14.温泉旅行、帰宅
朝、目が覚める、隣には加那多が居て、お互いに裸だ。
昨日は俺がわがままを言って、借りを返す方法として加那多に抱いてもらった。
もう、こうする事でしか返せないと思ったし、それほどまでに俺は追い詰められていた。
だから後悔はしていない。
それに、他の男ならともかく、どうせ抱かれるなら加那多の方が良いと思えた。
断られた時に身体を売って返すというもの、あれだって本気だった。本当は嫌だけど、他に手が無いならしょうがない。
しかしそれは加那多には相当嫌だったようで、涙を流し、止めてくれと言ってきた。
その反応を見た俺は、そこまで俺の事を心配してくれているのか、と思ったけど、止めるわけには行かなかった。
最終的には抱いてもらい、最高だと感想を貰った。
俺はというと、余りの気持ち良さに虜になっていた。
これは間違いなく加那多のお陰だろうと思う。
痛かったのは始めだけで、後はずっと上り調子で気持ち良さだけがあった。
……これ、借りを返す事になっているのだろうか。
◇◆◇
朝食を食べ終え、露天風呂から上がった後も燻っていた俺は連続で借りを返し続けた。
もう完全にハマっている、こんなにも気持ちの良い事だったらもっと早くしておくべきだった、なんて、そんな考えまでしてしまう始末。
でもこれは相手が加那多だからだ、それは間違い無いと思う。
加那多が俺を優しく丁寧に扱ってくれるのが伝わってくる、それでいて、特に激してして気持ち良くさせてくれる。
一種の愛情のようなものさえ感じる、これは加那多の性格だと思う、最後まで抱きたくないと抵抗していた加那多、それでもやるならしっかり俺も気持ち良くさせようという、そういう所が加那多らしい。
その後は温泉に入って、昨日気になっていたサウナを堪能した、一応事前にネットで調べてサウナのマナーというか入り方みたいなものは勉強しておいた。
加那多には事前にサウナでゆっくりしてくると伝えたので、昨日のように待ちぼうけする事も無いだろう。
まあぐったりしていたので暫くは動けないかも知れないけど。
冷水も始めは足しか浸かる事が出来なかったけど、3巡目辺りからはしっかり肩まで浸かる事が出来るようになっていて、驚いた。
慣れって凄い。
ただ、整う、という感覚は最後まで分からず仕舞いだった、何か間違っていたのだろうか。
部屋に戻ると加那多は縁側でのんびりと外を眺めていた。
「お昼食べにそろそろ出掛けようぜ」
「そうだな、ってもうそんな時間か」
縁側に腰掛けている加那多が立ち上がる。
「よっこらっしょ」
「おっさんか?」
「30のおっさんだが?」
「そうだったな、俺は16の若者だけど」
「中身は俺と同じな癖に」
「カナも少しは鍛えたほうが良いんじゃないか?」
「……そうだな、そうしようかな」
おや、やけに素直、まあ筋トレくらいはした方が良いよな。
車に乗り込み、今日食べたい物の話になる。
「昨日はざる蕎麦と天ぷら、夜に肉食ったからそれ以外となると、やっぱ魚か?」
「ここは魚いまいちだと思うぞ、それより蕎麦屋のカツ丼とかどうだ」
「良いね、そういや蕎麦屋のカツ丼なぜか旨いよな、やっぱ出汁かね」
「それじゃ蕎麦屋を探すか」
という事で蕎麦屋でお昼を食べる事に、昨日とは違う店に入ってカツ丼を頼む。
加那多も同じ物を頼んだ。
予想通りカツ丼は美味しく、目論見は間違ってなかったと2人で話あった。
「なあカナ、今日は道の駅を回って土産と名物お菓子でも買って、名物スイーツがあるカフェなんか行ってから、後は旅館でのんびりしないか?」
「まあ今日はのんびりするって言ってたしそうするか」
まずは道の駅、大体こういうところには2箇所くらいはあってもいいと思うんだけど、両方に行った。
片方は酒とおつまみばかりのお店、もう片方は郷土名物を中心としたお菓子なんかのお土産のお店。
屋台で牛串なんかも売っていたけど、お祭りで見るような小さいのではなくデカい牛串で、食べごたえ抜群で、しっかり値段相応だなあ、なんて思った。
土産物屋に寄り、加那多はお土産を買っていた。
俺は特に土産を渡す相手もいないので旅館でつまむお菓子をいくつか購入して旅館に戻った。
晩ご飯まで少し時間があったので、2人で部屋でごろごろして、縁側でのんびりして、まさに怠惰な午後を過ごしていた。
そして晩飯の時間になり、運ばれてきた、またしても豪勢な食事を食べた。
旅館の土産物や売店コーナーなんかを見て回って時間を潰した後は、露天風呂に一緒に入ったり布団で寝るまで借りを返してその日は過ごした。
ただ、露天風呂に入った時に加那多は抵抗してきた。
「なあ、本当にこの方法しかないのか?考え直してくれないか?」
なんて加那多はまだ言ってくるけど、もう決めた事だ、それに俺だって気持ち良いし、何が問題なんだ。
「なんだよ、そんなに俺を抱くのが嫌なのか?」
「いや!そうは言ってない!ノブを抱けるのはこの上なく幸せな事だと思う。だけどそれとこれは話は別で、もっと良い方法はないかって、そう思うだけだ」
「無い!もう決めた事だ、それにカナが嫌だっていうん──」
「待て!その先は言わなくて良い、分かった。俺が抱くから、他の誰にもしないでくれ……」
「大丈夫だって、カナが嫌だって言わなければ他には行かないよ。俺だって男に抱かれるとか本当は考えただけでも吐き気がするしな」
「──えっ!?じゃあ、俺とだって無理してるんじゃないか?」
「良いんだよ、カナなら、それに俺を気持ち良くしてくれるし」
「え?それって」
「あ、別にカナを好きだから大丈夫とかじゃないからな!そこは安心してくれ。カナなら、他の男と違って、イメージしても嫌悪感を感じない、っていうだけだから」
「あ、ああ……そうか……」
元男の俺が相手なんて、加那多も嫌だろうけど、そこは見た目美少女なんで我慢して欲しい。
◇◆◇
翌朝、目を覚まし、シャワーを浴びて、加那多を起こす。
今日は2泊3日の最終日、といっても朝食を食べてチェックアウトして帰るだけだ。
特に何処かを見て回るという事も無い。
服を着て、加那多がシャワーから出てきた所で朝食へ向かう。
昨日と同じようにブッフェ形式のバイキングで、ここでの最後の食事だと思うと少しでも高そうなものを選んで食べた。
チェックアウトまではまだ少し時間がある。
「なあカナ、チェックアウトまでまだ少し時間あるし、最後に一緒に露天風呂入らないか、借りとか言わないからさ、最後は普通に入ろうぜ」
「まあそういう事なら良いけど、本当にそういうの無しだからな」
最後は2人並んで露天風呂に入った。
景色を純粋に楽しんで、思い出話なんかをして、気付いたら結構チェックアウト時間ギリギリまで入っていた。
◇◆◇
旅館をチェックアウトして帰りの車の中。
「なんか今回の旅行さ、俺たち完全に恋人同士だったよな」
「え!?ノブ!?」
「いやだってさ、回りの扱いもそうだし、それに旅館だと理由はどうあれ恋人そのものだったじゃん。旅館でシーツとか変えた人はこのバカップルが、って思ってたと思うぜ」
「うーん、まあ、うーん……そうだな、むしろ恋人同士って見てくれたほうが良いけどな、俺とノブは年が離れてるからら、変に思われるだろうし」
「いや、恋人同士と見られてても変に思われてると思うぞ、年の差カップルな上に俺が16だしな」
「ノブは今一応18くらいには見えるからそういう意味なら大丈夫だろ、多分」
「そうだと良いな、まあこの先、カナと一緒だとずっとそういう目で見られ続けるって事なんだけど。……けど、家具を買いに行った時みたいな感じはなくて、あまり違和感やそう見られて不満を感じなかったな、慣れたのかな?」
「……まあ、慣れってのは有るだろ……それに回りがどう見てるかなんて一々反応してらんないだろ」
「という割に俺の見た目は気にするのな」
「そりゃそうだ、16と18じゃ天と地ほどの差があるからな」
「確かになー」
そんな、他愛のない話をしながら帰路につく。
途中でSAに寄ってお昼を食べ、自宅近くのスーパーで晩ご飯を買い、自宅へ戻る。
たった2日振りなのに随分久しぶりなような気がする。
あと狭い。それでもやっぱり。
「やっぱり自宅が一番落ち着くなー」
「そうだな、結局自宅が一番かもな」
まだ此処に引っ越して1ヶ月も経ってないけど、それでも此処は自宅なんだなと感じる。
ただいま、俺と加那多の家。
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