第6話 路線決定。
柚子香と付き合うことになり、誉から結構な金を渡されるようになった俺は、アルバイトが見つからなくても何とかなってしまっていた。
誉の奴、本当に金持ちだな。
ある種アルバイト感覚で柚子香の所に行き、当たり前のように俺の膝の上に座り、延々と話を始める柚子香。
今週の出来事を聞きながら唇を奪われて、やり取りをしたメッセージの返信に物言いがつく。
今週1番怒られたのは先週のショッピングの話で、それは柚子香が友達とショッピングに向かい、下着売り場に降臨しやがった時のメッセージだ。
冬になっていて厚着だから助かったが、ブラジャーを服の上から胸に当ててドヤ顔の柚子香の写真が何枚も何枚も何枚も届き、「雄大はどれがいい?決めなさい」と言われた。
16歳に赤だの黒だの濃紺だのと似合わねえだろうと思ったが、それを言えば多分気分を害するし、友達と居るだろうから変な返信は選べない。いわゆるNGだ。
俺は必死にこの状況を笑いに変えてやろうと思い、「赤を切れ。青は爆発する」と送ってからアクション映画のURLも送った。
柚子香なら意味不明で困ると思ったのだが、友達に詳しいのが居たのだろう。
柚子香から「爆弾解体の話じゃない!」と返信が来て驚いた。
遊びは一瞬で終わってしまった。このまま長引くのはよくないので、「濃い色は透けそうだから薄い色。ジャラジャラ付いてると怪我しそうだからシンプルな奴」と送っておく。
これで柚子香の奴は満足しただろう。
だがその後の返信は俺を困らせた。
「照れて写真を消さないで、キチンと保存しなさいよね」
…今まさに消そうとしたのに。
こんなもんフォトフォルダに入れておきたくない。
すっぽかそうかと思ったのだが、「了解は?後でフォルダを見るわね」と追送されて、がっかりしながら了解と返して写真を保存をした。
保存をするとき、写真の中でドヤ顔をする柚子香と目が合うと、俺は「勘弁してくれ」と呟いてしまった。
その日の事を持ち出されて、「赤を切れって意味がわからなかったし、友達に見られてユニークな人って笑われたわ!」と始まって、一通り怒られた後でフォトフォルダを見られたが、キチンと保存してあったので、柚子香は最終的にはご機嫌だ。
俺の膝の上で体を擦り付けながら、「あの日の下着を着てるのよ。見たいでしょ?」と聞いてくる柚子香に、秒で「見たくないです」と返す俺。
多分脳内では「見たいです」「仕方ないわね」の流れでも出来ていたのだろう。
即答で断る俺に、柚子香が「何で!?」と聞き返してくる。
ごく普通の表情で「若い娘がホイホイと肌を晒してはダメだからだ」と言うと、想定外の回答に柚子香は、「…そ…そうね。雄大は私を大事にしてくれているのね!」とあせり気味に言った。
成程、そう解釈したか。
俺はその路線で行くことにして、秒で後悔をした。
柚子香が張り合う相手がガンガン性に走るなら、俺は柚子香を大切に扱う彼氏路線にした。
これには柚子香もご満悦だった。
だが【ならもっと愛しなさい】となった。
おいマジか?気が遠くなった俺が「え?」と聞き返すと、手始めに来月の文化祭に来なさいと言われた。
行きたくねー。
心の底から遠慮してー。
しかも柚子香の奴は勉強は出来る。
常識はないが頭はいい。
俺が何も言えなくなるように、「お婆様が特別ボーナスを出すわ。喜びなさい」と言ってきた。
…金はいくらあってもいい。
仕方ない。
こうして俺は柚子香を大切にしている不器用な婚約者として、文化祭に顔を出すこととなった。
風邪引いたら恨まれそうだし、母親あたりはにんにく注射とか致死量ギリギリの点滴とかを、本気でやりそうだから気をつけようと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます