第34話リリエルとマオ
雨の中泣き続けていたシャルロットも落ち着きアジムさんの所へ戻った
「無事だったかい?」アジムさんは斧を手に持ち仁王立ちで小屋の前にいた
「はい お陰様で」仇を討った達成感と改めて村の人達が居なくなった現実を噛みしめで複雑な感情が渦巻いていた
「「シャル姉ちゃん」」小屋からアルとキャロが出てきて抱き着いてくる
「アル キャロ お姉ちゃんの住んでいる国に一緒に行こう」
シャルロットが言うと
「「うん」」言いながらもチラリとアジムを見る
「もちろん アジムさんも一緒に来ませんか?」
「え 俺もいいのか? 俺は炭焼き以外は何も出来ないぜ」アジムが驚き 答える
「アジムおじさんも一緒にいこうよ」アルが手を引っ張ってアジムを見る
「国の北の方には深い森が広がっているので 炭焼きのお仕事も出来ますよ」
暫く 考えた後
「そうかい そうだな 二人の事も気になるし 俺も連れてってもらおうかな」
「そうと決まれば リリエル転移をお願い出来る?」
「わかった 一旦国に戻って またここに来ましょう」
シャルロット リリエル マオ トワ アルフォンス キャロット アジムの七人で 王宮前の世界樹の前に転移する
「こりゃ たまげたな」アジムが周りをキョロキョロしながら驚いている
シャルロットは王宮に入りクロノスの所に行き 事情を話す
炭焼き小屋が出来るまで 空いている孤児院に泊まってもらう事にして 大工のエドに炭焼き小屋の建設を頼む
いろいろと手筈を整えてシャルロット リリエル マオは旅に戻る
商人の休憩所から また道を逆上しリリエル マオの住んでいた場所を探す
丸一日歩いたぐらいで 少し森の中に入った所に集落跡をトワが見つけ 皆で向かう 人の気配は無く 襲撃されたそのままに建物は朽ち果て 畑は雑草に覆われていた
「私の村が!!」哀し気にクラリスが呟き 自分の家だった廃屋に入ると 父親が使っていた乳鉢と母親の眼鏡を見つけ ポロポロを涙を流しながら袋にしまう
「お父さん お母さん 私 今幸せだから 安心して」そう言うと廃屋から出てきた
「ねえ シャルロット ここを燃やしてくれない?」
「いいのか?」
「うん このままじゃ 哀しくて村の人達が浮かばれないから……」
「分かった…… 業火!!」
森に延焼しないように加減しながら村と畑を焼いていく
「ありがとう さようなら」村の焼け跡に向かってそう言うとリリエルは踵を返して村を後にした
マオの手掛かりは大きな岩の上で寝ていた時に攫われたぐらいだから 先ずは大きな岩を探す事からだった
四日程歩いた頃にトワが大きな岩が突き出た場所を見つけた
それを見て「確かに こんな感じだったような気がするな~」マオが呑気に言う
岩をよじ登ると突き出した岩と森の境界線ぐらいに「シロナツメ」の花が咲き誇っていた
(ああ そうか あの時母ちゃんが好きだったシロナツメの花を摘んで帰ろうと 考えながら寝ちまったんだっけ)マオは思い出しながら シロナツメの花を掘り出し 土を付けたままバックに入れて行く
やっとの事で岩を登ってきたシャルロットとリリエルは息を乱していたが シロナツメの花畑を見ると「「うわぁ 凄く綺麗ね!!」」と感動して座り込んでしまった
二人の息が整ったのを見て「ちょっと 思い出したから行こうか? ああ トワは一応空からも見てくれないか? 多分 こっちの方角だ」
「「ええ 行きましょうか」」二人が腰を上げ 「うん 分かった」トワが飛び去る
程なくして トワが戻って来て「確かに こっちのほうに行ったら古い家があるよ」と報告する
「間違いない!!」マオが小走り気味に進みだす
古い家があった 壊れてはいないが 人が住んでないので荒れた感じだ
マオは裏手に周ると少し土が盛り上がった場所に バックから取り出したシロナツメの花を植え始めた 「母ちゃん ごめんな ずっと来れなくてごめんな」
ボロボロと泣きながら土を掘っては花を植えを繰り返していた
植え終えたマオは家に入り母親のエプロンを見つけ ポケットを探ると 乾燥して
バラバラになった香草が出てきた 香草をポケットに戻しエプロンをバックに入れた バックにはシロツメクサの花の株も三つ入っている
「キツイ行程だったな ありがとう」マオは涙を拭きながらシャルロット リリエル ラテを見てお礼を言う
「後は 国に帰ってお墓を作ってあげましょう」シャルロットが言うと
「じゃあ 転移するわよ」リリエルが言うと他の三人は彼女の周りに集まった
聖王国に戻るとクロノス王に帰還の報告をし 墓地の管理人の親父さんの所に行き
墓の区画を貰い それぞれに袋やバックから取り出した遺品を納め祈り始める
マオは祈りの言葉を紡ぎながらシロナツメの花を墓の前に植えていた
それから三人は風呂に入り 宮殿に戻った
宮殿の使用人やメイドさん 料理人は国民の当番制になっている
最初 宮殿で働く人を募集したのだが 人々が殺到して大変な事になったので 宰相のべスにより当番制となった 働く人達に給金を払おうとしたら 無給が当然だと断られた 彼ら彼女らに言わせると「いつも ありがとう」とクロノス王に声を掛けてもらうだけで 金貨百枚の価値があるそうだ 当番予定は二年先まで埋まっている
この日はマオが料理係に参戦した
クロノスとマリアートが待つ食卓へマオがスープを持って来た 少し緊張しながらも
二人にスープを提供すると 一口食べてクロノスが「これは美味いな マオがつくったのかい?」と褒めると「確かに これはあ美味い」マリアートも続けて言う
「俺特製のおまじないをしてるからな 上手くて当たり前だ」涙を溜めてマオが自慢する(母ちゃん やっぱり母ちゃんのスープは最高だぜ)
そう胸の中で語りかけながらマオは食堂を出て行った
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