第31話黒猫獣人の移動

マオとハオは食器やスプーンを並べながら 他愛の無い話をしていた


「さあ お待たせしましたね 沢山あるから お腹一杯食べてね」

ハルがスープを運び込んでシャルロットがパンと肉を焼いたものを持って来た


「「うわ~ 美味しそう!!」」ハオとマオが席に着いて 全員で感謝の祈りをして

食べ始めた

マオはスープを一口食べると 暫く租借しながら 目を閉じ涙を流し始めた

「母ちゃん!?」

涙を貯めた目でハルを見つめ 「俺の母ちゃんと同じ味だ!! 何回か同じ物を作ろうとしたんだけど 出来なかったんだ どうしておばさんは これを作れるんだ?」


「マオちゃんのお母さんは名前はなんていうの?」驚きながらもハルがマオに聞く

「母ちゃんの名前はマリだよ」寂しそうにマオが答える

「そうだったのね マリは私の双子の妹よ それでマリはどうしてるの? 元気?」

「母ちゃんは もう昔に死んじゃった 俺は母ちゃんの作るスープが大好きだったから 何度も試したんだけど 同じ味にならなくて 一緒に作った事もあったから間違ってないと思うんだけど」苦笑いでマオが言う

「マリは死んじゃったのね 唯一の肉親だったから寂しいわ…… マリはスープの仕上にポケットから 香草を入れてなかった?」エプロンのポケットから乾燥した香草を取り出しマオに見せる

「そういえば 美味しくなるおまじないとか言って 最後に何か入れていたような気がする でも調味料の中にはそれっぽいのが無かったんだ」

「これはね グルっていう香草なの ポケットとかに入れて温めておいて最後に入れると 味がとても良くなるのよ これを持って行きなさい」香草をマオに手渡しながらハルが目を潤ませる


「教えてくれて ありがとう おばさん!! 今度こそ母ちゃんの味を再現してみせるぜ!!」

「いいのよ それよりもマリとマオの話をきかせてくれる?」

夜更けまで四人はいろいろな事を話した



昨晩遅くまで 話こんだこともあり 朝も遅くにマオもシャルロットも起きた

台所ではハルとハオが朝食の準備をしている


突然 外から男の叫び声が聞こえてきた

「奴らがくるぞー!!」

男が叫びながら家々を回る

「奴らって?」シャルロットがハルに聞くと

「昨晩 話した「狩り」をする連中よ リーダーが領主の息子だから 下手に反撃出来ないのよ」溜息をつきながらハルが料理の準備を止め ハオ マオ シャルロットに向かって 「逃げるわよ」言って戸口に向かう

外に出ると 村人達が森の方に向かって走って逃げている

森の奥の洞窟に村人達が逃げ込んだの見てシャルロットが隠蔽の魔法で入口を隠す


「何が どうなってるんだ?」

マオがハルに聞くと

「あいつらは「災厄の種族を退治する」とか言いながら私達を殺しに来たのよ この前も そう言って ただ新しく買った剣の試し切りをしたかっただけみたいで そのせいで ジルの息子のギルが殺されたわ……」

「領民を守る立場の息子が そんな事を?」シャルロットが目に怒りを込めて 静かに呟く

「私 ちょっと 行って来ます」

シャルロットが出て行こうとすると

「待ってくれ 俺も一緒に連れて行ってくれ」ジルが同行を頼んできた

「おい!! ジル 危ないから止めておけ」村人達が止めるもジルは 首を振り

「一発 殴らねえとギルも浮かばれねえ」そう言って シャルロットの隣に立つ


村に戻ってみると 何軒かの家が燃やされ 畑も荒らされている

「あなた達 何してるの?!」シャルロットが怒りを含んだ声で叫ぶ

「なんだ? 貴様は?」豪奢な服を着た 若者が答える

「俺達は 厄災を招く奴らを処分しに来ただけだ」

 

突然 シャルロットの後ろからジルが飛び出し 若者に飛び掛かった

「ギルの仇だー」

ジルは体ごと若者にぶつかり 若者を地面に叩きつけ 馬乗りになり 顔に拳を叩き込む 何度も 何度も やがて若者は意識を失う それでもジルは止めない

「貴様!! 領主のご子息であるエリック様に無礼だぞ!!」

呆然と見ていた騎士が慌てて止めに入るが ジルに振り払わて無様に尻餅をつく

「この災厄の民がー!!」剣を抜きジルに切りかかる

「せいっ!!」シャルロットの剣に騎士は自分の剣を弾き飛ばされて 目を見開く

「ジルさん その辺にしないと そいつ死んじゃうわ」

シャルロットの言葉にジルは拳を止め 子供みたいに泣きじゃくり始めた

優しく背中をシャルロットに撫でられ 落ち着くと 周りで立ち尽くす騎士達を睨み 「二度と来るんじゃねえぞ!!」呟くように言うと森へ入って行った


「ま 待て!!」騎士が追いかけようとするがシャルロットが剣を構え

「追うなら 切るわよ」冷たく言い放つ

「お前等 こんな事して 只で済むと思うなよ」騎士が喚くが 

(急がないと ここの村人達が危険だわ)シャルロットは考えていた

多分 息子をこんな目に遭わせた村人達を許さず 報復を考えるだろう

騎士や傭兵を集めて 指揮してここに来るのに三日ぐらいだろうか?


急ぎ 洞窟に帰って事情を説明し 移住の説得をする

全員 納得して ラリウス王国への移住を決断する 荷物を纏めるといっても

迫害しながらも しっかりと税は徴収していたらしく ほぼ荷物らしいものは無く

その日に 出発する事が出来た


奴隷商は燃えた家の柱に括り付けたままにして 馬車に老人 子供 妊婦を乗せ 他は歩きで ラリウス王国を目指す

マオは黒猫獣人と一緒に暮らせる事を喜び ご機嫌な様子で最後尾を歩いている


ひと月程して ラリウス王国に辿り着くと 門の前で村人達が躊躇し始めた

「やっぱり 人間と共存なんてできないんじゃないか?」

「また 迫害されるんじゃないか?」

いざ 門の前に立ったら そう言って戸惑っている


「そんな事は ありませんよ この国は心正しき者であれば 誰でも受け入れます もちろん 国民もあなた方に偏見を持っていません」美しい青年が門の中から出てきて黒猫獣人達に声をかける

「申し遅れましたが私はこの国の国王をしているクロノスといいます 皆さんを歓迎いたします」


黒猫獣人達はポカンとしながら クロノスを凝視している

「あ ありがとうございます!!」

村長のマキが慌てて頭を下げ

「我々を受け入れて下さり感謝の念しかありません」

「「ありがとうございます」」村人達も口々に感謝を伝える


「ねえ マオ あの綺麗な人が国王様なの?」

ハオがマオの袖を引っ張りながら目はクロノスを凝視したまま聞いてくる

「ああ そうだよ 俺の大好きな兄貴だ 俺の夢は兄貴の奥さんになる事だからな」

「そうなんだ」呆れた顔をハオはマオに向ける


黒猫獣人達がクロノスの案内で恐る恐る門の中に入っていく

「ここが 皆さんに住んで頂く家というか土地です」

森の前に新しい家が40軒ほど建ってる 周りは畑で既にいつでも作付けが出来るように開墾されている

「「おお!! 凄い」」黒猫獣人達が歓喜の声を上げる

「もし 狩りをするのに森に入るなら 森には薬師の村とエルフの村がありますので 仲良くして下さいね 分からない事があれば マオや他の国民に聞いてもらえれば 親切におしえてくれますよ」クロノスが言い終えると


「国王様 教会には私達も行っていいんでしょうか?」

ジルが神妙な顔で聞く

「もちろん 大丈夫ですよ この国には現女神がいますので 是非 行ってあげて下さい」

「俺達が教会に行けるなんて!!」


「まあ 今日の所は旅の疲れを癒してください マオ 後は頼むよ」

そう言うとクロノスは去って行った


「わあ!!凄い ベッドも家具もあるよ!!」

「台所には 鍋も食器もそろってるわ!!」

割り当てられた家に入りハオとハルは驚いていた

フカフカのベッドでハオはハルと久しぶりに一緒に眠りに就いた























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