第3話 生徒会長のお義姉ちゃん

僕には二つ上の姉がいる。

と言っても父親が二年前に再婚して

出来た義理の姉だ。


初めての顔合わせの時

「初めまして宏太こうたといいます。」

「初めまして私は桜だ。よろしく宏太君。」


それからずっと仲良く暮らしている。

身長160㎝にも満たない、たまに女の子に

間違えられる事も有る小柄な僕に対し

桜さんは170㎝を越える立派な体格だ。

美人だしスタイルも良い。

勉強も出来るし剣道も二段の腕前だ。

何より優しい。

今は高校三年で剣道部部長と生徒会長を

兼任している。

女子に絶大な人気が有り、いつも周りには

女子の取り巻きがいる。

僕は同じ高校の一年生だ。


中学三年の受験勉強中。

隣で勉強を教えてくれていた桜さんに

「もし同じ高校に受かったら恋人に

 なってくれますか?」

と告白したら

「ふぇっ?! こ、恋人?!」

と驚いていた。

「自分みたいに小柄な男は

 恋愛対象外ですか?」

「いやっ•••そんな事は無い!

 前からカワイイと思っていたし•••

 すまない、男にカワイイは駄目だよな。」

「そんな事無いですよ。桜さんに

 言ってもらうのは嬉しいですし。

 •••どうですか?ダメですか?」

「•••ちょっと待ってくれ。

 男子に告白されたの初めてなんだ

 それも宏太にされるなんてビックリして

 しまって•••」

「桜さんこんな美人なのに今まで

 無かったんですか?」

「美人って男子に言われるのも

 初めてだな•••

 わ、私は体がデカいから

 女子から告白されたりは沢山有るが•••」

「なら受験が終わるまで

 返事は保留で良いですよ。

 元からそのつもりですし。」

「わ、分かった。

 前向きに考えておく•••」

その日から家の中で桜さんはチラチラと

僕の方を見るようになり、近くに行くと

顔を赤くしてモジモジしていた。

家の外ではキリッとして相変わらず女子に

キャーキャー言われていたが。


そして合格発表の日。

スマホで番号を確認した後、桜さんの

部屋をノックする。

「ど、どうぞ。」

と言われて部屋に入る。

そして桜さんの前に座ると

「無事、合格しました。

 今まで勉強を教えてくれて

 ありがとうございます。」

「そ、そうか、おめでとう•••

 これで同じ高校に通えるな•••」

「桜さんあの時の返事

 聞かせてもらえますか?」

「う、うむ。」

と一息吐くと

「今まで恋人がいた事が無いから

 色々不慣れだけど•••

 よろしくお願いします。」

「僕もいた事無いですよ。

 一緒に成長していきましょう。

 よろしくお願いします。」

この日、晴れて二人は恋人となった。


恋人になってからも2人の関係はそんなに

変わらなかった。

桜さんは生徒会と剣道部を兼任しているので

非常に忙しく中々一緒に帰る事も出来ず

外では姉弟として距離を取り、家に帰ると

桜さんがモジモジと距離を詰める。

こっちから距離を詰めると恥ずかしそうに

顔を赤くして固まってしまう。

そんな日々だった。

中々もどかしいが、不思議とそれがとても

心地良かった。

他の人は見られない桜さんの顔が

見られる事がとても嬉しかった。


そんな日々が続きゴールデンウィークが

過ぎた5月半ば。

その日も1人で下校していたらガラの悪い

連中に声をかけられた。

その内の1人に

「お前あの生徒会長の弟だってなぁ?」

とニヤニヤしながら尋ねられた。

「そうですけど。」

と答えると周りの人間もニヤニヤしだし

「一緒に来てくれるか?

 まぁ拒否権は無ぇけどなぁ。」

と笑いながら取り囲む。

「•••分かりました。」

そう答えて一緒に歩き出す。


そして連れて来られたのは廃工場だった。

「ここを俺らの溜まり場にしてんだよ。」

「そうなんですか。」

「今からお前をエサにあの生徒会長を

 ここに呼び出すんだよ。」

「••••」

「お前の姉ちゃんは有名人だからなぁ

 楽しみだぜぇ。」

その声に周りの奴らも

「メッチャ美人だしな。」

「胸も尻もデカいよなぁ。」

「気が強そうなのもそそるぜぇ。」

と好き放題に喋る。

最初に声をかけてきたリーダー格の男は

「剣道をやってるらしいが相手は

 女1人で、こっちはこの数だ。

 それに人質もいる。

 ククク。

 余裕だぜ。」

下卑た笑いを浮かべる。

チンピラ共は全員で12人いる。

そして一番下っ端らしい男を呼ぶとスマホで

僕の写真を撮らせ桜さんを呼びに行かせる。

そして柱に僕を雑にロープで括ると

「そこでおとなしくしてろよ。

 良いもの見せてやるからよぉ。」

「弟の前でヤルなんて最高だなぁ。」

「こいつも可愛い顔してるから

 一緒にヤッちまうか?」

「お前、変態かよ!」

「ギャハハハ!」

チンピラ共は下品に笑っていた。


暫くすると外に車が複数止まる音がして

その後、十人以上の警察官が突入してきた。

チンピラ共は壁に押し付けられ

地面に組み伏せられ次々と手錠を

かけられていく。

「何だよコレ!何だよコレ!」

リーダー格の男も大パニックになっている。

「そりゃあ誘拐なんだから警察に

 通報するでしょう。」

雑に括られていたのでロープを外す事は

簡単だった。

「ふざけんな!

 じゃあテメェを盾に•••」

そう言いながら伸ばした手をかわし懐に入り

服を掴んで頭から

桜さんに釣り合うように中学時代は柔道に

励み、独学で柔術を研究していた。

体の小さい僕でも戦えるように古流柔術を

本で学んで鍛えてきた。

背中からではなく頭から落とす戦国の技だ。

勿論使うのは今日が初めてだが•••

本当は最初に声をかけられた時点で

逃げようと思えば逃げられたが

コイツらを野放しに出来ないと思い

この作戦を思いついた。

流石、桜さん気付いてくれたみたいだ。

近付いてくる警察官に

「スイマセン!

 無我夢中でやったら

 動かなくなっちゃいました!」

と動揺した振りをする。

警察官は

「大丈夫。

 今、襲われそうになったのを

 見てたから正当防衛だよ。」

と肩を叩いてくれた。

その後、外に出ると桜さんが先生達と一緒に

心配そうに待っていた。

「宏太!大丈夫だったか?」

「桜さん!通報してくれて

 ありがとうございます。」

「うむ。すぐに先生達に相談して

 警察に動いてもらった。」

すぐ後ろに教頭先生達が立っていた。

「教頭先生達もありがとうございます。」

「ああ。君が無事で良かった。」

そう言って笑う。


桜さんを呼びに行った下っ端の男は

校門の所で桜さんに声をかけ、

スマホの僕の写真を見せ

「お前の弟を預かってるぞ。

 ○○工場のあった場所に来いよ。」

とニヤニヤ声をかけたらしい。

「場所は○○工場の跡地だな?

 間違いないな?」

と桜さんが問うと

「そうだって言ってんだろ!

 早く来ねぇと弟が痛い目に•••」

と言いかけた所で桜さんが男の

スマホを奪い職員室に走ったそうだ。

「おいっ!テメェ何してんだ!」

と追いかけてくる男は近くにいた先生達に

「何だお前!」

「学校の敷地に入ってくるな!」

と取り押さえられたらしい。

そして職員室は大騒ぎになり

警察に通報して今に至るとの事だ。

「校長先生には今、連絡を入れた。

 学校で心配して待ってらしたからね。

 とりあえず今日は家に帰って休みなさい

 と校長先生からの伝言だ。

 事情聴取は明日からにしよう。」

「はい、ありがとうございます。

じゃあ桜さん帰りましょう。」

「うむ。」

そしてパトカーで家まで送ってもらった。


家に帰るとすぐに両親も帰ってきた。

「宏太!」

「宏太君!」

「父さん、義母さん心配かけて

 ごめんなさい。」

「いや•••無事なら良いんだ。」

「連絡を受けた時は驚いたわ。

 でも無事で良かった。」

両親はホッとした顔をしていた。

「宏一さん(父)と私は今から警察と学校に

 行って事件の詳細を聞いて明日からの

 予定を立ててくるわ。

 遅くなると思うから二人は今日は

 適当に御飯食べて休みなさい。」

そう言って出掛けて行った。


風呂に入って二人で晩御飯を食べた後

ベッドで寝転んでいるとドアがノックされ

「ちょっと良いかな?」

と声があり

「どうぞ。」

と答えると

「お邪魔します。」

と言って桜さんが入ってくる。

「どうしました?」

と聞くと同時に桜さんに抱き締められる。

「モガッ?!」

「本当はとても心配だったんだ!

 宏太が強いのは知っていたが

 それでも相手は大勢だから•••だから•••」

「ごめんなさい。苦しい思いをさせて•••」

「いや•••宏太が無事なら、んっ。」

思わず桜さんの唇を奪い抱き締める。

「こんな時にごめんなさい。」

「いや•••凄く嬉しい。安心する•••」

そしてもう一度、唇を重ねる。

「フフッ。ファーストキスも

 セカンドキスも奪われたな。」

「じゃあサードキスも下さい。」

そう言ってもう一度キスをして

ベッドの上で抱き合う。

「幸せです。」

「私も。

 •••今までキスも何も出来ずに

 ごめんなさい。」

「良いんですよ。

 僕達は僕達のペースで

 歩いて行きましょう。

 それこそ無理矢理だとアイツらと

 同じになっちゃいますし。」

「いや別に宏太になら無理矢理でも•••」

「えっ!いやでもそれはちょっと•••」

「分かった。ちょっと待っててくれ。」

と言って部屋を出て行き手に何やら箱を

持って戻ってくる。コン○ームだ。

「付き合い始めてからすぐに買ってたんだ。

 いつ求められても良いように。」

「そんな覚悟を決めてたなんて•••

 いつも固まってたから•••」

「ううっ•••不甲斐なくてすまない•••」

そう言いながらコン○ームの封を開ける。

「桜さん!何してるんですか?!」

「工場の外で待ってた時、後悔してたんだ

 こんなことならもっと積極的にしとけば

 良かったって•••」

「別に僕死んでないんですけど•••」

「結果論だよ。

 次は事故に遭うかも知れないだろう?」

「まぁ確かに•••」

「もう覚悟を決めたんだ!

 あとは宏太が受け入れるだけだ!

 宏太は嫌なのか?」

「嫌な訳ないですよ!

 •••よろしくお願いします。」

「う、うむ•••。

 よろしくお願いします。」

そして僕らは体を重ねた。


次の日、部屋に入ってきたお義母さんの

「そろそろ起きなさーい。」

の声で目が覚めた。

時計は10時を回っていた。

ヤバイッ!と思ったが、お義母さんは

「二人ともシャワー浴びて着替えなさい。

 今日は学校はお休みして

 警察署に行くんだから。」

と気にもしてない。

「この状況見て怒らないの?」

「朝、一回見てるから大丈夫よ。

 桜を起こしに行ったら部屋に居なくて

 もしかしてと思ったら案の定

 宏太君の部屋で二人仲良く

 寝てるんだもの。

 ビックリしたけど、まぁ好き合ってる

 二人なら良いかと思ったの。

 避妊もしてるみたいだし。」

そう言って枕元の箱を指差す。

思わず顔が赤くなるが、それより

「気付いてたの!僕達の事!」

「•••むしろあんな甘酸っぱい空気出しといて

 気付かない方がおかしいでしょ•••

 それより早くシャワーを浴びなさい

 凄いにおいよ。」

そう言いながら部屋を出て行く。

この間、桜さんは隣でずっと寝ていた。

「桜さん。起きて下さい。」

揺すって起こすと

「ん•••。宏太ぁおはよー•••。」

寝ぼけ眼で挨拶をする。

「おはようごさいます。

 桜さん。

 体は大丈夫ですか?」

「少しジンジンするけど大丈夫。

 それより今は嬉しいが勝ってる。」

そう言いながら優しく微笑む。

「初めてだったのに無茶させてしまって

 ごめんなさい。

 僕も夢中になってしまって。」

「私が望んだ事だ。

 謝らなくて良い。

 思ってたより痛みは無かったし•••

 それにしても宏太も男なんだな•••

 凄かった•••

 気付いたら今だからな•••」

「僕も4個目のコン○ームを着けた所までは

 覚えているんですけど•••

 その後はちょっと記憶が飛んでるん

 ですよね•••」

「もし妊娠してたらどうする?」

「も、勿論責任取ります!」

「フフッ。多分大丈夫だと思うが•••

 その時はよろしくな旦那様。」

「はい!末永くよろしくお願いします!」

「まずは両親に報告しないとな。」

「それはさっきこの状況見られたから

 大丈夫だと思いますよ。」

「えっ!どういうこと?!」

そんな会話をしながら二人で

ベッドから起き上がった。


その後、警察署で事情聴取を行い

1人を除いて11人は全員少年刑務所送りに

なったそうだ。

残った1人は僕が直接手を下した

リーダー格の男だ。

下がコンクリートではなかったので

頭蓋骨はヒビが入る程度だったが

頸椎が損傷して一生寝たきりに

なったらしい。

相手の親が裁判を起こしたが

警察官の証言と凄腕の弁護士さんの

お陰で返り討ちに出来た。

桜さんの友達の知り合いらしい。

「去年、水泳部の友達が体育教師に

 脅迫されてな、その時に

 御世話になったと聞いた。

 彼氏のお父さんだと言ってたな。」

僕が入学する前に、そんなニュースが

有ったな•••

二人は今も仲良く暮らしてるそうだけど。


この事件を切っ掛けに警察は芋づる式に

地域一帯のチンピラを逮捕しまくった。

元々治安のクリーン作戦を計画中

だったらしい。

この地区の警察は優秀だと大人達は

感心していた。


そして両親がいない休日

桜さんと体を重ねた後、

ベッドでイチャイチャしていた。

「後ろからされるのは動物の交尾

 みたいだな•••」

「嫌でしたか?」

「宏太に服従しているようで

 嫌ではないけど•••

 やはり向き合って抱き合う方が好きだな。

 それに私は尻がデカいから•••」

「それが良いんですよ!

 丸くて綺麗で最高のお尻です!」

「そ、そうか•••照れるな///」

「そして、その中で自己主張するお尻のあ」

「ワァァァァァァ!そんな所、見るな!

 変態!宏太は変態だ!」

「四つん這いになったら丸見えですよ。

 桜さんの名前と同じピンク色の」

「バカッ!色まで言うなっ!

 変態!ド変態!大変態!」

ベッドの上で二人でドタバタしている。

「スイマセン。

 桜さんが可愛いから

 つい意地悪言いたくなるんです。」

「そ、そうか私は可愛いか•••

 そうかそうか。」

「はい。

 桜さんは世界一可愛いです。」

「宏太も世界一格好いいぞ。

 間違いない。」

「ありがとうございます。」

そう言って桜さんを抱き締める。

「髪、伸びましたね。

 初めて会ったときはショートカット

 でしたよね?」

「う、うむ。宏太に告白された時から

 伸ばしているんだ。

 似合わないかな?」

「まさか。

 とても素敵です。

 全ての桜さんが好きです。」

「真正面から言われると照れる。

 わ、私も全ての宏太が好きだぞ。」

「これからもずっと一緒に

 いてくれますか?」

「勿論だ!

 捨てられてもしがみ付くぞ!」

「そんな事しませんよ•••

 これからもよろしくお願いします。」 

「うむ。

 これからもよろしくな。」


そして僕達は結婚しても仲良く暮らしたが

【さん付】と【敬語】を辞めない事だけが

桜さんは不満らしい•••。


         完



追記 オムニバス形式ですが、同じ世界

   同じ学校という設定です。

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