第36話召喚勇者と現地勇者と伝説の従者

アデル王はニヤニヤしながら 俺を手招きして 他の者を部屋から出るように指示し

た 「最近は活躍しているそうじゃないか?」膝を付いた俺を見降ろしながら偉そうに言う

「お前は この国に伝わる勇者の伝説を知っているか? 遠い昔に魔王が現れこの地を蹂躙していたのを止めたのが異世界から召喚した勇者だ これは誰でも知っている話だが これから話すのは一般に知られていない話だ 伝説の勇者には身の回りの世話から戦闘のサポートまでする 万能の伝説の従者というのが一緒だったらしい   

 その従者のお陰で魔王討伐も成しえたとまで言われている」

一呼吸おいて「なので お前にもパーティーメンバーとして治癒魔法使い それに従者を付ける事にした」手をパンパンと叩くと横の部屋から白い聖衣を着た女性とお腹がポッコリと出た豪華な服を着た男とがっしりした体躯の男が出てきた

「お前のパーティーメンバーになる治癒魔法使いのリリス 従者のクリス 従者の従者のマルコだ ちなみにクリスは我が息子だ」アデル国王が言うと

「何で 俺が従者なんだよ?自分の身の回りの事さえ出来ないのに」ニキビ跡が汚いクリスが口を尖らせて文句を言う

「だから 補助役としてマルコを付けたではないか」

「どうせなら勇者が良かったよ!!」クリスがグチグチ言うが

「この地の勇者はすでにいるのだ それに奴らは伝説の従者の存在を知らない」

「よろしく 頼む」俺が言うと

「よろしくお願いします」リリスが頭を下げる

「よろしく」短くマルコが挨拶する

「俺はこの国の王子だから 口のきき方には気を付けろよ」納得いかない顔でクリスが鼻を鳴らしながら睨みつける


四人の能力と連携の確認の為 Bランクのダンジョンに潜る事にした

ゴブリン程度なら 各個人で倒せるが オークになると個人じゃ倒せない強さだ

リリスが聖魔法で攻撃し クリスがヘッピリ腰の剣技で向かうが無理だ 結局俺が首を切り飛ばし倒した

「痛い!! 痛い!!」とクリスが喧しく騒いでいる マルコは何の役にも立たない このメンツで魔王を倒せるのか?


「どうだった?」王城へ戻るとアデル国王が聞いてくる

「まあ 普通じゃないか」うんざりしながら俺は答える

「そうか S級ダンジョンに挑戦できるか?」国王が言うが

「無理だな」素っ気なく俺は答える

「まあ そう言わず 一度挑戦してくれ」国王が食い下がる 多分S級ダンジョン踏破の実績が欲しいんだろうな でもこのパーティーなら全滅するぞ


「俺ならS級ダンジョンなんか あっという間に踏破だぜ!!」浮かれたクリスを先頭に近衛騎士十人を引き連れてS級ダンジョンに向かう 国王命令という形で

入って早々 良い所を見せたかったのかクリスが突っ込み怪我をする

「痛い 痛い 嫌だ 死にたくない もう帰る 撤退だ」散々喚き散らして近衛騎士に抱えられたクリスと共に帰還する


自分の息子の醜態で失敗したので 誰も攻める事が出来ず国王は頭を抱えている


「なあ 勇者よ」不意に俺に声をかける

「なんですか?」どこにぶつけていいのか分からない怒り 焦りを感じながら不敬な言い方をする

「聖王国は知っているか?」いきなり国王が聞いてくる

「名前ぐらいは聞いた事ありますよ」突然 何の話だ?

「あの国は邪教を広め 力で国民を押さえつけ 豊かな国なのに 今回の勇者召喚や魔族との闘いの協力金も出さん!! どうだ? 聖王国を乗っ取ってみないか? クロノス王を殺せば あの国はお前の物だ 金も地位も思いのままだぞ 押さえつけられている国民もお前を英雄扱いするだろう」

そうなのか? このパーティーで無謀な死を迎えるより一国の主の方がいいのか?


「水と食事を出して下さい」ぼんやりと考えていると 牢の外から声が聞こえた

三日振りに水を飲み食事をしていると 綺麗な顔をした男とその後ろに宙に浮いている女性が牢の前にやって来た 人間 エルフ 黒猫獣人がさっと牢の前に立ち

「この者が召喚勇者です クロノス王」人間の女性が俺を指さしながら言う

「君が召喚勇者かい?」クロノス王に問われ

「そうだ」不貞腐れて答えると

牢の鍵を開けて入ってきた黒猫獣人に「無礼者!!」叫んで殴られる

「まあまあ マオ手荒にしたら駄目だよ で?君達は何をしに来たの?」

「お前を殺して この国を救いに来てやったんだ」俺が叫ぶと

「死ね!!」黒猫獣人に鼻が潰れる勢いで殴られ 吹っ飛んで壁に叩きつけられる

「何か 勘違いしてるみたいだね? もういいよ 帰ってもらって」

「ですが国王!!この者は国王を殺しにきたと宣言したのですよ」人間の女性が不満気に言う

「だって この人じゃ 僕を殺せないよ シャルロットなら分かるだろ?」

「そ それはそうですが」

クロノス王と中に浮いた女性が立ち去ると シャルロットと呼ばれた女性が俺達を睨みつけながら「出ろ!!」冷たく言い放つ

ノロノロと外に出ると

「二度と来るんじゃないぞ!!」黒猫獣人に尻を蹴飛ばされ 追放された


「で 召喚勇者ってどのぐらい強いと思う?」マオがシャルロットに聞いてくる

「そうね シリウスさんの身体強化が掛かったノエルさんには勝てる気がしないけど あの召喚勇者には負ける気がしないわ」ヨロヨロと去り行く四人を見ながらシャルロットが答える





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