ぶつかり合う力 part3
破壊的な威力の爆炎を剣に纏わせながら、フローラは背から淀んだ虹色の光輪を発生させる。
フワりと、不自然な挙動で宙へと浮かんでいくフローラ。そのまま、灼熱を滾らせた片刃の剣を叩きつける。
恐るべき破壊力が爆裂して、周囲のモニュメントを鉄クズに変え、噴水の水が一気に干上がりながら瓦礫になっていく。
「一方的すぎるな……」
剣にも同様に淀んだ虹色の光が蛇のように纏わりついている。
同じ勇者の称号を持っていてもこうまで違うものか、とフローラは思う。
戦って、戦って、戦って。
そして得た、今の立場に対して、向こうはただそこにいるだけ。たったそれだけで『勇者』として何不自由ない暮らしをしている。
「(勝手な八つ当たりなのは理解しているがな……)」
「チッ……空を飛べるってのは、ちょっとズルじゃない?」
虹色の破壊の中でも、傷を負うことなく立ってみせるもう一人の勇者。
やはり気に入らない。
「キミだって勇者なんだろ? もう少しできると思ったよ」
必要以上に冷たく、そして嫉妬を込めた言葉を放つフローラ。
彼女を見ていると、妙に胸がザワつく。どうしても、身勝手な負の情念を抱かずにはいられなかった。
「そうね。あーしも、もう少し喰い下がれると思ってたんだけどね……」
すでに圧倒的に有利。
ほんの数刻で、デアマンテ王国には大量の帝国軍が侵攻している。
魔道軍後方支援部隊による、大規模転移魔法。
首都クアージャの主要な施設へと直接攻撃を仕掛ける電撃戦。
フローラも自身の役目である勇者の足止めを問題なく実行できている。
だというのに、
「でも、アンタの勝手にいつまでもさせるわけにはいかないのよねッ!!」
虹色の爆光を、必要以上に広範囲の火焔で焼き尽くしながら
勢い余って距離を取り過ぎてしまったが、それも無視して手から噴射し続けている碧焔を、まるで剣のように振り回しながらフローラへと叩きつける。
だが、それはブラフ。
大ぶりな一撃など、宙を舞う者にあたるはずはない。
あっさりと躱されたそれを、
巨大な烈火球となった火焔は超高速で身を翻したフローラ目掛けて飛んでいく。
「直線的な力など!!」
虹色の爆炎が火球を一息に裂き、その勢いのまま斬撃を飛ばす。
激しい爆発がフローラの長いプラチナブロンドの髪を揺らす。
「それもッ!!」
爆熱の斬撃を躱しながら、左手をかざす
斬り裂かれ、爆発したはずの火球がフローラの周囲に再び浮かんでいる。それも、いくつも無数に分裂して。
「これは……ワタシの爆炎の力まで!?」
斬り裂かれるまでが一連の流れだった。
どうしても二次元的な攻撃にならざるを得ない
相手の行動をも利用した、全方位攻撃。
フローラの周囲を漂う無数の火球。それは、
そして、その火球から放たれる幾重にも枝分かれする超高熱線。
いくら直線的だろうと、三六〇度全方位から放たれれば流石に回避はできない。
宙に浮いているのも仇になった。おかげで下方向からも無数に熱線が突き進んでくる。
「クソッ……!!」
「勇者がやるには、ちょっとセコい攻撃かもだけどね……!」
だが、流石は勇者。
四方八方から迫る灼熱のレーザー。それを紙一重で躱していく。
それでも、空間を圧し潰すほどにも思えるレーザーの群れを捌ききれるものではない。
次第に体が追い付かなくなり、ついにはレーザーが命中する。
着弾と同時に爆発を引き起こすレーザー。最初の一発をもらえば、その後に続く爆発が次々と連鎖していく。
こうなってはもはや飛ぶどころではない。
凄まじい爆光が辺りを凄惨に照らし出す。
「うーわ……自分でやっといてなんだけど、エグぅ……」
まるで溶鉱炉が宙に浮いているかのような、異質な光景に思わず引いてしまう
炎の力を支配する、驚異の魔法。だが、その威力は制御しきれていなかった。
「ここまでやっといてなんだけど、死んでないわよね……?」
戦争をやっているのだし、デアマンテ王国の者たちも言っていたので仮に死んでいても罪にはならないだろう。
とはいえ、やはり気分がいい物では決してない。
そんな
「くッ、やってくれる……!」
障壁を展開して、なんとか防ぎ切ったフローラが苦々し気に漏らしながら
完全に防ぐことはできなかったのか、体中に傷を負ってボロボロの状態だった。
それでも、手にした剣からは光が失われることはなかった。
さらに、小さくつぶやくと体中の傷も徐々に癒え始めている。
「げッ!? 回復魔法ってコト? なんでもアリじゃん……」
自分も似たようなもののくせに、それを棚に上げてグチり始める
だが、せっかく回復したというのにフローラが追撃を仕掛けてくることはなかった。
「む……時間切れか……」
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