第6話 吸血鬼

※微エロ回です。苦手な方はブラウザバックを推奨します。

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 私の仕事が終わったのが大体十八時。その後、食事や湯浴みなどで二十時。自室で本を読み時間を潰して二十一時。フレアに言われた時間である。そして、フレアの部屋の扉の前で右往左往すること10分、現在時刻は二十一時十分。軽い遅刻である。

 というのも、私は今日の業務を通して少々フレアに苦手意識を持っている。こちらのことなど関係なしに要求を突きつけてくるフレアは、私にとって未知の存在なのである。今までは話の通じない手合いは全て無視することで自分の身も心も守ってきた私だが、専属メイドという立場上そういうわけにもいかない。詰まるところ、彼女との距離の測り方がわからないのである。

 このまま彼女の命令をただ淡々と聞いていればいいのであれば楽なのだが、そういうわけにもいかない。早急に彼女への対応を見直さないといけない。

 こんなところでウジウジしていても埒が開かないと、私は意を決して、しかし控えめにドアをノックする。すると、勢いよく扉が開かれた。


「お嬢様、お待たせして申しわ――」

「待ちくたびれたわ。次からはノックとかしなくていいから直接入ってきなさい」


 若干不機嫌そうなフレアが顔を出す。苦言を漏らしながら私を部屋に引っ張り込むと「そこに座りなさい」とベットを指差す。蝋燭の明かりに照らされたフレアはかなり透けたネグリシュを着ており、非常に危うい印象を受ける。昼間とはまた別の意味で私を振り回すフレアに困惑しながらベットへ座るとフレアはその隣に座ると私へと向き直る。


「昨日、あの部屋であなたを見た時からこの時を楽しみにしていたのよ。教会から送られてくるものは色が濁ってってまずいのよね」

「……あの、お嬢様。私は何をすれば?」

「脱ぎなさい」

「……脱ぐ!?」

「当たり前でしょ、じゃないと血を吸えないじゃない」

「あ……」


 昼間忙しすぎて完全に忘れていた。私のもう1つの役目、食事係。つまりは今から血を吸われるのだろう。いきなり脱げとか言われて驚いてしまった。私はいそいそと肩をはだけると、フレアは不思議そうな顔をした。


「なにをしてるの?」

「何って、言われた通り脱いだのですけど」

「なんで肩だけなのよ。全部脱ぎなさい」

「全部ですか!?」

「当たり前でしょ!吸う位置でも味は変わるのだから。今日は飲み比べするって決めてたの。さっさと脱ぎなさい」


 そんなフレアの弁を聞き、私は改めて寝巻きを脱ぎ、完全にスッポンポンになった。同性だしそういう意味ではないとはいえやっぱり恥ずかしい、顔が熱くなるのを感じる。フレアの方へ向き直ると口元からちらりと八重歯が見え、今から彼女に全身くまなく吸われてしまうと考えてしまい、さらに顔が熱くなってしまった。

 そんな一人百面相……恥ずかしがってばっかりか、を繰り返しているとフレアに押し倒される。よく見ると、彼女の赤い瞳は彩度が上がり、若干光っているようにも見え、何やら引き寄せられるものがあった。薄着のせいか、その瞳のせいか、昼間と違う妖艶なオーラを纏うフレアに、不覚にもドキッとしてしまう。


「まずは王道の首かしらね?」


 そういうフレアの顔が私の首元へ近づいてくる。緊張か、はたまた未知への恐怖か、私の鼓動が早くなるのを感じる。フレアの息が首にかかり、ビクッと震えてしまう。それに驚いたのか、フレアは一瞬動きを止めるが、すぐに動きを再開する。数分か、数秒か、まだ噛まれていないのか、それとももう噛まれた後なのか、どれほど経ったのかわからない、長くて短い時間の中、心音、息づかい、衣擦れの音そして緊張と恐怖で混乱する私の思考を、二つの痛みが遮った」


「――ッ!!?」

「あむ……んふっ」


 フレアの満足げな吐息とは裏腹に、私の体には電撃が走っていた。ちくりと刺すような痛みと、癖になりそうな甘美な快楽が首元から伝播し、私を襲う。


「イッ……ふむ……ンアッ」

「ん……んむ…………んぐ」


 声が出そうになってしまい、咄嗟にフレアのネグリシュを噛んでしまう。しかしそれも無駄な抵抗だったようで、フレアがさらに私に吸い付くと、声が漏れてしまった。耳元でなるぴちゃぴちゃと鳴る水音が、私にはしる快楽を加速させていく。


「〜〜〜〜〜〜ッ!!!?」

「んぐっ…………ぷはっ♪」


 涙目になりながら押し寄せる痛みと快楽に耐えていると、一際大きな波が押し寄せる。ワンテンポ遅れてフレアが首元から口を離した。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

「ふぅ……思った通りすごく美味しいわ。鮮度もあるだろうけどやっぱり素材が違うのね」


 痛みと快楽から解放された私が息を整えていると、まるで老舗の常連客のようなことをフレアがつぶやいた。こっちの気も知らずに、噛んでやろうか。と思っているとそれを感じ取ったのか、フレアが訪ねてくる。


「そういえばさっき私の方に噛みついてきたわよね?痛かったんだけど」

「え……あ、それは……あの……」

「……まぁいいわ」


 ネグリシュを噛んだ時、一緒に噛んでしまったのだろう。私は顔を青ざめるも、フレアはそれ以上何も言わず、そそくさとネグリシュを整えた。


「……そんなに痛かったの?」

「……え?……あ、いえ、痛みはそれほど……」

「……そう。じゃあ次、太ももね」

「……え??」


 間違っても気持ちよかったなどいえないなと思った私がフレアが次、と口にする。何言ってるんだと私が不思議そうな顔をして疑問を口にすると、フレアは私と同じような顔をして答える。


「最初に言ったでしょ?ってだから次は太もも、その次は二の腕かしらね。私も慣れてきたから、あなたはそこで寝てるだけでいいわよ」

「あ……」


 完全に頭から抜けていた私をよそに、フレアは私を押し倒す。休憩もそこそこに第二ラウンドへ突入してしまったのだ。

 

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