第14話 妹になった幼馴染み

俺、浪川なみかわ達也たつやには妹がいる。

と言っても血の繋がりは無い。

一つ年下の幼馴染みの朝乃あさの

親父おやじの再婚で妹になったからだ。

元々仲が良く妹のようだった朝乃が

中学生の時に本当に妹になり一緒に

住むようになったが前から

お互いの部屋に入ってベッドで

漫画を読んでいたような関係だったので

たいして変わらない•••

と思っていたのだが朝乃が俺と同じ

高校に入学して少しした頃

2人で俺の部屋にいた時に

「ねぇ。

 たっちゃんはさ私の事どう思ってる?

 女の子として見てる?

 それともやっぱり妹的な感じ?」

「•••半々かな。

 成長して女として見てる部分も

 あるけど•••

 ずっと一緒にいるからな•••

 妹や幼馴染みとして見てる部分とで

 50%パー50%パーくらいかな•••

 彼氏が出来たとか言われたら

 凄い嫌だけど•••

 じゃあ告白ってなると、う~んって

 感じだな•••

 朝乃はどうよ?」

「私も兄妹きょうだいとして見てる

 部分もあるけど•••

 今は男として見てる部分が強いかも

 男性として60%パー兄として50%パー

 くらいかな?」

「100超えてるじゃねぇか(笑)」

「100超えちゃったから今こういう話

 してるんじゃない。

 今が半々なら、たっちゃんも

 そうなる可能性は有るんだよね?」

「まぁそうかな?

 本音を言えばよ、ベッドで

 寝転んでる朝乃を抱きたいって

 気持ちとそんな目で見ちゃいけないって

 気持ちで揺れてたんだよな•••」

「たっちゃんもそうだったんだね•••

 私も抱いて欲しい気持ちと

 このままの関係でいたいって

 気持ちで揺れてたんだけど

 いつまでもこのままじゃ

 いられないしね•••

 それにたっちゃんはモテるし•••」

「モテねぇよ。

 俺みたいなむさ苦しい男が

 モテる訳ねぇだろ。」

「たっちゃん気付いてないんだよ•••

 強面こわもてだけどカッコいいし

 体も鍛えてるからたくましいし

 優しいし•••

 •••今、男として70%パーになった。」

「120%パーかよ(笑)

 でも朝乃も可愛いし明るいし

 モテるだろ?」

「告白された事はあるけど

 全部断ったよ。

 やっぱりたっちゃんの顔が

 浮かぶから•••」

「そうか•••

 今、俺の中で朝乃の事が女として

 60%になったよ•••」

「私達、血は繋がってないけど

 やっぱり兄妹きょうだいだね。

 お互いチョロ過ぎるよ。」

「相手が朝乃だからだよ。

 朝乃は違うのか?」

「まぁ私もたっちゃんだからだけど

 •••ねぇじゃあキスから始めてみようよ。

 たっちゃんは私とキスするの嫌?」

「嫌な訳ねぇだろ•••

 ただちょっと抵抗はあるな•••」

「じゃあ、やめる?」

「いや、前に進もう。

 朝乃に恥かかせたくないしな。」

「フフッ。

 何それ。」

そんな会話をしながら俺達は

くちびるを重ねた。

「今、男として80%になった///」

「どこまで上がるんだよ

 エヴァ○ゲリオンみたいだな。」

「たっちゃんは?」

「まあ俺も女として70%になったかな?」

「たっちゃんもドンドン上がってる

 じゃない(笑)

 ちなみに私のファーストキスだよ。」

「そうか•••

 まぁ俺もだけど•••」

「今また女として意識したよね?」

「•••ああ女として80%パーになった。

 ただ俺の場合は妹として40%にも

 なってるな•••」

「それでも120%じゃない?

 嬉しい♡」

「まぁ•••

 そうだな•••」

「ウフフ♡」

そんな事を話ながら俺達の関係は

変わっていった。


お互いに男女として意識しだすと

関係が深まるのは早かった。

両親不在の日曜日

「初めては痛いって聞いてたけど•••

 痛いよりは痺れる感じ。

 ジンジンするっていうか•••

 血もそんなに出なかったし。」

「いや結構、血出てないか?

 ちょっと焦ったぞ。」

「大丈夫大丈夫。

 生理の時とかもっと血出てるし。」

「生々しい話だな•••」

そのまま2人でゴロゴロしながら

「でも嬉しいよたっちゃん。

 勇気を出して良かった。

 抱いてくれなかったらどうしようと

 思ってたよ。」

「朝乃が震えながら誘ってくれたのに

 断ったら男として失格だろ?

 親父おやじからいつも

 【女に恥かかすな!】って

 言われてるしな。」

「体が震えてたのは

 断られるのが恐かったんだよ•••

 やっぱり妹としてしか見られないとか

 言われたらショックだし•••」

「前みたいに【女】と【妹】の半々の

 時なら抱けなかったかもな•••

 今はまぁ、女として見てるし•••」

「嬉しい♡」

「それにしても朝乃、お前コン○ーム

 わざわざ買いに行ったのか?

 いやそもそも学生が買えるのか?」

「これお母さんから渡されたの

 そこはちゃんとしときなさいって。」

真昼まひるさん(義母)から•••

 じゃあ親父も知ってるのか?

 今朝出かける時に

 【しっかりやれよ】って肩を

 叩かれたのはそういう•••」

「お母さんから聞いてたのかもね。」

「まぁ親父はいつも

 【後悔のないように生きろ

  人間いつ死ぬか分からないぞ。】

 って言ってるからな•••」

「そうだね•••」

俺のおふくろは病気で

朝乃の親父さんは交通事故で

亡くなっている。

「大切にしたい気持ちも分かるが

 人間なんて明日生きてるかも

 分からんからな•••

 グズグズしている間に

 【他に好きな人が•••】とかなら

 まだいが、死んじまったら

 どうしようもないからな•••

 •••いや、別に他に好きな人が

 出来て良い訳じゃねぇぞ。」

「分かってるよ(笑)

 でもたっちゃんの言うとおりだよ。

 後悔のないようにたっちゃんに

 想いを伝えて良かった///」

「朝乃ありがとうな。

 あの時、言ってくれなかったら

 今も【女】と【妹】の間で

 揺れてただろうな•••

 情けなくてすまん•••」

「気にしないで、たっちゃん。

 私もお母さんから背中を

 押されたんだよ。

 【後悔しないように想いは

  伝えておきなさい。

  上手くいかなくても

  】って

 おじさん(親父)にもお母さんから

 想いを伝えたって。」

「そうか•••

 ただ親父達のそんな話は

 聞きたくなかったな•••」

「両想いになってからはおじさんは

 積極的だったらしいよ。

 今も足腰立たなくなる程

 抱かれてるって。」

「マジで勘弁してくれ•••

 親父のそんな話•••

 でも親父スゲーな•••」

そんな話をしながら日曜日は

過ぎていった。


しばらくすると学校で噂が

流れるようになった。

【浪川兄妹は男女の関係にある】

というものだった。

それは事実だが誰がこんな噂を?

朝乃と話をすると

「多分、私がフッたゴミ野(仮名)

 だと思う。

 こっち見てニヤニヤしてたし。」

「そうか•••

 まぁ別に事実だし公表しても

 問題無いな。」

「そうだね。

 兄妹だけど血は繋がってないしね。」


そして俺達はそれぞれ友達や

クラスメートに話す事にした。

周りの反応は

「幼馴染みで義妹で彼女?!

 どんな欲張りセットだよ!」

「純愛•••良いなぁ•••」

「あんな可愛い子と一つ屋根の下って

 お前、前世でどんだけ

 徳を積んだんだよ!」

「キー!悔しい!羨ましい!」

「あんなワイルド系イケメンが

 再婚でお兄さんになるなんて

 少女漫画みたい!」

「チクショウ!

 俺も完全体だったら!

 チクショウ!」

「キャー!素敵!」

「はぁ•••とうとい•••」

「そこに痺れる!憧れるぅ!」

「ブヒィーーー!」

何人かおかしいのがいるが

大半は好意的な反応だった。

噂が流れ始めた時も悪意より

向けられるのは熱い視線だったしな。


俺達が話題になるとゴミ野(仮名)が

悪意を持って噂を流していた事も

皆が知るところになり肩身が狭くなった

ゴミ野が逆恨みで掴み掛かってきたが

親父から柔道を習っている俺は

すぐに取り押さえて先生に突き出した。

周りの証言もあってゴミ野は

停学となった。


それからは穏やかに毎日が過ぎ

夏休みとなった。

2人でいつも行っていた夏祭りに

今年も浴衣ゆかたで出かける。

そしていつものように神社の境内けいだい

ベンチに座り話をする。

「毎年一緒に来てたけど

 私がたっちゃんのおんなになってからは

 初めてだね♡」

「いやそうだけど•••

 なんでそんな言い方•••?」

「男の人は【俺の女】とか【あなたの女】

 とか好きじゃないの?」

「好きな男もいるだろうけど

 全員じゃないと思うぞ。

 げんに俺は今ちょっと引いてる。」

「えー!

 友達は【絶対喜ぶよ!】って

 言ってたのに!」

そんな話をしているとガラの悪い

男達4人が金属バットを持って

近付いてきた。


【ここから先、暴力シーンがあります】


「あんたらが浪川兄妹だな?」

「そうですが、なにか?」

「ちょっと痛い目に合わせてくれって

 頼まれてな。」

「•••誰から?」

俺はゆっくり立ち上がると

後ろに朝乃を隠す。

「まぁそれは言えないが

 もう金も貰ってるからよ。

 女は手を出さずに連れて来いって

 言われてるからお前だけガッ!」

喋っている男のすね

思い切り【足払い】をかける。

【足払い】というよりは【足の裏で蹴る】

というのが正しい。

先頭のリーダー格の男が脛を押さえて

うずくまるより先に後ろの男のひざ

同じく下駄を履いたまま勢いと体重を乗せて

踏み抜く。

「アッ!」

という間抜けな声を出して倒れる。

ここで下駄を脱ぎ隣の男の頭を掴み

全力の【き】を鼻に向かって

お見舞いする。

盛大に鼻血を出しながら昏倒する男。

残る1人はここで初めてハッとして

金属バットを振り上げるが、遅い。

一気いっきに間合いを詰め【大外刈り】をはなつ。

顔を掴み後頭部を叩きつけるように

放った【大外刈り】をくらい男は

芋虫のようにウネウネと動く。

学校の部活動なんかでは絶対に

教えられない親父直伝の【喧嘩けんか柔道じゅうどう】だ。

死んだお袋に出会うまで暴れ回っていた

親父が修羅場で使っていた

【脛に足払い】や【膝への踏みつけ】

そして【頭突き】は実戦で使うのは

初めてだが効果は抜群だな。

立ち上がったリーダー格の男が

ヒョコヒョコと動く。

脛は折れてるかもしれないな。

「柔道じゃねぇのかよ•••」

「実戦柔道ってやつだな。」

「ふざけんじゃねぇ!」

持っていたバットを振り下ろすが

そんな状態でしっかり振れる訳もなく

軽くかわすとリーダー格を

かつげる。

親父がいつも言っている事の一つに

【綺麗にげようと思うな】

というものがある。

【スポーツ柔道の試合じゃないんだ。

 実戦では投げ方が汚ければ汚いほど

 受け身が取りにくい。

 受け身を取らせない投げ方が

 実戦では必要だ。】

といつも指導されている。

この【肩車】という技も試合では

背中から落とすのだろうが、これは実戦だ。

頭から、正確には顔から地面に落とす。

リーダー格の男はピクリとも

動かなくなった。

「朝乃こっちは片付いたぞ。」

「こっちもお巡りさんすぐ来るって。

 丁度お祭りのパトロールに

 来てたみたい。」

スマホを手に朝乃が応える。


そこからは警察が来て大騒ぎとなった。

このバカ共は案の定ゴミ野(仮名)の指示で

俺達を襲ってきたそうだ。

当然正当防衛になったが

コイツらはこのまつりで俺達を

探す前にカップルや中学生から

カツアゲもしていたそうで複数の罪で

塀の向こうに消える事となった。

ゴミ野も犯罪はんざい教唆きょうさで捕まった。

少年院か少年刑務所かは分からないが

もう会うことはないだろう。

当然だが家族も引っ越していった。


そして俺達に穏やかな日々が戻ってきた。

「おにーさんにわからせられちゃった♡」

「なぁ、なんで今日ずっと

 メスガキなんだ?

 急に髪をツインテールにして

 【ざーこ♡】とか言ってきたの

 マジでビックリしたぞ。

 とりあえず流れで抱いたけど•••

 これで良かったのか?」

「メスガキって人気なんでしょ?

 友達から教えてもらったの。」

「前から思ってるけど一度

 お前の友達に会わせてくれ。

 かたよった知識を吹き込んでる

 ヤツがいるな。」

「えー。

 喜んでくれるって聞いてたのに。」

「よく考えろ、メスって

 言ってるんだぞ?

 そんなのが好きな奴なんて

 ロ○コン確定だろ?」

「違うの?」

「違うよ!

 お前、俺の事そんな風に

 思ってたのか?」

「でも妹に手を出す男なんて

 絶対ロ○コンだよって

 言われたから•••」

「そいつマジで腹立つな•••

 妹だから好きになったんじゃない!

 好きになった子が妹だっただけだ!

 朝乃もそうだろ?」

「確かに•••

 兄妹きょうだいとか関係ないもんね。」

「【他の男も知った方が良いよ】とか

 ソイツに言われても絶対に聞くなよ。

 俺はマジで嫌だからな。」

「それは流石さすがに私も嫌だよ。

 それにその子もそういう事は

 言わないと思うよ。」

「本当だろうな•••?

 なら良いが•••」

俺は朝乃を抱き締めながら話をする。

「なぁ【メスガキ】もそうだけど

 【ツンデレ】とか【ヤンデレ】とか

 たまにやってるけど

 どういう事なんだ?

 毎回付き合ってるけど

 いつも不思議だったんだよな•••」

「男の人は刺激が無くなると

 浮気するって聞いたから•••」

「本当にろくでもない事を

 吹き込んでるヤツがいるな•••

 いや、絶対違うとは言えないが

 少なくとも俺は浮気を考えてないぞ。」

「本当?」

「本当だよ。

 まぁそれを言い出したら

 女でも浮気する奴はいるだろ?

 心配なのは分かるけどな•••

 でも朝乃の気持ちは嬉しいよ。

 俺のために頑張ってくれてる姿は

 本当にいとおしいよ。」

「たっちゃん♡」

「未来はどうなるか分からないさ

 俺達の親みたいにどっちかが

 死んで違う相手と結ばれる未来も

 あるかもしれない•••」

「うん•••」

「だからお互い生きてる間は

 一緒にいようぜ。」

「うん♡」

今に感謝をしながら俺達は

ベッドの上で強く抱き合った。


それからときが流れたが俺達は

無事に過ごしていた。

幼馴染みから兄妹きょうだいになり

恋人となり夫婦になった。

子供も生まれて父親•母親という

関係でもあるだろう。

朝乃にふと聞いてみた。

「今の気持ちの割合はどんな感じだ?」

朝乃は少し考えると

「幼馴染み•兄妹•恋人•夫婦一つ一つの

 割合わりあいは少なくなったけど合計すれば

 100%超えてるよ。

 たっちゃんは?」

俺は直ぐに答える。

「俺も100%超えてるよ。」

俺達は本当に幸せ者だ。


         完

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