第27話 ビバ妹共同生活ライフ
「んあぁ〜! 馬車は体が凝りますね。それにしても王都なんて久しぶりですわ」
「それじゃ、またいつか会おう」
「ちょ! なんで一人で行こうとしてんですか! 俺も行きますよ!!」
「……なんで?」
「なんでって、俺が第三位の部下だからじゃないすか?」
「はぁ……監視ね」
「まぁそう堅い表現はやめましょうや。とはいっても、やっぱり妹さんとの再会を邪魔するのも悪いんで、俺は支部の方にでも顔を出しますわ」
「さっさと行けよ」
「なんか冷たい!! 五年も一緒に仕事したよね!?」
キュウカからの手紙を読んだ俺は、速攻帰り支度を済ませて帰路に着いた。といっても持ってきた荷物もないので、風呂に入って色々整えただけだが。
五年ぶりの王都か……あまり思い入れはないが久しぶりな気もする。
というか俺はもう十八歳か。元の世界であれば立派な成人だな。響学校でいえば高響四年じゃないか。
そもそも響学校に俺の籍はあるのか? 戻れたとして妹達と学校生活を共に出来るのは一年しかない。くそ……こうなる気がしたから正体は明かしたくなかったが……
いや、今後妹達を守るために正体を明かすことは必要だったことだ。ここは面倒事を片付けられたとポジティブに考えよう。
響学校についてはクラリネットあたりがなんとかしてくれているだろう。もし籍が無くなってたら楽聖の権限でも威光でもなんでも使って戻ってやる。
そんなことを考えて王都の街を歩いていると、どうやら学校の前についたようだ。街並みの景色なんかは全く記憶に残ってない。やっぱり思い入れはないらしい。
だが、この響学校の校門前には少し思い入れがある。
五年前、久しぶりに妹達に再会したのもこの門を超えた先にある広場だったな。あの時は妹達の状況を何も知らずに浮かれていて、無視されてめっちゃへこんだ記憶がある。何故か懐かしい気持ちになるということは、やはり五年もの月日が経っているからだろうか。
今は昼過ぎだから生徒達も出歩いていない。授業中だろうな。とにかく……妹達の姿を一目でもいいからこの眼に入れたい。焼き付けたい。もはや彫りたい。
少し昔の思い出を踏みしめながら校門をくぐり、昇降口前の広場へ向かう。
そこで俺は……想像していなかった至高の存在を見つけてしまった。
「あ、きた! お〜いルド〜!」
大きく手を振るたびに揺れるスイカのような……ゲフンゲフン。髪が伸びたことにより幼さが少し抜けて女性の美しさを手に入れた女神、ハーピ。
「兄上!! お勤めご苦労様です」
妹達の中で身長が一番高くスラリとしたスタイルだが、女性として出るとこはしっかり主張しだした女神、イクス。
「ほんとうにおっそい!! いつまで待たせる気だったわけ!?」
イクスとは対照的に身長も低く主張も少ないが、それが至高と思わせるほどの存在感を放つ女神、ジーコ。
「まぁまぁ、こうやってまた会えたんだからいいんじゃない? ね、兄さん」
スカートから覗かせるスパッツは正義。イクスの次に鍛えられた肉体が生み出す超絶スタイルで最高の笑顔を見せてくれる女神、サンキ。
「つっても、何かお仕置きが必要じゃねぇか? なぁ兄貴?」
そんなに丈を短くしたら!! と思わせるほど短いスカートから健康的な美脚を魅せつけ、シャツのボタンも胸元が見えるほど解放している目のやり場に困ってしまう女神、ウド。
「そんなことは後で話せばいいのですわ」
「まずは無事に帰ってこれたことを喜びましょう。兄様、おかえりなさい」
上品さにさらに磨きがかかり、お姫様の言われても誰も疑わない、むしろのお姫様よりお姫様の女神、ロッカとチセ。
「兄様……おかえりなさい……!」
世界の癒しを全て詰め込んだと思わせるほど、存在が癒しである女神、シロ。
「兄さん、おかえりなさい」
妖艶さが増して世のオスの全てを魅了してしまうだろう美しさを持つ女神、キュウカ。
心が奪われ、もはや天を超えて無限の彼方に飛んでいきそうな感覚に襲われるが、兄としてここで無様な姿を晒すわけにはいかない。
今は授業中じゃないか? とか、どうしてここに? とか気になる点はあるがそんなことはどうでもいい。
今はただ、妹達に会えた。それだけでいいのだ。
「みんな、ただいま」
「さ、早く行くわよ」
ジーコが俺の元に駆け寄り、手を取ってくれる。あぁ、まずい飛びそう。
「え? どこに?」
「そっか、兄貴には秘密にしてたな」
「びっくりしないでよ?」
ウドとサンキは俺の反応を想像しているのか半分ニヤけている。
俺の手を握ってくれているジーコと妹達はそのまま校舎ではなく、俺が今歩いてきた校門の方へと歩き出した。もちろん抵抗することなく俺は着いていく。
「隠すようなことじゃないでしょ? 兄さん、その……ごめんなさい。振り込んでくれていたお金、勝手に使っちゃいました」
お金というのは、俺がアルファとして稼いで仕送りをしていたお金だろう。使ってくれるのは全然問題ない。というか逆に今まで使っていなかったのか。結構な額は入ってるはずだが……何に使ったんだろう。
「それは大丈夫だけど……これから向かう先と関係があるの?」
「はい。私達が暮らす家を買わせていただきました」
なるほどな。流石に年頃の女の子が一つの大部屋で暮らすのには限界がある。自分のプライベート空間も必要だろう。そういう意味ではいい買い物をしたんじゃないだろうか? だが、驚くようなことではないと思うが。
「これは兄様、理解していませんわね」
「私達ですわよ?」
ロッカ、チセ、理解も何もそのままの意味じゃないのか? 妹達が生活する聖域……そういうことか!? 神々の楽園!? 天上界!? 違うな。私達……私達? 私達、まさか——
「やっと気づいたみたいね。ほら着いたわよ!!」
ジーコがそう言って立ち止まったのは、響学校からそれほど離れていない場所にある、大きな屋敷の前だ。キュウカが購入したと言っていた家だろう。
「ここが、これから私達と兄さんが暮らす家です」
そうか。
はは。やってくれる。
ビバ妹共同生活ライフ一つ屋根の下ボーナスかよぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!
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