『最初で最後の告白』(「大人のビターな恋物語」参加作品)

**作成に関してのお願い**

〇一人称:俺→僕など男性代名詞であれば変更OKです

〇二人称:君→お前、あんた、など男性が女性を呼ぶ代名詞であれば変更OKです

〇語調:口語調のため、意味の変わらない言い換えは問題ありません。

    話しやすい語調でお願いします。


〇SE, BGM:素材サイトおよび投稿先サービスの規約に則っていれば問題ありません。


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 これを聞いているという事は、結婚するんだね。おめでとう。直接祝う事はできないのでこんな形で伝えること、許して下さい。


 今から話すことは、ずっと伝えないでおこうと思った事、なんだけど。今日で会うのも最後にするつもりだった君から恋人として会えないのか、と言われてしまったから、言わせてしまったから…俺も、君に聞いてもらいたいって思ったんだ。暗い話になっちゃうけど、ちょっと、付き合って。


 単刀直入に言うと、俺、余命宣告ってやつを受けてるんだ。新年は、迎えられないだろうって言われてる。なんか、難しい病気なんだってさ。病名もややこしくて今でも正しく覚えてないくらいにね(苦笑)。子供の頃に一度発症して、一応は治ったんだけど、再発したときには、命を懸けることになるだろうって言われてたらしいよ。子供の頃の事だから、俺は最近まで知らなかったけど。

 だから、大切な人は、親以外には作らないようにしてた。-覚えてるだろ?恋人は作らない、って言ったの。

 当然、君とも仲の良い同僚でいるつもりだった。だけど、君は女の友情が好きじゃないと言うから、つい、男女の友情が成り立つのならと、俺は、君と友達になった。

 正直言うと、この頃から俺は君の事は女性として素敵な人だと思ってた。-もう少し髪を伸ばして、明るい色に染めて…だとか、この雑誌の服は似合うんじゃないか、なんて、男の俺が誰にだっていうわけじゃないよ。本当なら、仕事も趣味も充実して恋愛して、素敵な女性になっていく時期の20代を俺だけに使ってくれるんだからちょっとでも魅力的になってほしくて。綺麗になっていく君を見たくて-それを俺がさせているんだっていう優越感も…正直ちょっとあってさ。


 そうそう。内緒にしてたことがあるんだ。君さ、会社では結構人気あるんだよ。君の情報を聞き出そうとするやつが「お前たち仲いいじゃんー」とかって寄ってきたもんだよ。ま、軽くいってくるような奴らはそれとなくあしらっておいたけどね。今は自分が一番でいたかったし、真剣に気持ちを寄せてるんだなってわかる男に、君は愛されてほしいと思ってたからさ。



 病気が再発したって言われたのは、夏の定期健診で再検査を必要とされたからなんだ。さっきも言ったけど、子供の時に発症したから、どういう症状なら病気なのかとか、自分ではよくわかってなかったんだよ。

 再発が確認された精密検査で、もう症状は進んでて進行を抑えることはできても治療をすることは難しいって言われた。あぁ、こんなに急に命の期限って切られるんだって、どこかで傍観してる自分がいて。死にたくないとか、そんなことを考えなかったのは奇跡だと思うよ。

 君ともう会えなくなるのだけが辛くて。でも病気のせいで離れるのだとは悟られたくなくて退職は一身上の都合としてもらった。そのまま、別れを受け入れてほしかった。


 思い通りにいかない人生ってのはこんなところにもあるんだな。こんな風に君の気持ちが友情じゃなくて恋慕の情で自分に向いてると知ることになるなんて。 でも、俺はもう一緒にいることはできないから、つい、突き放すような言い方になった事、許してほしい。本当にごめん。あの時の表情、傷つけたなって、俺も心が痛んだ。 だって、俺も好きだったんだから。君の事が、好きだったんだから。


 そうさ。俺もずっと、君が好きだった。何も気にせず頷いて手を取って、恋人に、なりたかった。



 でも俺にはそれはできないから、君が俺への気持ちを捨てて、違う人に気持ちが向けられるように、って祈りながらひどい言い方をした。



言ったろ?君のこと好きな男が社内に何人かいたんだって。その中でさ、いい人だし、仕事もできるし、すごくまっすぐに君に好意を持ってるんだなって人がいてさ。

 このメッセージは、その人に預けようと思ってる。何年後になるかわからないけど、俺はきっと、恋人か、婚約者になったその人から、これを受け取って聞いているじゃないかなって思ってる。どう?当たった?当たってたらかなり嬉しい。あの人と、君が家族になるといいなって思ってた俺の希望が叶ったんだから。


 

 長くなってゴメン。


 最後にもう一回だけ言わせて。

 俺は、君の事が大好きでした。だから君は、君の事を誰よりも愛してくれる人と、誰よりも幸せになって下さい。

 

 今まで、有難う。君に会えて、君を好きになって、君に好きになってもらえて、俺は本当に幸せだったよ。



-FIN-

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