第2話

納屋の中に、淡い緑色の光が灯ったのである。

ロウソクの光ではない。

トムが今まで見たことのない色の光だった。

袋の影に隠れながら、そっと光の出所を探してみた。


全身を淡い緑色の光で包んだ女の子がそこにいた。

しかも天窓からゆっくりと下りてくる。

まるで浮かんでいるように思えた。

女の子はキョロキョロして何かを探しているみたいだった。


不思議な光景だった。

でも、見たことのない女の子だ。

見つかるわけにはいかない。

両手で口を塞ぎ、再び袋の影で縮こまろうと思った時に声が聞こえてきた。


『見つかりそうですかの?』


少し甲高い、それでいて少し嗄れたような声。

天窓を見ると、その声の主も緑色の光に包まれながらゆっくりと下りてきていた。


声の主は…ウサギ!?


『うわーーー』


トムは思わず叫んでいた。

いくら何でもヘンテコなことが起こり過ぎている。


しかし、それは相手も同じことだったようで…


『ええっ、何で!?』


女の子は驚いた声をあげてトムの方に顔を向けた。トムと目が合うと緑色の光は霧散し、そして一気に落下すると尻餅をついていた。


『アーヤ様!大丈夫ですか!』


尻餅をついた女の子を見つめて、ウサギも緑色の光を霧散させると、綺麗に着地して女の子に向かって行った。


『痛たたっ…それより、どうしてあなたは動けるの…』


女の子は驚いた顔でトムを見つめてきた。


『しまった!魔法が切れてしまっていますぞ!時間切れです!』


ウサギは懐から何かを取り出すと、を女の子に見せながら、あたふたとトムと女の子を忙しく見ていた。


『どうしよう…見られちゃった…どうしよう…』

『お、おおお、落ち着きましょうアーヤ様』


尻餅をついた姿勢のまま後ずさろうとする女の子と、落ち着こうという言葉とは裏腹に小刻みに跳ね回るウサギ。

そんなドタバタを見せられ、逆にトムは落ち着きを取り戻していた。

女の子もウサギも、どちらも泥棒や悪い人ではなさそうに思えたのだ。

トムは立ち上がり、袋の影から顔を出した。


『君たちは誰?』


トムの優しい問いかけのおかげか、はたまた相手が小さな子供だと分かったからなのか、二人も落ち着きを取り戻したようだった。


『私の名前はアーヤ』


女の子は立ち上がり、そう名乗った。

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