第17話 大掃除。
俺はやらかした。
盛大にやらかした。
朝、俺を必死になって呼ぶ柚子香の声で目を覚まし、俺が柚子香と寝た事を思い出す。
昨晩は本当に大変だった。
最後に観た動画の「お兄ちゃんダイスキ」を思い出してしまい「あれはフィクション。あれは作品。これは柚子香」と念仏のように唱えていつの間にか寝ていた。
その事を思い出して「危なかった」と思っていると必死な柚子香の「起きてよ雄大」で、なんだと思ったら俺は柚子香を力一杯抱きしめて眠っていた。
柚子香と寝ても熟睡できた事に驚きながら「おはよう柚子香」と声をかけると柚子香は「おはよう」と返しながら「トイレに行かせて」と言ってすっ飛んで行った。
戻ってきた柚子香は真っ赤に照れていて「今何時?」と聞くとまだ5時だったので二度寝をすることになる。
二度寝をする時に柚子香は「もう。思ってた朝と違う」と言って赤くなる。
「今度は何に憧れてたんだ?」
「朝日で目を覚ましたら雄大の腕の中にいて優しくおはようって言ってもらってキスで起きたかったの。それなのにトイレに行きたいし、雄大はガッチリ掴んで離れないし…」
なんとも歯切れの悪い柚子香の声。
「どうした?別にトイレは生きていたら誰だって行くんだから問題ないだろ?起こしてもいいって」
「違うわよ。寝ぼけてるの?」
柚子香は真っ赤で俺を見ながら照れている。
何事かと思っていると「雄大のが当たってるの!」と小声だが強く言われた俺は股間が朝の生理現象でカチコチになっていてそれが柚子香に当たっている事に気付き赤くなった。
照れて離れようとすると「それはダメ」と言われる。
柚子香が必死にくっついてくると、「これは朝だからなのよね?柊も朝とか膨らんでるわ」と確認をしてくる。
「生理現象だな」
「でも昨日は私に反応してくれたのよね?」
俺はまだ夢を見ているのか?
なんか柚子香が甘えてきていて普段のキツイイメージがない。
俺は照れている事を誤魔化すように「そうだな。悩殺されたな。恥ずかしいから言わないでくれ」と言って目を瞑って二度寝の態勢にはいると柚子香の奴はキスをしてきて「おはよう」「おやすみ」と言って二度寝をした。
起きたのは朝8時で、誉の意向で休日の朝食は朝7時半らしく、起こしに来た柊が添い寝する俺たちを見て真っ赤になっていた。
おはようございますと降りると生暖かい目が俺を出迎えた。
誉はご機嫌で、柚子香の母親も悪くない印象で俺を見る。
柚子香の父親は昨日の一件からだろう。仲間を見る目で俺を見て、柊は先程の添い寝があるからか真っ赤になっていた。
「寝坊だね」
「そう言わないでよ。慣れない環境で寝過ごしたんだよ」
ニヤリと笑った誉は「なら柚子香は、なんで寝坊なんてしたんだい?」と聞く。
柚子香はノーガードだったことで「ふぇっ!?お婆様?」と言って、誉を見て「あうあう」と言ってしまう。
「誉婆ちゃん、柚子香だって俺が居るなんて初めてだから、緊張して寝坊くらいするって」
「そ…そうです!」
この返しに気をよくした誉は「なら早く食べて、柚子香の部屋の大掃除をして出かけなさい」と言ってお茶を啜った。
柚子香の部屋に大掃除なんて必要無かった。
昨日の飾り付けの残りを片付けるだけで終わってしまう。
想像より早いので「早くウチに行ってもする事ないぞ?」と言うと、「掃除とか…」と言って出かけようとする柚子香。
ここで柊が近づいて来て、「雄大。ご愁傷様」と声をかけてくる。
「柊?」
「姉さんは掃除魔だよ。パッと見で片付いていても、姉さんのチェックにかかると大半がゴミにされるんだ」
「…嘘だろ?」
「あーあ、そのリアクションを見せたらアウトだよ」
俺は恐る恐る柚子香を見ると、腕組みをして怖い笑顔の柚子香が、「やり甲斐を感じるわ!行くわよ雄大!」と言いやがった。
これにより俺の荷物は、柚子香の無慈悲なゴミ認定を喰らってしまった。
クローゼットの中には確かに使わなくなった物があったが、それは中学生時代の物なんかで取っておいた物なのに、半数がゴミと認定されてしまった。
まあ、不思議なのが一緒に考えて居るとゴミに見えてきて、捨ててもいいかなと思えてしまうことだった。
さよなら思い出達。
やな女と悪態を吐きたいにも結果を示されてしまうと何も言えない。
そして机の奥深くから出てきたセクシーDVD達が柚子香に見つかる。
「こ…これが雄大の好みなのね。後で観るわよ!」
「やめてくれ!」
「なら持って帰って晴子と観るわよ!」
「やめてくれ!」
最終的に1本だけ、それも少し観る事になってしまうと柚子香は昼どころではない。
だが母親は結構な金額を渡してきて外で食べて来いと言ってきた。
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