第10話 まひろさんを紹介させないでください

「佐倉、お前まひろ先輩のこと好きなの?」


 よく知らない男子生徒からの告白、初めましてよろしくお願いしますだろ?


「恋愛感情で好きではない」


「なら、手伝ってくれよ。手付けにスタバを好きなだけ食っていいから」

 それ相応の覚悟をしてもらうことにした。


「それで佐倉くん、何円巻き上げたの」


「家族へのプレゼントと思って買い漁ったので、一万は飛んだかと」


「それで人の恋心をネタバラシするんだ。怖いね、もしかして私のこと好きなのかな?」


「依頼です。部長を狙って初めましての挨拶を飛ばして、キューピッドになれって奴がわんさかわくるんですよ」


「そりゃ、あと三ヶ月でクリスマスだからね。オスは焦るね。アンタは?」


「家族の為にサンタになるんで」


「孝行息子を持って幸せだろうね。良いんじゃない?」


「何を怒っているんですか?」


「怒ってない。依頼は考える。三日後に結論を出す」

 まひろは三日といえば、三日で解決する。

 ところがまひろが熱でダウンした。だが、だるい体を動かして赤文字で書いた宣言文。


 まひろの恋心を相談してきた男子は探偵部の前に俺を連れ出し、話が違うと喚いた。こっちだって驚いた。模造紙に。


鷹鳶たかとびまひろはこれまでもこれからも佐倉詩音が大好きです。誰にも譲りません」


 メッセが届いていた。

「ちゃんと三日で解決したでしょ。佐倉くんは私と付き合えば他の男子から恋のキューピットを任されない。私と付き合いなさい。ダメ?」


 ダメじゃない、ダメじゃないよな。



「おっ、誰にも譲らない宣言された厨二男子じゃん」


「瀬名先生もなーせってアカウント作るくらいなら、リアルで教頭と繋がってください」


「言うね、少年。でもあの紙が外れるまで佐倉は晒し者よ。どっちが恥ずかしいか」


「つまらないプライドで三十になっても決めきれない先生も相当恥ずかしいですよ」


「覚えておけ、次のテストで泣きを見ろ」

 余計なスイッチを押し込んだらしい。


 電話が鳴った。

「返事」


「お願いします」


「早速可愛い彼女からのお願い。ハーゲン買って今から送る住所に来て」 


 遠いな。電車では五分なのだが、バスに乗る必要がありそうだ。いくらバスが涼しいとは言え、これでは溶けてしまう。

 位置情報周辺を調べるとコンビニがあった。バスで揺られること三十分。


 はっきり言って疲れた。あの張り紙の真意を聞かねばならぬ。付き合えと言われたら、いつでも付き合ったのに。


 コンビニでハーゲンのセットを中身違いを一つずつ買った。位置情報のインターフォンを鳴らしてもまだ自分がまひろの彼氏だと思えない。


「今、開けた。入りなさい彼氏さん」

 そういえば、女の子の家に入るのは何年ぶりだろうか。


 本日の探偵部の営業は終了しました。またのご依頼お待ち申して上げております。

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