第33話雨のシャルロット 

トワが三人の所へ降りてきて

「向こうの方に 村らしき所があるよ」と報告する

言われた方へ獣道を通って向かう途中 シャルロットは見た事のある洞を見つけた

急ぎ走って洞に行き 中を見る が何も無い 骨どころか服の切れ端さえ無い

「アルフォンス キャロット!!」返事が返ってくる事も無く

空しく自分の声が洞の中で響き

「ううっ……」膝をついて打ちひしがれ リリエルとマオも掛ける言葉が見つからず

シャルロットを見ていると

「何だ また子供の遭難者か?」

熊の毛皮を着た大男が洞に入って来て 声をかける

ビックリして三人が男を見ると

「腹は減ってないか? どこか具合の悪い所とかないか?」優しく問いかける

「あ はい 大丈夫です ありがとうございます それよりも「また」と仰いましたが 前にここで子供を保護された事があるんですか?」シャルロットが目に光を帯びて男に聞く

「ああ 四年前ぐらいに 雨を避けるためここに入ったら 死にかけの子供がいたんで 家に連れ帰り看病した事があるんだ」男が訝し気に答える

「それで その子供はどうなったんですか?」

「今は 元気に家で暮らしてるよ」男が言うと

「子供達の名前をお聞きしても?」わずかな希望を見出そうとシャルロットが問う

「アルフォンスとキャロットだよ あ 俺は炭焼き小屋をしているアジムってんだ」

言われてシャルロットは「ああ ああ……」と泣き始めた

「私はシャルロットを申しますその子達の姉です 助けて頂いてありがとうございます」嗚咽混じりにお礼を言うと

「そうか あの子達が言ってたシャル姉ってのは お嬢ちゃんの事だったのか」

「アジムさん 二人の所へ連れて行ってくれませんか?」

「ああ もちろんだ」

皆でアジムの炭焼き小屋に行くと

「こりゃ ついてるぜ こんな所にガキが二人もいるなんて!!」

ざらついた男の声が聞こえた

急ぎ小屋に向かうと女の子を庇うように男の子が前に出てガラの悪い男二人を睨んでいる

「邪魔するな!! クソガキが!!」

殴りかかろうとする男に シャルロットが後ろから切りつける

「今度こそ 守る!!」

そう言って男の前にまわり袈裟懸けで切って倒すシャルロット

「て てめえ 俺らが誰だかわかってんのか? ただで済むと思うなよ!!」

喚きながら もう一人は脱兎の如く逃げ出した

「アル キャロ!! 無事? ごめんね」泣きながらシャルロットが二人を抱きしめる

「「シャル姉ちゃん」」二人も思いがけない再会に戸惑いながらも 泣きながら抱き着く

「良かったな アルフォンス キャロット」アジムさんも目を赤くして喜んでいる

「本当にごめんね 早く来てあげられなくて」シャルロットが泣きながら言うと

「僕 ぼんやりと覚えてるんだ シャル姉ちゃんが攫われた時 あいつらが 僕とキャロは死んでいるから 置いていけって言ってたの でもアジムさんに 助けてもらったんだ」

アルの話を聞いて膝を付き頭を下げて感謝の意をアジムに伝えるシャルロット

「雨を避けるのに洞に入ったら ぐったりしている二人を見つけて小屋に連れ帰り暖かくして 薬と食事をあげたらゆっくりとだが回復したから 面倒みていただけだよ いいから 頭をあげてくれ」照れたアジムがぶっきらぼうに言う

「しかし 面倒な事になったな」アジムが呟く

「「ごめんなさい アジムおじさん」」アルとキャロが泣きそうになりながら謝る

「なに 奴らを殲滅すればいいだけです」シャルロットが事も無げに言う

「最近 兄貴に似てきたよな」マオが言うと

「でも マオも反対しないんでしょう?もちろん 私も反対しませんが」リリエルも怒っているようだ


「でも アジトがわからないだろ?」アジムが言うと

「いえ あの皮鎧には見覚えがあります 私の村を襲った奴らです」

言ってる所に逃げた男を空から尾行していたトワが戻ってきた

「多分 場所的にシャルロットのいた村じゃないかな?」

人の姿になり正確な場所を説明する

「やっぱりね 父さん 母さん 村の人達の仇を討つわ」

蝙蝠が人に変身したのをポカンと見ているアルとキャロに

「二人はアジムさんとここにいて アジムさん 二人をお願いします」

アルとキャロを見て 次にアジムを見てシャルロットは言いながら 剣を確認する

「じゃあ 行って来ます」

トワの先導でシャルロットとりリエルは走りながら マオは木の枝を飛び移りながら進んでいく


トワに案内されたのは やはりシャルロットの村だった

見張りをしていた男二人を一瞬の内に切り倒し 村の中央に向かって走る

先程 逃げた男が仲間らしい男達と話しているのを見つけ男達の輪の中に飛び込み 身体を回転させて男達の首元を掻き切った

「「ヒユッ」」と声にならない音を出してバタバタと倒れて行く その倒れる音を聞いて廃屋から髭面の男が出てきて状況を見て「野郎共!! 襲撃だ!! 皆出てこい」

叫ぶとあちこちの廃屋からワラワラと薄汚れた男達が出てくる

「探す手間がはぶけたわ あんたが頭なの?」シャルロットは不敵に笑い髭面の男に向かっていく

「そうだ なんだ? 敵討か?俺も戦場で鬼神と呼ばれた男だ!! そう簡単にはいかねえぜ くたばりやがれ!!」

真正面がら打ち下ろされた剣を 右に避けて 髭面の膝を切り裂く

「ブゴッォォ」声を出して髭面が崩れ落ちる

見ていた薄汚い男達は慌てて逃げ出す

「りリエル マオ 一人も逃がさないで!!」シャルロットが叫ぶ

「「分かった!!」」

リリエルは逃げようとする者に「樹牢」で足止めし マオは素早く動き彼らの 足を切っていく

髭面の男に「この村を襲撃したのは お前達か?」シャルロットが静かに聞く

「ああ そうだ」答えた途端にシャルロットが右腕を切り飛ばす

「村の人達がどうなった?」さらに質問を浴びせる

「男は皆殺しにして 女 子供は奴隷商に売り払った」今度は左腕を切り飛ばす

「リリエル マオ手伝ってくれる?」

野党達を村の中央に集めシャルロットが冷たい目で見つめ静かに言葉を発する

「業火」

盗賊達は激しい炎に包まれ「熱い」「助けて」「死にたくない」と断末魔の叫びを発していたが やかて静かになった

「やっぱり 兄貴に似てきたよな」マオが呟く

シャルロットは廃屋になった崩れかけた自分の家に入り 金目の物は全て奪われていたが 残っていた父母が愛用していたカップを見つけ布にくるんでバックに入れる


遺骨や遺体がどこにあるのか分からず 「お父さん お母さん アルとキャロは私が守るから 安らかに眠って下さい」家の前で熱心に祈り始めた

盗賊たちを焼いた火が消えかかる頃 ポツポツと雨が降り始めた

雨の中 シャルロットは空に向かって「おとうさーん おかあさーん」と慟哭する









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