第28話税と黒竜の鱗

孤児院の食堂でアリスが淹れたお茶を皆で飲んでいると 誰かがドアをノックした

 「はい」言いながらコリスがドアを開けると 一組の男女が入ってきた

「初めまして 私は宰相をさせて頂いています エリザベスと申します 魔女の森の皆様が移住されたと聞きまして ご挨拶に伺いました」優雅にお辞儀をするエリザベス

「宰相様がわざわざ挨拶に来られるなんて!! どうぞ 頭を上げて下さい」

ルイーズが慌てて挨拶を返す

「私はルイーズと申します この者達のリーダーをしております よろしくお願いいたします」

「本日は この国の住み方や税について 軽くお話をしておこうと思いまして 先ず この国には悪人はいません ここで悪い事を考えて実行に移そうとすると 前ジョイ王国の北門に強制的に飛ばされ 二度とこの国に入れません 単純な喧嘩や悪戯をした子供を叱るのは 悪意からくるものでは無いので大丈夫です ただ子供の悪戯も悪意からくるものであれば 子供と言えど北門に飛ばされます 皆様 国民同士仲良くされる事を願います

 それと税についてですが この国は基本 人頭税だけです一人銅貨五枚 しかも移住されたばかりの方は一年間免除されます」

エリザベスが一気に話し終えると

「人頭税だけでは 国が立ちいかないのではないですか?」

ルイーズが疑問を口にする

「普通 そう思われますよね お金が無くては国が回らないと だから他国では お金を溜め込む手っ取り早い方法として税を重く取り立てて お金を溜め込みつつ国が回るように流通させるのです  しかし国王はそれを嫌います 曰く「一生懸命働いたのに自分のにならないなんて 酷いだろ?」 「お金なら宮殿に山盛りあるし 足らないなら俺がレアな魔獣たおしてくれば金になるだろ?」などと言われてこの国での税金の取り立てを積極的にされません しかも国民は「こんなによくしてもらってるのだから せめて税金を納めさせてください」と税を払いたがるのです 国王に相談すると「女神様のお陰だから更なる信仰心を持って欲しい」と言われ そのままです ならば せめてと宮殿と教会を国民総出で建てました 皆さん それで少しは納得したようですが」エリザベスがやれやれといった感じで話す

 「だから この国では税金の代わりに公共事業を国民が 自らの手と意思で無給でやっているのです あ!! これは皆さんに無給で公共工事に出ろと言う訳ではなくて 今現在のこの国の事情を説明させていただいただけです」エリザベスが慌てて言うと

「分かりました この国が素敵なのは そういった事情だったのですね 私達も女神様への信仰を深くし この国の為にありたいと思います」

ルイーズと後ろで聞いていた魔女達が深々とと頭を下げる


「それでは 次は私ですね」男の方が話はじめる

[私は国王の執事をさせていただいてます 黒竜のドラゴと申します ルイーズ様はトワ様のお知り合いと伺いましたが 私もトワ様と縁を持たせていただいておりまして これもトワ様のお導きでしょうか? これはつまらないものですが お近づきの挨拶として お納めください]

立派な黒い竜の鱗を差し出してきた

「これは ご丁寧にいたみいります 有難く頂戴いたします」

黒い鱗をルイーズが受け取り深く頭を下げる


  「世界樹の葉に黒竜の鱗!! この二つがあれば 何でも作れる!!」

「宰相様と黒竜様が私達なんかの為に わざわざご挨拶にきてくださるなんて!!」

宰相が挨拶に来たり 黒竜が執事をしてたり おまけに鱗までくれるなんて 

どこからなにを突っ込んでいいのか分からない後ろに立つ魔女達はルイーズの後ろで頭を下げながら 驚嘆し恐縮していた


「それでは 皆様 お疲れでしょうから 私たちはこれで失礼致します」

二人は美しい所作でお辞儀をすると帰っていった



「さあ あんた達 この国で頑張るわよ!!」

ルイーズの言葉に

「「「おう!!」」」

魔女達が力強く答える


 次の日 シャルロットとルイーズ達は森の中に来ていた 既に森に棲んでいるエルフが何人か興味深そうに覗いていた

「じゃあ この辺りでいいのかい?」建築責任者のエドがルイーズに聞いてくる

「はい この辺りでお願いします」ルイーズは周囲を見ながら答える

「分かった 建物は一階が作業場兼研究所 二階が寝室だな 四日程で出来ると思うから 少しの間待っててくれ」

「四日で!?」

魔女達はビックリしている 

四日間は自由行動となり 若い魔女達は街中を散策して店を覗いたり 美味しいご飯を食べたりと楽しんでいた マイナだけは昼の鐘から夜の鐘の間お風呂を満喫していた


三日目の昼過ぎ エドが魔女のいる孤児院にやってきて 家の完成を告げた

驚きながら見に行くと 本当に完成していた

「中の造りもしっかりしているし 凄い速さですね!?」

ルイーズ達が再度驚き 賞賛すると

「なーに 宮殿や教会で慣れてるからな」エドが自慢げに鼻をならす


 二階の寝室は二人部屋になっていて ベッドとタンスが一部屋に二組置かれている

荷物を運び入れ明日からの仕事に備え 早めにベッドに入る魔女達

ルイーズは一人部屋をもらい トワの残した覚書を読んでいる

「世界樹の葉を貰えないか 国王様にお伺いして 黒竜の鱗の精製の方法も調べないといけないね~」考えながらも眠りに落ちていった


 魔女の森から北へ行った村で 村長の息子と取り巻きが全身が黒くなり変死したという風の噂を一年後にルイーズは聞いた












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