石さがしの夜

ボンゴ

第1話

キィ…キィ…


耳障りな音がする。

雑貨屋の風見鶏の音だ。

トムは天窓を見つめ、ギュッと膝を抱えた。


『怖い…』


抱えた膝におでこをこすりつけた。


トムはイタズラのお仕置として、納屋に閉じ込められていた。

ロウソクの明かりもなければ、話し相手になる姉もいない。

いつもの夜と違うことは、たったそれだけのなのに、何もかもが怖い。

普段は何とも思わない風見鶏の音ですら、悪魔の笑い声なのではないかと疑ってしまう。


石を投げて遊んでいただけだった。

馬に当てるつもりなんてなかったし、その馬が暴れて畑を滅茶苦茶にするなんて思いもしなかった。

しかし、その結果トムは一晩納屋に閉じ込められることになったのだ。


ギシッ ギシッ


突然の物音にトムは顔を上げ、天窓を見つめた。

音は屋根の上から聞こえた。


(こんな夜遅くに屋根に人がいる…?まさか、泥棒!?)


トムは音を立てないように、四つん這いになって隠れられそうな場所を探した。

天窓からの月明かりだけでは、納屋の中の物も輪郭しか見えなかったが、小麦の袋の後ろに体を隠すことができた。


屋根の上からは、まだギシギシと足音が聞こえてくる。

そして時折、話し声も。


(どうか、納屋の中に入ってきませんように)


トムは袋の影から、じっと天窓を見つめ続けていた。

しかし、トムの願いは届かず、納屋の中を覗き込むように、天窓に黒い影が現れのだった。

影は天窓のつっかい棒を外すと、窓を全開にした。


(ダメだ、入ってくるつもりだ)


トムは天窓を見るのをやめ、袋の影で身を縮めると、両手で口を塞いだ。

息の音が聞こえたら気が付かれてしまうに違いないと考えたからである。


(怖い…どこかに行ってしまえ!怖いよ、お父さん!お母さん!)


しかし、しばらくしても屋根の上にいる人が下りてくる気配はなかった。

天窓を見てはいないが、天窓から床までは3メートル程はある。

音もなく下りてくることなんて出来るわけがない。


そう考えて天窓を確認しようとした時、思いもよらないことが起こったのである。

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