第11話 俺は彼女の選択次第

「で、なんですか。あの張り紙」


「絵画部がくれたやつあったからさ、使ったまでだ。私も困っていた。君は予想外にモテるらしい」


 まひろも手間が省けてちょうどいいということか。ドキドキして損したよ。


 けほけほと咳き込んだ。


「部屋で寝とかないとダメでしょ」


「冷凍庫は一番下、適当に二個持ってきて、上で食べよう」

 まひろの部屋に生活感は無かった。


「普段から無駄に物を置かない主義なんだ。君との写真しか置いてないだろ」


 ベッドに横並びに座る僕たち。結局、僕たちの関係ってなんだ。どこまで期待と諦めを持てばいい。


「風邪終わったら、また依頼だね。どんなの来るか楽しみ、恋愛相談が増えるかな。クリスマスの間だけ女が欲しいとか」


 俺はまひろを押し倒した。


「一応、俺も男なんで期待してもいいんですよね」

 まひろは俺の胸を押し上げた。

「当然覚悟してるよ。クリスマスまでに私を抱けるかな? オオカミの詩音くん」


 風邪明けには依頼が殺到した。その中でダメージを食らったやつを紹介する。

「聞いてくださいよ。彼氏がヘアピンの色変えたの気づいてくれなくて」


「男って気づかない生き物だよ。今日だって髪をゆるふわにしたのに気づかないの本当に腹立つよね」

 胸に刺さる言葉を吐くな。

 依頼者が出て行った後にコソッと、可愛いよと言うと急に笑顔になり背伸びして頭をポンポンされた。

「焦ったか、可愛いやつよのう」

 

 十一月にもなるともう張り紙の話題は消え去った。高校生は忙しい、課題もあるのにあの衝撃的な告白を覚えているほど簡単では無い。


「ねぇ、詩音。そろそろ相談してもいいよ」

 エアコンは温風を出していて快適だ。


「何をだ」


「大好きな彼女とエッチな事をするタイミングが見つかりませんって」

 飲んでいた緑茶を吹いた。

「ちょっと汚いよ」


「ごめん」


「ほれ、胸触ってみ」


「何の冗談ですか?」

 まひろは俺の右手を自分の胸に当てた。


「触ったね。揉んでいいよ」


「そんなの」


「今は誰も来ないよ。ほれ、ほれ」

 握って開いてを繰り返した。

「どうかな?」


「柔らかいです」


 なぜか分からないがそのあとはずっと機嫌が良かった。

 依頼者の彼氏に乱交パーティーに誘われて断る言葉が分からないと言われても、ちゃんと対処はする。帰り際にはいつもより笑み多めで、見送る。


「今日はこれで終わりか、帰るか」


「ちょっと待った」

 肘のあたりをつままれた。


「今日は親帰って来ないんだ。ゲームとか宿題を一緒にしよ。んで、その後は」

 少し背伸びをしたまひろが耳元で囁いた。 

「エッチな事も出来るね。今日はずっとドキドキしちゃった」

 笑顔の意味は緊張を隠す為だったのか。

「手を繋いで帰るのだ」


 本日の探偵部の営業は終了しました。またのご依頼お待ち申して上げております。


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