第6話 運営side Part1
はぁ…
俺、一ノ瀬薫は今激務に追われている。
理由は我が社開発の2作目VRMMO、『Only one Neutral online ~ den Kampf suchen ~』のバグ報告や、その対応などの業務が途切れないからというのもある。
だが本来ならこの激務に追い込まれても、かなりの人数を雇っているうちの会社なら特に問題はなかった筈だ。
筈だった。
だが、あり得ない問題が起こってしまった。
エンドコンテンツに設定されている、黄道十二星座の試練の一つ、『天秤の試練』が攻略され、その上『天秤』の力が一プレイヤーに渡ったのだ。
…そもそも試練の出現確率が0.00000001%と言う確率。
しかも、何十とあるフィールドの中の一フィールド内のどこかに、扉が出現するのだ。
しかも出現してから10秒間の間に半径50メートル以内にプレイヤーが居なければ、扉は消え、72時間は出現しないと言うかなりの鬼畜仕様だ。
それが、サービス開始してからすぐに始まりの街近くに出現し、プレイヤーが侵入できてしまった。
だが、そこまでは良かったのだ。まったくあり得ないことではない。
彼は運がいいなと、監視部の皆んなも盛り上がっていたほどだ。
そう、試練を攻略できるわけがないと、出来たとしても「彼はトッププレイヤーになる素質があるんだろうな」と、そんな認識だった。
それで終わるはずだった。
何故なら、試練のクリア報酬はその戦い方に見合ったユニークスキルと称号。そして、課金アイテムとして追加予定の帰還玉×10。これだけだったのだ。
彼は見事試練を攻略し、監視部も上層部もすごいプレイヤーがいると認識した。
それは、俺もだ。
だが、その後が問題だった。
なぜか、『天秤』が継承された。
彼のために扉が現れた?種族と職業に関係がある?そんなテキストメッセージが流れるようにはしていないはずだから、AIの暴走か?
とも思われたが、開発部に聞いてみても、AIの独断や暴走ではないようで、挙動の範囲内だと言う。
過去ログを漁ってみても、キャラメイクや種族設定をした経歴がない。
それなのに街に降り立ち、何故か、
その難易度と釣り合わない報酬の豪華さから廃棄され、別のものに置き換えられた過去のチュートリアルを始めていた。
「おいっ、これを見てくれ!」
今度はなんだ…
✳︎ 今日は短めです
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