第16話取替え子②


朝起きた二人と三匹は市場を歩いて朝食を摂った テルミン伯爵の屋敷に行くと 門の前に大勢の武装した男達が

並んでいた 昨日襲撃した誰かが知らせたのだろう

それにもかかわらずハイジ達はズンズン門に向かって歩いていく

「おい!! 止まれ 何か用か?」

一歩前に出てきた男をテンちゃんが体当たりで吹っ飛ばす

「何しやがる!!」集まってきた男達をクモちゃんが纏めて縛り ビーちゃんが空から攻撃してくる

ガシャーンとハイジが門を破壊し 邸内に入っていく 次に扉を「ハイジキーック」と叫びながら

壊し 全員で屋敷内に乱入する 室内には全身鎧で固めた大柄な男一人がいた

「あんたが テルミン伯爵?」ハイジが誰何すると

「だったら どうする?」鎧男がにやけた声で答える

「攫った妖精達を返しなさい!!」

パンチを繰り出しながらハイジが叫ぶ が ブヨンと音がしてパンチは跳ね返されてしまった

「あたしのハイジパンチが効かないなんて」呆然と鎧男を見やる

「ファハハハ この鎧はどんな物理攻撃も跳ね返すのだ 残念だったな」

「クモちゃん クラリスを連れて天井に逃げて」鎧男の攻撃を受けながらハイジが叫ぶ

クモちゃんは天井に糸を飛ばしクラリスを抱えて昇っいった

天井から見ているとハイジ ビーちゃん テンちゃんが攻撃するが全て跳ね返され 逆に鎧男の攻撃を

受けてボロボロになって床に転がった

クラリスはオロオロしながら天井から それを見ていた

「そうだわ 火の妖精さん あの鎧男を焼いて」クラリスが火の妖精にお願いする

鎧男は火に包まれる 暫くすると「熱い!!」と言って鎧を脱ぎ始めた 

魔法がかかっているとはいえ 鉄を熱すれば中の生身の人間には堪らないだろうと考えてやったが上手くいったようだ

「クラリス ありがとう 食らえ!!ハイジパーンチ」鎧を脱いだテルミン伯爵の顔面に拳を叩き込む

鼻が潰れ 前歯も何本か折れた伯爵の顔を踏みつけながら「妖精達は何処?それと売り払った場所を言いなさい」

ここぞとばかりに攻撃を再開したビーちゃんとテンちゃんによって 頭はハイジに固定されながら身体を二匹から攻められ 足や腕が変な方向に向いていく

「わがった じぇんぶ ばなずから やめてぐりゅ」鼻が潰れ歯が何本か無くなっているので上手く話せないみたいだ


クモちゃんと一緒に下に降りて妖精さんに皆の回復をお願いする

「クラリス!!凄いね 妖精さん達とお話が出来るんだ」

「え?ハイジは出来ないの」

「まだ 上手くコミュニケーションが取れないのよ」

取り合えず地下に隠されてた妖精さん達を開放して 売り先の帳簿を持ち出す

「あんたみたいのは 他にはいないの?」ハイジが聞くと首を横に振って答える伯爵

「王都にも居たが この前の破壊でどこかに逃げたらしい」

帳簿を見ると隣街にも何人か売られているみたいだ

この街の妖精さん達は全て開放出来てるようなので 

隣町に向かう 

帳簿を頼りに次々と家を破壊して妖精達を開放していく 最後の屋敷に来て ドアを開けると

ベッドに伏した少年とっその傍らには扉の開いてる籠があった

「妖精さん助けにきたわよ!」ハイジが叫ぶと「ほら ミリム 仲間が来てくれたよ」

枕元に座り少年を覗き込む妖精さんに掠れた声を掛ける

ミリムと飛ばれた妖精さんはクラリスの所に飛んできて 何か話し込んでいる

「ハイジ この子は ここに残るそうよ そこの少年はあまり長くなくて 最後まで一緒に居てあげたいんだって

それに自分が動けないから閉じ込められて可哀そうと言って籠の扉も開けっ放しらしいわ ここの人達も彼女に凄く良くしてくれるんだって」

クラリスが悲しそうな目で少年を見る

「妖精さんに頼んでどうにか出来ないの?」

「この病気は 妖精さんでも無理みたい」クラリスが再度悲しみをたたえた目で少年を見る

「分かったわ 心置きが無くなったら帰ってらっしゃい」ハイジが優しくミリムに言う

そして二人と三匹は旅立った




ーと言う訳で妖精王国に着いたわよ

「よく帰ってきました ハイジ クラリス 沢山の同胞を救ってくれてありがとう」

「もったいない お言葉です」二人は跪いたまま首を振る

「二人にもう一つお願いがあるの」

「「何なりと申しつけ下さい」」

「これを ある国に届けて欲しいの」 女王は苗木を持って二人を見る

「それは 世界樹の木ではありませんか!!」クラリスは驚いて声を上げる

「清廉な魔力を持つ国が最近出来たのよ そこに植えて欲しいの この役目を終えたら二人はここに住むなり

生まれた場所に行くなり 好きにしていいわ」

「それは」クラリスが俯く

取替え子は今も忌み嫌われており クラリスは育ての親に告白したところ 村人総出で追い出されたそうだ

「女王様 私と取り換えられた子はどうなったんでしょうか?」クラリスが思い詰めた様子で尋ねると

「もう 元の親元に返しましたよ」

「そうなんですね」クラリスがはホッとしたような 寂しそうな顔で答えた

「では あたし達はどこの国に行けばいいんですか?」ハイジが問う

「最近 建国されたラリウス聖王国ですよ」

ハイジに苗木を手渡すと女王は(これで あの方に御恩をかえせるわ)心の中で思った




次の日「クラリスは どうするの?」準備をしながらハイジが聞くと

「元の村にも帰れないし ハイジ達と一緒にいくわ」

「じゃあ 皆 出発するわよ」

ハイジの一声でラリウス聖王国を目指す

道中何事も無く 無事ラリウス聖王国に辿り着いた


「あたしはハイジ 妖精王国からの使者よ クロノス王に会いたいんだけど?」恐れを知らないハイジが門番に

言う

「ちょっと 待ってて下さい」面会希望者は結界内に入れるなら誰でも通すように言われている門番が

 遠くに離れた者同士でも話せるアイテムをクロノスが作って持たせていたのでクロノスに連絡を入れる

「少し お待ち下さい」二人を番小屋に招き入れ お茶をだしてくれた 三匹の虫達は小屋の外で待機している

いろんな街を周ったけど こんな丁寧な門番は初めてだ 余程クロノス王というのは 怖いのかな?と二人共考える

お茶を飲んでると急に目の前が光り 妖精女王と遜色の無い美形の人が現れた

「やあ 初めまして 俺がクロノスだよ どんなご用ですか?」 

「あ あたしはハイジ こっちの子はクラリスと言います 宜しくお願い致します」

ハイジはいきなり現れた美しい男性に慌てて挨拶する クラリスも横でお辞儀をする

「それで 妖精女王のお話って何かな?」

優しく聞くと

「こ これを!!」世界樹の苗木を差し出しながら 女王からの伝言を伝える

「分かったよ 苗木はありがたく預からせてもらうよ」クロノスは苗木を受け取る

「せっかくだから これから植えるけど一緒に来るかい?」

「「是非 お願いします」」

クロノス達三人とビーちゃん達三匹でクロノスの屋敷と教会の間にある広場に来て 世界樹を植える

世界樹を植え終わるとマリアートがフヨフヨと教会から出て来て

「こりゃ また珍しいものを!!」

10分もすると木はめきめきと大きくなっていき アッと言う間に大木になった

その周りをビーちゃんとテンちゃんが嬉しそうに飛び回っている

どこからか 妖精達もやって来て 木の枝に止まっている


「妖精達を捉えている籠や 攫うときに使う網には妖精の魔法だけを無効にする魔術が使われている

 それを 今から大陸の全部にあるものに対して無効化する」

クロノスが言うと彼の体から莫大な魔力が放たれ大陸全土に広がっていった


「「ありがとうございます クロノス王」」

そう言って二人は涙を流した









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