第14話ヴァンパイア③


朝 三人娘に稽古をつけた後 朝食をとりに食堂へいく

既にマリアートが座っており両手にナイフとフォークを持って待ち構えている

四人で「おはよう」と挨拶したところで朝食が出てくる

「国も落ち着いてきた事だし 爺ちゃんとの約束を果たそうと思う」

皆を見ながら 俺は言った

「約束って 何ですか?」シャルロットが尋ねる

「爺ちゃんが昔 愛してた女性に言伝を頼まれてたんだ」



今やシャルロット リリエル マオはひとかどの冒険者として活躍している

シャルロットは魔法剣士 リリエルは回復術師 マオは双剣使いの斥候として名も売れ始めている

そして 何故か孤児院ではなく 俺の家に住んでいる まあ別にいいのだが せめて 一人で寝せて欲しい

「と言う事で 四人で冒険に出るぞ」

「「「えっ!?」」」

三人の実力を確かめておきたいし いい機会かと思って提案してみる

「キャーお兄ちゃんと冒険!!」

「にいにと冒険!!」

「兄貴と一緒に冒険か!!」

三人共嬉しそうである

朝食後 四人で国の視察に出る 俺らを見た女性が「あ!国王様だ それと三聖女様よ」

国内では 三人は三聖女と呼ばれている 俺の家に住み 寵愛を受けてるかららしい

相変わらず両腕にシャルロットとリリエル 腹の上に香箱座りのマオが眠っているだけだ 

寵愛って添い寝のことかな


三日後に出発する事にして準備を進める

状態異常無効のネックレスを作り三人に渡す

「じゃあ 爺ちゃんの記憶にあったヴァンパイア村の手前の村落に先ずは行くか みんな掴ってくれ」

テレポートすると目の前には 爺ちゃんの記憶より廃れていた集落があった 

マオに様子を見てくるように言って 三人で木陰に隠れる

暫くしてマオが戻って来た

「兄貴 様子がおかしいよ 人はいるんだけど何か変な感じなんだ生活している痕跡が無いというか 畑も荒れ放題だし」

「そうか 何かあったかな?」

取り合えず腹を満たすために四人で燻製肉を食べ様子を見る事にした

夜中過ぎに数匹の蝙蝠が飛んできて 村人に群がり始めた 血を吸われている村人は目は虚でされるがままだ

蝙蝠は血を吸うだけ吸うと 人型にもならず そのまま 飛び去って行った


気配遮断と飛行の魔法を使い後を付けて行くと集落に蝙蝠達が降りて人型になった

俺も側の木の上に降り様子を窺う

「また お前達は勝手に血を吸いに行ったのか」

辺りの家よりも大きい家から一人の男が飛び出してきた

「いつまで俺らの長を気取ってるんだ 新しい長は俺だ 俺が許可を出せば何も問題は無い」

「貴様ー!!」煽るように言ってきた男を殴ろうとするが 足がもつれて転んでしまった

「ッワハハハ」

「人ごときと友誼を結ぼうとするから そんな体たらくなんだよ」

たぶん 殴りかかったのが 爺ちゃんの記憶にもあったカルロスだろう

その時 木の下からざわざわと人の足音と話し声が聞こえてきた

「おい! あそこが奴が言ってた集落じゃねえか?」みると筋肉質の坊主頭が隣の目つきの悪い男に話しかけていた

「へい お頭 たぶん あそこじゃねえですか?」言うと 周りの男供が嬌声を上げる

たぶん 野盗だな 対人戦の訓練になるなと考え 三人を連れにテレポートし 四人で戻ってくると

野盗たちが「おら 宝は何処だ?」と叫びながらヴァンパイア達を襲っていた

「三人共 あの野盗共を無力化してこい ヴァンパイアは相手にしなくていい」

「「「はい!!」」」

シャルロットは脇腹に拳で一撃入れ一人倒す リリエルは杖で頭を殴り昏倒させ マオに鳩尾に蹴りを入れられた奴は悶えながら気絶した

残り二人も抵抗する間も無く倒された なかなかやるじゃないかと感心する


「大丈夫か?」

倒れていたカルロスに声をかける

「あ あんたは?」

「俺はトワの縁者だ」

「トワですって!!」

カルロスが出てきた家からトワの記憶でみたセルーラだった 彼女は俺に走り寄り

「トワがいるの? どこどこ?」と大声で叫ぶ

「トワは死んだよ」俺の言葉に彼女は崩れ落ちた

「そうよね 彼は普通の人間だったもの 私みたいに不死ではないもんね 取り乱してごめんなさい」

「ちょうど良かった トワからあなたに渡すように頼まれたものがあるんだ」

「想いの石」という映像と音声を記録したアイテムをセルーラに渡す

「ありがとう」そう言うと 家に走って行った


「さて カルロス どういう状況なんだ? 協力していた村人達は魅了にかかっているな」

「我慢出来なくなった者達が魅了をかけて 操っているんだ 今この村は人と協力派と人の眷属派とで別れており 長も二人いる状況なんだ」


「そうなのか それは俺が何かを言える事じゃないな お前達で解決してもらうしかない」


「それはそうと あいつらが言ってたお宝って何だ?」

縛り上げられた野盗を見ながらカルロスに聞く

「いや 私も何の事か分からない」

野盗のお頭を蹴り上げて「なんの用でここに来た?」尋問していると目つきの悪い男が

「街で薬を高額で売っていた男を脅して聞き出したんだ」まさか こんな小さい女の子に全員倒されるとは思わなかったのだろう 折れた足を見ながら観念したように話した


「暫くは こいつらの血を吸わせてやればいいんじゃないか? 下手すると本当に討伐隊

を送られるぞ」

「そうだな どうだ?」

眷属派のヴァンパイアに言うと

「そうだな 我らは不死ではあるが聖水や聖剣をもった討伐隊に来られたら消滅するからな」

一時的に休戦にはなったようだ



三人娘の所に行き 戦いを褒めてやるとニコニコしてガッツポーズをしている

其々の改善点なんかを説明しているとセルーラさんがきて

「あの人も私を愛してくれていたんですね 片思いとばかり思っていたんですが 良かったです

嬉しさがこみ上げてきます クロノス様 あの方には沢山の子供がいたんですね」

「そうですね 殆ど俺の国にいますよ この村も安全とは言えなくなった事ですし 

俺の国にきませんか? それと俺の事はクロノスと呼んで下さい」

「分かりました ただ もう一人連れて行きたいのですが 構いませんか?」

「構いませんよ」

セルーラさんは家に向かって「トワ こっちにおいで」と大声で呼んだ

家の中から10歳ぐらいの子供が出てきた

「私たちヴァンパイアの女性は血を吸った人の精気と魔力を自分の精気と魔力に混ぜ合わせることによって

子を成す事が出来るのです 20年前にそれを知り 10年かけて生まれたのがトワです」

トワ君にはどことなく爺ちゃんの面影がある

「この子も一緒に連れていって下さいませんでしょうか?トワの一番末っ子として お願い致します」



夜の内に国に戻りマリアートに二人を紹介する 曰く爺ちゃんの魔力と精神がトワにはあるらしい

他の者には 後日紹介する事にして「二人共疲れれたでしょう 良かったら俺の血を吸いませんか

亡くなる前に魔力をもらっているんで 爺ちゃんの味もすると思いますよ」

「いいのですか?」

「いいですよ これも爺ちゃんとの約束ですからね」

「じゃあ トワ頂きなさい」

「うん」頷いて おれの首に口をつけた ちょっとチクりとしたが異常は無い

「美味しい」トワが嬉しそうに言う

「トワ どうしても血が飲みたくなったら お兄ちゃんに言うんだぞ 決して他の人の血を吸ってはダメだよ約束出来るかい?」

「うん 約束する」

「それでは セルーラさんも どうぞ」

「それでは 失礼します」

口をつけて吸い始めるとポロポロと涙を流し始めた

口を離し「あの方はずるいわ 想いの石で自分がどれほど私を愛していたか伝えてきたのに私がどんなに愛しているか伝える前に逝ってしまわれるなんて」

嗚咽まじりに言った


家に地下室を作るまでの部屋に案内し セルーラさんには爺ちゃんの日記を渡す

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