第14話 クリスマスプレゼント。

俺は食べながら、さっさと渋谷晴子に写真を送って、「ツンツルテンだから上からね」とだけ送った。

まあ上目遣いで照れる柚子香は、普段より穏やかに見えたのだろう。

即座に返信が入ってきて、そこには「ご馳走様です!」と書かれていた。


俺もバカなのだろう。

デコレーションされた部屋、ご馳走、サンタコスの柚子香。柚子香の友達のリアクション。

それが面白くてスマホを構えると「柚子香」と声をかけて、パスタを口に運んだ所を撮ったりして柚子香の所と渋谷晴子に送っておいた。


写真を見て真っ赤になった柚子香は、「恥ずかしい。でもこの前晴子が雄大に見せた写真より、私らしくてこの顔を撮って貰えて嬉しい」と言って微笑んだ。


私らしくて?と思ったが、まあ誰にだって理想はあるから黙ることにした。

そしてそんな笑顔の柚子香を俺は初めて見た。

初めは微笑ましく見ていたのに、おもむろにスマホを構えるとバーストしていた。


照れて真っ赤になって「雄大!なにしてるの!?」と慌てる柚子香に、「笑顔。すごく良かったからバーストした。きっと柚子香が求めてる奴だ」と言って送ると、柚子香は「私?笑ってる」と言って目に涙を溜めていた。


「これは渋谷さんには送らないから、見せたかったら自分から見せるんだな」

「勿体無いわよ」


食事中なのに柚子香は俺の元に来て目を瞑った。

普段は「耐えてくれ俺の唇」と思っているのに、この時はそんな事も思わずにごく自然にキスをしていた。


震えた柚子香は唇をはなすと、真っ赤な顔で「雄大?今のキス」と震え声で聞いてくる。


「どうした?ピザの味が嫌だったか?」

「ううん。いつもと違ってた。もう一度お願い」


穏やかな空気でキスをしたらまた柚子香が震えていて、目に涙を新たに溜めていた。


憧れだったのか?

サンタコスで自室でキス?

意味わからんが喜んでるなら良いのだろう。


柚子香はそのまま俺の膝の上に座ると、「食事はまた後で、ケーキも後でいいわよね?」と聞いてきて、抱きつきながらスマホを構えた。


「口、色ついてるから拭いてからにしないと笑われるぞ」

「あ…そうね」


柚子香はわざわざ何故かあるパウダールームまで行って化粧直しをしてくる。

本当に無駄だよな。

誉の奴のせいでおじさんは部屋がない。

パウダールームとウォークインクローゼットやめてやれよ。


そんな事を思っていると、化粧を直してきた柚子香はゴテゴテしてて、「化粧のせいでキツく見えるぞ」と言うと、「えぇ?赤い口紅が綺麗だから、コレでキスしたいのに」と言って肩を落とす。


「目元のやつをもう少し優しめにすれば?」

「バランスがあるのよ」


「詳しいのな」

「マナーの先生からお化粧も習ってるの」


「大変だな」

「だから褒めてよ」


仕方ないと諦めた俺は柚子香を膝の上に迎えるとツーショット写真を撮る。

柚子香監修で柚子香の憧れを体現した写真達。


柚子香は念願のキス写真に、また泣いて喜ぶ。

「雄大とキス写真が撮れた」とか言っていたが、俺はあくまで良い奴が見つかるまでの当て馬だろうに…と呆れてしまった。


そのまま俺はプレゼントを渡すことにした。

まあ母親監修の物で、俺は選んだに過ぎない。

高校生でもおかしくない価格帯のネックレスを渡すと、柚子香は「これもくれるの?」と喜んで、「着けて」と言うのでつけてやるとまあサンタコスに似合っていない事もない。


「学校にはつけて行くなよ?」

「…だめ…よね?」


呆れて「当たり前だろ」と言うと、柚子香はネックレス有りversionでもう一度写真を欲しがったので付き合った。


撮っているうちに俺も少しだけ普段とテンションが変わっていて、「柚子香」と声をかけて「頑張って撮れよ」と言うと、そのまま苦しくないギリギリまで柚子香を抱きしめて「ほら、撮れって」と指示を出すと、柚子香は頑張って自撮りしていた。

その顔は真っ赤になっていて嬉しそうに見えた。


「雄大、今の…」

「なんとなく。特別な日だから」


「嬉しい。今日が終わらないか、毎日がクリスマスならいいのに」

「仕事しないと生きていけないぞ」


柚子香がつまらなそうに「わかってるわよ」と言って動いた時、俺はあることに気がついた。


それは非常にまずい事で、今までなら辟易するだけで済んだのに、今日は本当におかしくて慌てた。


「ゆ…柚子香?」

「何よ」


「お前、そのサンタ服。ミニスカートの中を気にしてたよな?」

「そうよ。裾が短いから、ちょっと腕を上にあげたりすると下着が見えちゃうのよ」


「…スカートの下って下着?」

「恥ずかしいから聞かないでよ」


俺は聞いていて真っ赤になった。

太ももになんとなく伝わる柔らかい物。

夏に襲われた日はそれでも膝までで、厚手のスカートだった柚子香が俺に跨ってきてもなんとも思わなかったが、ミニスカートはスカートの役目を果たさずに俺の太ももに柚子香の下着越しの肌があると思ったら真っ赤になっていた。

嫌悪感や忌避感よりも恥ずかしさが優先されていた。


柚子香が真っ赤になった俺に気付くと、「雄大?赤いわ」と言った。


「照れてるんだよ。恥ずかしいんだ。着替えるか今日はもう膝の上を無しにするかしてくれ」

本気で照れる俺を見て、顔を赤くした柚子香は嬉しそうに抱きつくと、「ツーショットを最後に撮らせて。そうしたら着替えるわ」と言った。


躙り寄る動きでも色々とまずい。

17歳の健全な肉体は素直に反応してしまうと、柚子香は写真を撮りながら硬くなった俺に気付いて、驚いた顔をして2人で恥じらいの顔をしたところまでバースト写真に収められてしまった。


「雄大…私で反応…」

「するから降りてくれ。着替えてきてくれ」


俺の言葉に「嬉しい」と言ってキスをした柚子香は着替えを持つと部屋の外に着替えに行った。


中々柚子香が戻ってこないので、食欲に逃げることにしてチキンナゲットを食べていると、俺のスマホに渋谷晴子から[悩殺ですか?]と入ってきたので[参りました]

とだけ返した。


[いえいえ。こちらこそありがとうございます。柚子香さんのあんな幸せそうな顔が見れて嬉しいです!]

[こちらこそ。柚子香を気にしてくれてありがとう]


メッセージを送ってしばらくすると、柚子香は真っ赤な顔でケーキを持ってきたので、「今更照れるならもう着るなよな」と言うと、「違うわよバカ。晴子から雄大が悩殺されたって言ったってメッセージが来たのよ」と言ってスマホを見せてきた。


うーわ。渋谷晴子はおしゃべりさんなのか。

俺も真っ赤になりながら「憧れだろ。膝の上でケーキを食おう」と誤魔化して、柚子香を膝に乗せた。

今度は厚手のスカートだったので、柚子香の柔らかさはわからないで済んだ。

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