第4話 幼馴染みは合宿へ行った
「おはよー。早く起きてー。」
朝、いつもの声で目を冷ます。
目の前にはポニーテールを揺らして
微笑む幼馴染み
「おはよぉ•••毎朝元気だなぁ•••」
僕、
今日も並んで登校する。
真央はテニス部のアイドル的な存在で
登校するだけで周りの注目を集めていく。
家が隣というだけで仲良くしている僕は
色んな男に目の敵にされている。
その内の一人が近付いてきた。
テニス部でイケメンと評判の先輩だ。
「おはよう真央ちゃん。」
真央にだけ挨拶する。
「••••おはようございます。」
少し嫌そうに真央が挨拶を返す。
よく有る事なので僕は気にしない。
イケメン先輩はニヤニヤしながら
「もうすぐ夏休みだよ。
楽しみだねぇ。」
と話していた。
「そうですね•••。
失礼します。」
真央はこのイケメン先輩があまり好きでは
ないらしい。
いつもすぐに離れようとする。
「良いの?
あんな態度で。」
「良いのよ。
あの先輩いつもニヤニヤ
嫌らしい目で見てくるから。
それにゆう君にもいつも失礼な態度
取るんだもん。」
「僕は別に良いけど•••」
そんな会話をしながら教室に入る。
放課後、部室棟の近くで
真央の部活が終わるのを
待っていると
「おい!ストーカー野郎!」
と声をかけられ、振り向くと
イケメン先輩が立っていた。
「お前、真央ちゃんに付き纏ってんじゃ
ねえよ!」
と怒鳴りつけてくる。
「いや別に付き纏っては•••」
と言いかけるがイケメン先輩は
興奮して全く聞いていない。
「真央ちゃんが嫌がってんの
分からねぇのか?!」
と胸倉を掴んでくる。
どう考えても嫌がられてるのは
先輩の方だと思うが•••
さてどうしたものかと考えていると
「何やってるんですか?!」
と怒った顔の真央が走ってくる。
「いや•••
コイツがストーカーを•••」
と胸倉を離し、しどろもどろで
言い訳をしてると
「ストーカーなんてされてません!
私が終わるのを待っててくれただけです!」
と怒りながら真央は僕の手を取り
「ゆう君、行こっ!」
と歩き出す。その後ろで
「何であんな奴に•••」
と言う恨み言が聞こえた。
「本当嫌な人!」
真央は怒りながら歩いている。
「真央は人気が有るからなぁ。」
そう答えながら隣を歩く。
「ゆう君は優し過ぎるよ!
もっと怒っていいのに!」
「いやぁどうでも良いよ。
真央が幸せならそれで良い。」
そう言うと真央は隣で顔を赤くする。
「いつもゆう君はそう言うよね?
私が幸せならって•••
ゆう君にとって•••
わ、私はどう言う存在かなぁ?」
「大切な存在だよ。
誰よりも何よりも。」
「それって•••
告白って事でいいのかな?」
「そうだなぁ•••
恋人になりたいと言うより
ずっと一緒にいたいって感じかな?」
「そ、それってもうプロポーズじゃない?」
「真央はどう思ってる?」
「わ、私もずっと一緒にいたいって
今までずっと思ってたよ!
ううん。
今も思ってるよ!」
「そうか•••
なら両想いだ。」
「うん!
両想いだね!」
思いもよらず2人の関係は変わってしまった
•••いや、正確には何も変わっていない。
幼馴染みに恋人と言う関係が
加わっただけで前よりも少しだけ距離が
近くなっただけだ。
2人の関係に恋人と言う要素が加わってから
真央は随分と積極的になり
登下校で手を繋ぐのは当然で
お弁当作りにお昼休みの一緒の食事。
休日のデートは勿論。
恋人関係が始まって最初に僕の部屋に
来た時に突然キスをされ、そのまま
押し倒された。
2人とも初めてだったが、とにかく
真央が積極的で今まで見た事が無いほど
興奮していた。
終わってから
「本当はね•••
ゆう君とずっとこうしたくて•••
頭の中で色々と妄想してたの•••
引いちゃったかな?•••」
「そんな事ないよ•••。
いつも真央の幸せを願っていたけど•••
本当は僕もこんな関係を
望んでいたから。」
「嬉しい!
私の幸せはゆう君と
一緒にいる事だよ!」
そう言いながら抱きついてくる真央。
僕はそんな真央を抱き締めた。
そして夏休みに入ってすぐ、真央は
テニス部の合宿に行く事になった。
「ゆう君と離れたくないなぁ•••」
「確かに僕も寂しいよ。
月曜日から金曜日まで
四泊五日だからね。」
そう話ながら裸のまま抱き合う。
最近はどちらかの部屋にいる時は
裸で過ごす事が多い。
「私がいない間に他の女の子に
誘われたら、どうする?」
「勿論断るし、そもそも僕はモテないから
心配しなくて大丈夫だよ。」
「そんな事ないよ!
ゆう君は格好良くて優しくて
本当に素敵だから!」
「ありがとう•••照れるな///」
そんな会話をしながら真央は
合宿に出掛けて行った。
真央が合宿に行った日の夜、僕と真央の家
そして学校は大騒ぎになっていた。
合宿初日の夜あのイケメン先輩が女子部屋で
眠る真央に夜這いをかけたというのだ。
真央が必死に抵抗し、周りの女子が騒いで
先生達が駆けつけ事なきを得たらしいが
話を聞いた時は血の気が引いた。
合宿は当然中止になり、夜中母親に
起こされ慌ててウチの両親と真央の両親と
一緒に車に乗り合宿所のある山奥に向かう。
その道中、真央から電話があり取るとすぐに
「ゆう君!」
と真央の声が聞こえた。
「真央!大丈夫か?!
今、皆で向かってるから!」
「大丈夫!
抵抗してたら逃げていったから
何もされてないよ!」
「そっちもだけど怪我とかしてないか?
もうすぐ着くから待ってて!」
「大丈夫だよ。
怪我も何も無いよ。」
そのままスピーカーにして皆で話を
しながら合宿所に向かう。
合宿所は夜中なのにパトカーや救急車
他の家族の車で溢れていた。
「ゆう君!」
「真央!」
お互いに見つけた瞬間、駆け寄り抱き合う。
「良かった•••
無事で本当に良かった•••」
「心配かけてゴメンね。」
「真央は何も悪くないよ!
あの先輩はどこだ!許さない!」
そう叫ぶと同時に救急車がサイレンを
鳴らして走り出した。
「先輩はあの救急車に乗ってる。
私が抵抗した時に目を傷付けちゃって•••」
「そうか•••
それも正当防衛だから
真央は何も気にしなくて良いよ•••
本当に良かった。」
そう言ってまた真央を抱き締めた。
それから学校でも世間でも大騒ぎになり
男女ともにテニス部は廃部案も出たが
そもそも女子テニス部は被害者だし
男子テニス部も先輩以外は皆
部屋で寝てたので暫くの間、同好会に
する事で何とか話をまとめたらしい。
真面目に練習していた部員は大激怒
しているそうだ。
怒るのは当然だろう。
真央はその後テニス部を辞めた。
色々思い出してしまうらしいので
誰も止める人はいなかった。
そして前以上に僕達は一緒に過ごした。
周りから嫉妬の目で見られる事も有るが
それ以上に応援してくれる声も多かった。
そして夜は必ずどちらかの部屋で
一緒に眠った。
やはり1人で寝るとトラウマが
出て来るそうだ。
どちらの家族も僕達の関係を知っているので
半同棲状態になっている。
いつかは結婚する事を報告しているので
むしろ両家は歓迎状態である。
それから同じ大学に進み二人とも地元に
就職が決まると同時に籍を入れ
今も幸せに暮らしている。
私には小さい頃から隣に住む
幼馴染みがいる。
名前は裕貴君。私はゆう君と呼んでいる。
いつも優しく私は物心ついた頃から
ゆう君が大好きだった。
ゆう君に相応しいように自分を磨き
テニス部に入り人気者になって
周りの女子を牽制した。
私が変わっても、ゆう君は変わらなかった。
いつも私の幸せを考えてくれた。
チヤホヤしてくる有象無象の男とは違う
本当に素敵な人だ。
私は益々ゆう君が好きになった。
そして私はゆう君と恋人関係になり
全てを捧げた。
本当に毎日が幸せで幸せで
どうしようもなかった。
そして夏休みに入りテニス部の合宿に
行く事になった。
物凄く行きたくなかった。
ゆう君と五日も離れる事が嫌で嫌で
仕方が無かった。
私が居ない隙にゆう君に他の女が
近付いてくるんじゃないかと
気が気でなかった。
ゆう君も応援してくれるので渋々
合宿に出掛けた。
初日練習していると嫌な視線を感じて
振り向くと大嫌いな先輩がいやらしい目で
こっちを見ていた。
この先輩はゆう君に失礼な態度を取るから
本当に嫌いだ。
ゆう君の胸倉を掴んでいるのを見た時は
ラケットで殴ってやろうかと本気で
思った程だ。
ゆう君は優しいから気にもしてなかった
ようだけど。
そんな先輩の目が気になって、その夜は
寝ないでいると夜中にあの先輩が女子部屋に
入ってきた。
周りに女子も沢山いるのに
信じられないバカだ。
私が寝ていると思った先輩はスマホの
明かりを頼りに近付いてくる。
そして私の近くに来ると
私は飛び起きスマホで丸見えの先輩の
左目に右手の親指を根元まで突き刺した。
一瞬、間がありその後 汚い絶叫を上げた。
当然周りの女子達が目を覚まし
女子達も悲鳴をあげる。
泣き出す子もいれば先生を呼びに行く子
警察に通報する子もいた。
飛び込んできた先生達にのたうち回っていた
先輩は取り押さえられた。
その後、家族や救急車も呼ばれ合宿所は
阿鼻叫喚の坩堝と化した。
病院で治療を受けた先輩は当然左目を
失明していた。
警察の取り調べにも震えてまともに
答えられなかったらしい。
相手の親が何か言ってくるかと思ったが
親はマトモらしく、こちらに謝罪した後
先輩は退学して家族と引っ越していったと
噂で聞いた。
ゆう君は事件が起こった時も私の事を
何より心配してくれて、すぐに駆け付け
抱き締めてくれた。
そして初めて怒ったゆう君を見た。
きっとゆう君は私が汚されても変わらず
愛してくれるんだろう。
そんな事になるつもりはないが
その気持ちが本当に嬉しくて
また惚れ直した。
その後はトラウマになったと言う事にして
テニス部を辞めた。
恋人関係が始まってからずっと辞めたかった
から丁度良かった。
そして1人で寝るのがトラウマになったと
言って毎晩一緒に寝る事が
出来るようになった。
私にとっては最高の環境だ。
その後、時が経ち私達は結婚した。
子供が生まれて、年を取っても
ゆう君は私を毎晩抱いてくれる。
ゆう君と私が。
私のゆう君とゆう君の私が
今夜も混ざり合う。
これからも私はゆう君の隣で
誰よりも幸せを感じて生きていく。
完
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