第6話 好きになってはいけない人
探偵部にクーラーがついた。どうせ弱みを握って適当にゆすったのだろう。
楽で過ごしやすいのはいい事だ。七月には例年より早い梅雨明けが発表された。六月は探偵としての仕事は少なかったが、雑草抜きや備品器具修理のお手伝いなど雑務にあたった。
それが評価されたクーラーだったのだろうか。
久しぶりに依頼が来た。
「男子剣道部三年生。
「了解」
「失礼します」
身長や体重もだが、何もかもが大きい男が入って来た。体に防具をつけているからもあるだろう。
「練習の合間に来たのか」
「一番抜けやすいので、適当に
「恋愛相談か。ふむふむなるほどな」
「顔に出てますか」
違う。俺の能力だ。
「誰が好きなんだい」
「週に一回来てくれる県警の師範の方で柔らかくしっかりとした剣技と朗らかな笑顔に惚れましたっす」
その県警の師範が子ども好きで写真を見せてはのろけている。それが毎度胸に刺さる。
「あんな人になりたい。でもここでは言えない事をしたい」
言わないだけ紳士である。今までがゆるすぎた。
「賭けをすればいい」
「賭け?」
青年の頭にははてながついてそうだ。
「県警の師範と真剣勝負をして勝ったらデート、負ければそれまで、君が過ごして来たスポーツの世界は勝つか負けるかなどちらかだろ。勝てばいいのだよ、勝つんだ」
「勇気湧いて来たっす。練習戻ります。ありがとうございました」
青年、いや三年だから先輩か。
「
「負けるよ。でも納得するだろう。今の自分は何も持たない弱者だと。佐倉くん、気になるか?」
「気になります」
三日待たずとも噂は探偵部にも伝わって来た。怪我持ちの
「雷銅は幸せな奴だ。行ってやれ、私の中では答えは出ている」
体育館の観覧席は生徒でいっぱいだった。
「雷銅くん、君が勝ったら僕と一緒に買い物に行く。僕が勝ったら怪我を直してまた真剣勝負をする。これで異存はないな」
「はい、もちろんです」
雷銅の旗は一度も上がらなかった。万雷の拍手と賛辞に包まれて、県警の師範に雷銅は肩を抱かれた。
「本当に分かっていたんですか?」
「君は知らなかっただけで、雷銅は人格者で有名だ。怪我も仲間が飛んできたのを
まひろはやっとまともに設置したソファに腰掛けて
今日は雷銅に差し入れをしてやろうか、いや止めておこう。きっと雷銅は食べきれない。
本日の探偵部の営業は終了しました。またのご依頼お待ち申して上げております。
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