長月
9月になったばかりだというのに残暑と言うにはあまりにも暑い秋口に差し掛かる。紅葉が灰色の殺風景な景色に戻る前の最後の抵抗と言わんばかりに彩る季節のはずだが、例年と比べて残暑とも言えない本格的な暑さが肌をさす。
長月。つまり、9月は俺達にとって結構忙しい月だ。中学から始まる恐らく最も楽しみにされている行事、文化祭である。と言っても俺はあんまり好きじゃないが。何故なら…
「
「…いや…ちょっと予定が…」
「そうだよ黒瀬くんは私とまわるんだもんね?」
「…や、あの…」
こういう
「あの…
「ごめん無理。くろとまわるから。」
こっちに群がる蟻の大群もなかなかに鬱陶しいけど、あっちの蛾は見てるだけで苛つく。黒瀬が嫌がってんのが顔に見えねぇのか?目玉腐り落ちてんのか?その汚らしい手で黒瀬にさわるな社会のダニ共。あと猫なで声で話しかけんな、きもちわりい。
「くろ、お待たせー。日誌書き終わったから帰ろうぜ?」
「しろ!うん。帰る!」
ふわふわの犬の尻尾と耳が生えているように見える。犬派の俺にとってはたまらなく可愛くて、可愛くてしょうがない。もちろん、黒瀬は猫だろうと可愛いだろうし、もし仮に猫だったら俺が猫派に変更手続きをすれば問題ない。
「しろ。そこ交差点だから考え語としていたら危ないよ?」
「うわ。すまんくろ、さんきゅ。」
「いいけどさ、気をつけてよ?文化祭の3日前にしろが怪我して文化祭に出ないんだったら僕も出ないからね。」
「そりゃあ困るな。
「…思ってないでしょ?」
「あちゃ。バレた。」
考え事と言われていたが実を言うと黒瀬に見とれていた。帰り道にあるここの交差点の角には金木犀が咲いている。秋の夕暮れで黄色の花びらが舞い、黒く、ポニーテールで縛ってあるにも関わらず、腰あたりまで長い髪の毛に絡みつく。夕日の色は暁に染まり、黒瀬の宵の色を明るく照らす。
毎年秋のこの頃になると見たくなる光景だ。秋の精霊に見間違うほどの美しさ。その感動の下に揺れ動く”
あぁ、どうして俺の心をそんなにかき乱せるのだろう。惚れた弱みというか、惚れた方の負けというか、でもとにかく真白の名前に負けない白い人間でいたかった。だけど、しろはくろに
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