第13話ヴァンパイア②
半年程して ヴァンパイアの村近くまでたどり着いた
ヴァンパイアの村に着く前の集落で情報を得ようと集落に入ると集落の粗末な門に篝火が焚かれ
数人の人が群がっていた その中の一人にヴァンパイアの村の話を聞くと 今日は
月に一度のヴァンパイアに血を分ける日らしい この集落とヴァンパイアは協力関係にあり 集落からは食料をヴァンパイアからは貴重な薬品を交換しているそうだ
薬品は街で高値で売れるため 食料だけでは釣り合いが取れないから そのお礼として血を吸わせているらしい 鑑定してみたが魅了も眷属化もしていない 本当に平和的に共存しているのだろう
そうしているうちに 数話の蝙蝠が飛んできた
私を警戒しているのか上空を旋回している しびれを切らしたのか一匹が男の首にとまった
それが合図のように残りの蝙蝠も他の人々の首元に降りて来た
数分間血を吸った後 最初に降りて来た蝙蝠が人型になった
「この娘は 遠い場所で暮らしていたヴァンパイアなんだが 理由あってそこを出て来たんだ 良かったら 君達の村に受け入れてくれないだろうか?」
人型になったヴァンパイアに訪ねると
「ああ 今 薬草の収穫時期で人手が足りないから 構わないよ」
「そうか 良かった」セルーラを見るとホッとした顔をして 頷いた
「私はトワ 冒険者だ 彼女はセルーラ 彼女に護衛の依頼を受けてここまで連れて来たんだ」
「俺は村の長をしているカルロスだ 彼女の事は任せてくれ」
私と握手をして 次にセルーラと握手をする
「では これで私の仕事は終わりだな元気でな」
セルーラに言うと彼女はモジモジしながら 何か言いたそうにしていたがカルロスに急かされ
蝙蝠になって一緒に飛び去っていった
胸の中に一抹の不安と寂しさを覚え 自分にそんな感情がある事に少し驚いた
私は何処で生まれどうやって育ったのかさえ知らない 覚えているのは目を覚ましたら打ち捨てられた
神殿のような床で寝ていて 周りには何も無く 唯一人だけでそこにいた
腹が減って 食べ物を探そうと神殿の外に出た時 巨大な熊が襲ってきた 為す術もなく熊を見ていると
頭の中で様々な記号や数字が浮かんできて 「ファイアボール」と口にしていた
すると 目の前に30センチぐらいの熱い火の玉が浮かび上がり 熊に向かって飛んでいき それで熊は息絶えた
(何だ 今のは)思わず自分の手を見る
森の中で木の実を採取し空腹を誤魔化し 当ても無く歩いていると森を抜け街道らしきところに出た
街道に沿って歩き続け街に着いた 街で暮らすのには金がいる そこで冒険者というものになり
記憶は無いが自分の事が少しずつ分かってきた 名は何となく頭に浮かんだトワにした 仲間達に常識を教わり 魔法を磨いた
おかげで賢者となり 魔物討伐や戦争に駆り出され続けた
報酬として 王都の南門の外壁の土地を下賜され 古い教会と荒れた大地しかない場所だったが 教会の横に家を建て静かに
暮らすつもりだった ある冬の日 家から出て外の空気を吸っている時 ふとセルーラの事を思い出し 空を見上げると
赤ん坊が光に包まれて降ってきた 優しく抱き留め 赤子を見るとキャッキャッと笑っている 外街の乳飲み子のいる女性に頼んで母乳を分けてもらい
赤子の世話と魔法の研究で忙しい毎日が始まった
何故か私が孤児院を始めたとの噂が広がり 戦災孤児を預けにくる者もいた
空から降って来た赤子は 私が唯一使えなかった魔法 時魔法から名を取ってクロノスと名付けた
ある時クロノスが私の結界を破って研究室に入ってきた
この子には何か特別なモノを感じ私の知識の全てを教え込んだ
当時は孤児が50人ぐらいいて15歳になると自主的に孤児院を卒業していった
出て行っても食べていけるように教育はしていたが 流石に一人では限界があり 家庭教師を雇う事にした
やってきてくれたのはメリルさんという女性でメイドをしていた貴族が戦争で亡くなり家自体が潰れたそうだ
午前中に読み書き 計算 礼儀を教えてもらう事になった
人数も増えたので 私の蓄えだけでは心もとなくなり 荒地を開墾する事にした
元が墓地だったと聞いたので 一応淨霊の魔法をかけたら 一体だけ淨霊を拒否して 家(孤児院)の管理をしてくれるように
なった
メリルさんは素質があると言ってマリアを特に熱心に教えてくれた
数年後メリルさんが事故で亡くなると その後はマリアが教師役になってくれた
走馬灯のように過去を思い出しながら 手を握って泣いているクロノスに声をかける
「……」 クロノスは力強くうなずきながら声を出して泣き出した
その泣き声を聞いたのか ドアの外にいた孤児達がなだれ込んでくる
皆の顔を見ながら私は幸せだったのだろうと思う 私に感情を愛を教えてくれたセルーラに想いを馳せ 私は眠りについた
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