第21話 鑑賞会。

料理は昨日のメニューを聞いていたのだろう。

母親は気張って料理をしていたし、不足分に関しては買い出しに行ったようで、オードブルの盛り合わせと、パエリアとサラダ、チキンの代わりにサイコロステーキで、デザートはフルーツケーキにしていた。


俺はやはりどこかおかしい。

何故か無碍にできない気持ちで「柚子香、向かい合って食べるか?横に座って食べるか?」と聞いていた。

柚子香は意外そうな顔で、嬉しそうに「横で食べながら写真撮りたい。憧れていたの」と言って俺の横にくる。


一応両親に釘を差し、自分でも確認をしたが、ノンアルコールのシャンパンのはずなのに、何故か柚子香も俺も気が大きくなっていた。

俺から柚子香に乾杯をしながら飲んで、食事を食べながら柚子香の肩に手を回して、自分からキスをしていた。

柚子香もそれを喜んで受け入れて、「このままずっと居て」と言いながら2人で写真を増やしていく。


「のんびり食べるか?それとも食べ終わったら紅茶でも淹れて貰って、飲みながらゆっくり過ごすか?柚子香の部屋は汚せないけど、俺の部屋なら気にならないから紅茶飲みながらゴロゴロもできるぞ?」

「どっちでも嬉しい。雄大といたい」


俺が何かを言うたびに、柚子香が嬉しそうにニコニコとして俺を見つめてくる。

俺はここでようやく気づいた。


穏やかな顔で、嬉しそうにニコニコとする柚子香をもっと見たくなっていた。

俺達はのんびりと食事を摂ることにして、「柚子香、明日帰るのか?」と聞く。


「うん。やる事もあるし帰らないとダメかな」

「そっか。じゃあ、仕方ないな」


「雄大?」

「いや、なんかこのまま明日もいてもいいかもなって思えたんだよな。穏やかな顔をした柚子香となら、ずっと居られるしな」


その言葉を聞いて、真っ赤な顔で口元を押さえて「本当?嬉しい」と言って抱き付く柚子香を撫でながら「なんか変だな。昨日から変だ」と言って、また俺からキスをしてしまうと柚子香は身体を震わせていた。


食事を終えてケーキを食べ終わると、母親に紅茶を淹れてもらう。

何が嬉しいのかニコニコと紅茶を用意して、「冷たくても平気なら、これも置いておくわね」と言って、2リットルのお茶も置いて行く母親は「お菓子は…柚子香さんは夕食後は食べなかったわよね?」と言って部屋を後にする。


俺は?俺には聞かないの?

食べますけど?

さっきリビングで見たけど、フィナンシェとかあったよね?デパ地下のスイーツあったよね?内春のお歳暮か何かで貰ったやつがあったよね?


俺はぶつくさと「フィナンシェ逃した」と漏らすと、柚子香が「ごめんなさい」と言う。


「いい。明日食いに行く…駅のデパ地下。柚子香も行くだろ?」と聞くと、また顔を赤くして柚子香は「行くわ!行きたい!」と言った。



2人の平和な時間。

何言ってんだ気持ち悪い。

普段ならそう思うのに、今日は本当に平和な時間だ。小田達から届いた写真を2人で見て転送して、それを渋谷晴子に送ってリアクションを見て微笑む。

真面目な柚子香が「雄大。もう一度お友達の顔と名前を教えて。雄大のお友達だから覚えたいわ」と言った。

俺は普通に6人で撮った写真を見せながら阿部から小田まで紹介すると、江藤を見た時に柚子香はセクシーDVDの事を思い出しやがった。


「忘れてたわ!雄大の好みの作品を観なきゃ!」

「忘れててくれよ」


柚子香は「そうは行かないわ」と言ったが、色々と困るので歯磨きを済ませてさっさと眠る事にして、ベッドの中でセクシーDVDを少しだけ観て眠る事にした。


母親は何か勘違いをしていた。

赤い顔、荒い息遣いの柚子香と早々に歯を磨く俺。

婚前交渉でも期待したのか、こっそり俺に新品の避妊具を渡してくる。

母親のすることか?

俺はドン引きで母親を見ながら「しないよ」と言ったが、「万一があるし、柚子香ちゃんに恥をかかせちゃダメよ」と言って渡されてしまった。


まあ翌朝未開封で返してガッカリさせよう。


部屋に戻ると柚子香はベッドの上で正座して俺を待っていたので、「なにやってんだ?」と聞くと、柚子香は「何って、勝手に布団に入るのは悪いし、でも立っているのも変だし」と言って困り顔になっていた。


俺は「真面目だな。ほら入れよ」と言って柚子香を布団に押し込むと、壁に背をつけてテレビをつける。こうすれば布団の中でもDVDは観れる。


本当に観るの?

おかしくね?


そう思いながらも「お兄ちゃんダイスキ」を取り出して「親に聞こえると困るから音量下げるからな」と言って再生をする。


まあ女性と観るものではない。

話は簡単で妹が兄の不在中に兄の部屋に忍び込んで兄の布団の匂いを嗅いで興奮すると1人で慰める。

そこに帰ってきた兄がそれを見て、見なかった事にしようとするが、気付いた妹が制服をはだけさせながら兄に迫って行為が始まる。

その後は行為をする仲になって、親の目を盗んで2人で風呂に入り風呂場でイチャイチャした後は行為をするし、親がいない間に料理をしながらキッチンでイチャイチャして行為に及ぶようになる。

最後は夜に妹が兄の部屋に行って寝てる兄の横で添い寝をしていたら、そのままイチャイチャして行為をして朝を迎えて終わる。


そんな内容で、性の好みがバレるというのは恥ずかしい。だが柚子香は真剣にDVDに向き合い、「雄大ってば」、「雄大のため」、「そんな…」、「そんな事をするの?」、「えぇ!?そんな事をされるの?」、「もしかして雄大も?」と言っていて停止を受け付けない。

結局2時間の映像を全部観た。柚子香と俺は照れながら「寝よう。ベッド下にコンセントあるから、充電は2人ともそこでできる」、「ええ。ありがとう」と言ってモゾモゾと布団に入ると、柚子香が真っ赤な顔で「お兄ちゃん。キスして」と言って甘えてきた。

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