第17話 究極妹 シスハレナイン
『通達、第三種無響力警報発令は解除されました。速やかに警戒体制を解除してください。避難中の小響、中響生は付近の教員の指示により解散してください』
妹達が三体のミュートを倒した後、第三訓練場裏に追加で発生したミュートはいなかった。各方面での対処も完了したのだろう。
「みんな、お疲れ様」
「兄さんこそ、お疲れ様です」
妹達と労いの言葉をかけ合う。あぁ、なんて素晴らしい時間なんだ。
「兄上……先程の力は……」
「うん。みんなのポテンシャルの一端だよ。もっと訓練したらこんなものじゃないからね」
「まぁちょっと楽しかったから良いか。次はもっと良い曲でやろうぜ兄貴!」
「そうだね」
とはいえ歌法の訓練ばかりを強要する気はない。俺はみんなと歌ったりするだけで楽しいから、みんなにも、一緒に歌うことを好きになってほしいだけだ。
そのついでにミュートに対抗出来る力を備えさせてあげたいと思う。守れる時は全てをかけて俺が守ってあげたいけど、七年も会わなかった結果、妹達を深く酷く傷つけてしまった俺だ。絶対に守り切れる保証はない。
イクスは歌武姫を目指しているから積極的に教えたいとは思うけど、他のみんなは自分がやりたいことを第一優先にしてほしい。
「そういえば兄様は、
ロッカが訪ねてきた歌舞奏対抗戦とは、文字通り歌法、舞法、奏法を競う学校の行事だ。部門は
まず王都の響学校で競い合い、その中で優れた者が代表となる。最終的には各地の響学校全ての代表を集めて対抗戦を行い、響学生の序列を決めるのだ。
「う〜ん、俺はやめとこうかな。やっぱり知られるのはまずいし」
「兄様ならば……間違いなく……国内最高の奏法士になれると思いますが……」
シロの仰る通りではある。だが、そんなものに興味はない。俺は妹達の前だけで一番の兄であればそれでいい。もちろん、シロがどうしても最高の奏法士のお兄ちゃんが良いというなら、今から最高の奏法士とやらをぶっ飛ばしてこよう。
「みんなはどうするんだい?」
「私はもちろん、武部門に出場し、小響生の中で国内最強を目指します」
イクスは夢が歌武姫になることだからな。通過点に過ぎないだろう。
「あたしはパスかな。強いとか弱いとかあんまり興味ないのよねぇ」
ジーコは出場する気は無いらしい。才能はあるが可愛いものの方が好きだろうしな。
「私も舞法の武部門で出る予定だよ。まぁイクスほどやる気はないけどね。暇つぶし?」
サンキも武部門で出場するようだ。しかも舞法とはな。舞法は簡単にいえばダンスだ。体の動きで響力を操る術が舞法。ただ、サンキが舞法を習得していたとはな。知らなかった……兄、少しショック。
「私は……その……奏法の……響部門に……」
おぉ! シロは奏法で出場するのか! 奏法は扱える者が少なく競争率も低いがその分相手の練度は高い。だが、シロならば絶対に大丈夫だ。
「あたしもパス〜!」
ウドは出場しないのか。歌法の響部門に出たらウドに敵う人なんていないと思うけどな。ウドが歌いたい理由に関係しているのだろうか。もし悩んでいるならば背中を押してあげたい。
「私とチセは武部門の集団歌法に出る予定ですわ」
「胸が鳴りますわね!」
ロッカとチセは武部門の集団の方に出るようだ。ただ、集団の方は最低二人、最大十人まで参加可能で、殆どが十人での参加だったはずだ。まぁロッカとチセならば問題ない。あとチセ、鳴るのは腕だと思う。いや、胸でいっか。あってる。チセの胸は鳴る。
「ハーピはおやすみぃ〜」
ハーピはおやすみだよね。また俺膝枕してあげるね。
「私は……応援します。サポートは任せてください」
キュウカはまだ少し気を遣っているのだろうか。妹達の中では才能がないと思っているのか。キュウカらしいと言えばキュウカらしいが……後で話を聞いてみるか。
「それじゃ今度の訓練からは歌舞奏対抗戦も意識した内容も取り入れようか。それと、これは提案なんだけど」
これは本当に俺が個人的にやりたいことだ。妹達に強要する気は無い。ただ、見たい。どうしても見たいんだ。
「響部門の集団歌法に出てみないか」
「それって訓練の一環?」
「いや、そういうわけじゃないけど……その面も含まれてはいるね。ちょっと特殊なことをしてみないかい?」
「特殊? そう言うくらいだから面白いんだろうなぁ?」
ウド、とびっきりに面白いと思うよ。
「あぁ。歌法、舞法、奏法全てを使って響かせる、最高のやつだよ」
ウドはニヤリと笑い、ジーコも満更では無い顔をする。他の妹達も反応は悪くない。聞いたことがない概念に心を躍らせていることだろう。
よし、
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