第30話囚われ人とマオ

 縛り上げてる山賊達を砦の中に押し込み クロノスが「獄炎」 唱えると砦は炎に包まれ 暫く燃えて やがて建物自体が崩れ落ちた

[お兄ちゃんは 悪人に本当に容赦ないね]

「俺達や国民に見せる甘々の顔とは 正反対だな」

「でも それがニィニの良い所 大好き」

三人で話してると マオがオヤッという顔で救出された人々を見つめた

「アッ!!」声を出して 救出された人々の方に走って行く そこには マオと同じ黒猫獣人の子がいたのだ

「お前 黒猫獣人族か?」マオが大声で話しかける

「え ええ そうです」小さい声でオドオドと答える黒猫獣人の娘

「そうか 俺はマオってんだ よろしくな!!」

「私はハオって言います 宜しくお願い致します」

「そうか 俺は母ちゃん以外 同じ種族と会った事が無いんだよ ハオの他にも 黒猫獣人はたくさんいるのか?」ハオの手をブンブン振りながらマオが嬉し気に聞く

「はい 村には 二百人ぐらい住んでます」

「何で 捕まったんだ?」

「父親とラリウス聖王国にマリアート様に祈りを捧げに行く途中……」

ハオの村は最近 不作続きで村を出て働きにいく者も少なくないので 村を代表して この状況を改善出来るようにマリアート様に祈りを捧げに行くところだった 

黒猫獣人は不吉と言われ 外に働きにいった者も差別を受け苦労しているらいしい


クロノスは次元収納から宝部屋から 持ってきた装飾品を地面に広げ

「親族の物があれば 持って行って欲しい」

そう告げるとハオが一本のステッキを見つけ 駆け寄り 抱きしめ

「父ちゃん!!」泣き始めた

他の女性達も「あんた~」「パパー」泣きながらリングやペンダントを握りしめている

 (マリ 少しこちらに来てくれないか?)クロノスが心の声でマリアートを呼ぶ

「なんじゃ? 私も忙しいんじゃが」

急にクロノスの横に現れたマリアートを見て皆ビックリしている

「砦に浄化をしてくれないか?あんな奴らだからゾンビなんかになられたら 困るからな それとこの人達の縁者の救済を頼む」

「わかったのじゃ」マリアートが目を瞑ると砦に光が差し 森のあちらこちらからは金色の光が空に昇っていく

「あ あ ありがとうございます あの人は今救われました」

シャルロットから最初に剣を奪った女性が跪いてマリアートに祈る 続いて他の女性も祈り始める




そんな時 砦の反対側から格子付きの馬車に乗って小太りの男がやって来た

「こりゃあ 一体何があったんだ!?」

焼け落ちた砦跡を見ながら 一人でブツブツ言っている

男の顔を見たシャルロットが「あいつが 私達三人を攫った奴隷商よ」

クロノスに囁くと

「皆さん 帰る場所はありますか?」女性達に尋ねる

何人かは首を横に振る

「分かりました 帰る場所が無い人は我が国においで下さい」


クロノスは奴隷商の馬車に飛び乗り次元収納から取り出した剣を突きつけ

「おい お前は奴隷商だな 彼女達を故郷に連れ帰ってやれ」

首筋を薄く切りながら 凄む

「な なんだ お前は?」体を固くさせて 怯えた声で聞いてくる

「シャルロット こいつに付いて行って 約束を破るようなら殺して 君が皆を送ってくれ」

「分かりました」シャルロットがクロノスに代わって 奴隷商の横に座り剣を奴隷商の首に当てる


「では 帰る場所のある方は馬車に乗って下さい」

シャルロットが女性達と話し合いながら 行程を決めていく


「兄貴ー 俺も一緒に行っていいか? 黒猫獣人の村を見たいんだよ」

マオがハオの手を引いて頼んでくる

「いいよ 一緒に行って もし暮らしが厳しいようなら 聖王国への移住も打診してくれ」クロノスがマオの頭を撫でながら 優しく言う

「わかった!!」マオは元気良く答え 馬車へ走って行った

クロノスとりリエルは行き場の無い女性達と共に転移魔法で聖王国に帰る事にした



□ □ □ □ □


結局 ハオを送るのは最後になってしまった

ハオの村に入るとシャルロットと格子付きの馬車を見て村人は警戒している

そこにハオが顔を出し

「みんな~ この人は私を助けてくれた恩人だ 安心していいよ!!」

ハオの言葉に村人は警戒を緩めるが 完全には信用していないみたいだ

「すげ~ こんなに黒猫獣人がいる」ハオの横から顔を出してマオが大声で叫ぶ


「私達は三聖女パーティーという冒険者です たまたま奴隷売買の現場を押さえて捕まっていた人達を故郷に送り届けていて 最後がこちらのハオさんなんです」

シャルロットが説明すると 村人達はざわつきはじめた


「ハオー!!」

ざわめく村人達お中から一人の女性が走り寄ってきてハオを抱きしめた

「母ちゃん!!」ハオも母親の胸に顔をうずめて泣き出した


「父さんが 父さんが!!」泣きじゃくりながらハオが言うと


「あの人も 辛い思いをしたんだね」何かを察したのか 母親も 膝を地につけマオを抱きしめながら涙を流す

 二人を見ていると一人の村人が近づいて来て

「ハオを送って頂きありがとうございます 私は村長のマキと言います 大したおもてなしは出来ませんが 今日は この村でご静養下さい」と頭を下げながら申し出てくれた


「ありがとうございます お言葉に甘えてご厄介になります その男は奴隷商ですので 馬房の柱にでも縛り付けておいてください」

「「奴隷商だって!!」」何人かの男達が殺気だって 奴隷商を引きずって何処かへ行ってしまった


「村長!! お二人のお世話は 是非 私にさせて下さい 聞けば娘も夫も助けて頂いたそうなので」ハオの母親に言われ ハオの家に泊めてもらうことになった


「大したおもてなしは 出来ませんが 自分の家だと思って寛いで下さい 申し遅れましたが私はハオの母親でハルと言います」

二人を家に招き入れながら母親が言う

「ありがとうございます 今夜一晩お世話になります 私はシャルロット この子はハオです よろしくお願いいたします」シャルロットが習った貴族風の挨拶で返す

「では 食事の用意をしますので 少しお待ちください」

「あっ お手伝いします」シャルロットが言いながら母親の後ろをついていく


「シャルロットさんは人間ですよね? 私達と一緒にいても平気なんですか?」

「ええ 何故ですか?」

「私達 黒猫獣人は呪われた種族と人間からは忌み嫌われる存在ですよ 一緒にいれば厄災や不幸を呼ぶといわれているから 人間は関わろうとしないし 面白半分に狩の標的にもされます」ハルが暗い顔をして聞いてくる

「子供の頃からマオと暮らしていますし 当時は私達全員が不幸でしたし 逆に人生最大の幸福を得ましたから 偏見は無いですね」

「そうですか」ハルは少しホッとしたうに薄く笑った

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