クロとシロの幸福
あめんぼ
葉月
夏休み中旬、夏が最高に殺しに来ているこの頃、3年ぶりの花火大会が開催される日になった。殺人級の暑さを記録している今年の祭りは日が暮れてからとなっていたが、大人たちは準備に精を出している様子が伺える。
そんな暑さのピークであろう正午に俺たちは花火が見える
涼しげな風鈴の音が風に乗って私達の耳に入る。お祭りの近場である神社に足を運び、暑さに追い込まれていた。
「しろ…あっづい」
「言うな言うな言葉を聞くだけであちいのに…まぁ気持ちはわかるけどよ」
「すまん。てか、そんなことより飯どうする?」
「“てか”で済ませるなよ。…軽くマックにでも行かね?」
「お!良いなそれ採用!いや、やっぱしろは天才!」
「おだてても奢ってやんねぇからな、くろ」
「ブルーハワイのフロートが飲みたくなるんだよ」と呟く黒瀬に「よくあんな甘いもん飲めるな」と返しそんな言葉に笑う君を横目に空を見上げたら----
ラムネをこぼしたのかと思うほどの空、いや、海かもしれない。パチパチ、シュワっと弾ける夏の味。空が段々ラムネの海に見えてきて、雲がふわふわの綿飴に見える。太陽はキラキラ光って赤く見えるからりんご飴かな、なんて思って黒瀬に視線を移す。
君は綺麗な瞳をしまい込んで、さらりと肩に落ちる髪の毛が、夏の暑さのせいなんだろうな、酷く扇情的に目に映って気を紛らわすために空を再び見上げる。
「
心配そうに視界に入り込む
「なんでもねえよ。お前こそ気をつけろよ?」
「うっせえわ!置いていくぞ!」
青い空を背景に神社の階段を降りていく君が凄く神秘的に見えて息を呑む。
「ちょっと待てよ!」
あぁ、カミサマとやらもこいつがほしいのか。花火を写す夜空のような髪を持ち、それでもなお太陽のように輝くこいつが。だけど、こいつは誰が何をしようと俺のものだ。誰にも譲らねぇし、俺以外の影なんかに曇らせねぇ。
「早く俺の腕の中に入れて、一生飼いならしてぇな」
”願わくばこの
雲のように白く長い髪を持つ俺が夏に願う小さな黒く滲んだ欲は誰にも聞かれないように心に蓋をする。
「しろー?どうしたん?」
こんな暑さでも心配するお前の声が何よりも心地よく感じて駆け足で階段を飛び降りた。
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