第4話
そう口にしたトム自身が驚いていた。
知らない人に付いて行ってはいけないと、何度も両親から言われていた。
それでもトムは一緒にいたいと思ってしまっていた。
『本当に?ありがとうトム』
不安になっていたトムとは違い、アーヤは嬉しそうに言うと、トムの手を握った。
『あまり長居は出来ませんからな。協力感謝しますぞ』
アールもペコリと頭を下げる。
『この中にはなさそうだから、他の場所を探してみようか!』
『お待ち下されアーヤ様。まずは時間を止めましょう。こちらの世界の人と会うことは避けなければなりません』
『あー、そうだったね』
(時間を止める…?)
先程から信じられないことが起こり続けていた。
そして今度は時間を止めると言う。
トムは半信半疑に、しかしとても興味深く二人を見つめた。
アールは懐中時計を取り出し、ゼンマイを逆方向に何回か回す。
『…これで暫くは自由に動けますな。とりあえず外に出ましょうか』
拍子抜けするくらい簡単な動作で時間が止まったらしい。
トム自身は動くことができたし、アーヤやアールも普通に動いている。
本当に時間が止まっているのか、トムには信じられなかった。
『トム、手を握って。絶対に放しちゃダメだよ』
アーヤが差し出した手を反射的に握った。
アーヤも強く握り返し『いくよ』と言うと、アーヤの体を先ほどの淡い緑色の光が包み始めた。
その光は繋いだ手を伝って、トムの体も包んでくる。
光が全身を包んだ時、木の上からは飛び降りた時のようなフワフワした感覚があった。
不思議な感覚がして、ふと足元を見ると、トムの体はゆっくりと浮き上がっていた。
『わーー!』
『あっ、ダメ!』
驚いたトムは、アーヤの手を放してしまった。
途端にトムの体から淡い緑色の光が霧散し、それと同時に落っこちていった。
大した高さではなかったのだけれど、驚いていたため尻餅をついてしまった。
『ホッホッホッ。ケガはありませんかな?』
こうなることを予測していたかのように、アールは髭を撫でながら笑っていた。
『もうっ!手を放しちゃダメって言ったじゃない!』
光に包まれたまま、アーヤはゆっくりと下りてきた。
そのままトムの目の前に下りると、光は霧散していった。
『今度は絶対に手を放しちゃダメだからね!』
『分かった。絶対に放さない』
トムは頷くと、差し出されたアーヤの手を握り返した。
そして再び光に包まれると、フワフワと天窓を目指して浮かび上がっていった。
『フム。今度は大丈夫そうですな』
トムとアーヤが天窓まで上ったのを見届けると、アールも浮かびはじめた。
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