ちいいと言っている柚子香を撮る。

これからのマイトレンドゲット。


俺もバカなので5分ほど撮らせて貰ったがこのままだと本当にどうなるかわからない。

俺は柚子香に「柚子香、俺は柚子香にやりたい事がある。柚子香はムービーを撮る係だ」と声をかけると柚子香は寝間着をはだけさせて「顔を挟む?」と聞いてきた。


ムービー撮りてえ。

だが止まらなくなるし後々素面に戻った柚子香が不憫なので「それはまた今度。俺は柚子香の歯を磨きたい」と言って洗面所に連れて行くと柚子香を座らせて「ムービー撮れよ」と言ってから歯ブラシを口に差し入れて歯を磨いていく。

甘えるような柚子香の声を聞きながらの歯磨きもヤベェ。

これも後で貰おう。


甘ったれた柚子香は「雄大優しい。口の中が気持ちいいよ」と言って感謝をした後は「柚子香がお兄ちゃんの歯を磨いてあげる!」と言い出した。


俺も酒でバカになっていたのだろう。

「そうか?じゃあ頼む」と言って歯ブラシを渡して口を開いてしまった。


柚子香の「えい!」という掛け声と共に喉に走る衝撃。俺は目を白黒させて「オゲェぇぇぇっ!?」と苦しむが柚子香は情け容赦なく「とりゃ!!」と追撃してくる。


「ぼぇぇぇぇっ!?」


柚子香の奴は力加減が狂っていて俺の喉ちんこを全力で突いてきやがる。

吐き気と戦う俺を見てケラケラと笑った柚子香は「綺麗になった?」と聞いてくる。


「お…おう」と返すと満足そうに録画を停止する柚子香。

これも絶対に貰って一生何かに使ってやる。


俺は「仕上げは自分でやりたい」と言って誤魔化してさっさと柚子香をベッドに放り込むと「寝よう!」と言ってキスをする。


柚子香は俺の頬を持ってベロベロとキスをしながらあっという間に眠ってくれた。


俺は忌々しい気持ちで缶チューハイを写真に収めてから父親に処理を任せて眠りについた。

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