第5話 重山克治のハーレム道

 本来ならゴールデンウィークが終わり、暑くなった時期に扇風機は回すものだ。


 過ごしやすい時期に扇風機を使ったので、まひろは、ばてている。


「詩音君、暑いよ、暑いよー」


「絵画部に行けばいいだろ」


「空調点検はこの時期にするらしい。どこもかしこもみんな扇風機。よくやるよ、暑さが悪い。決めた。詩音、アイスを買ってこい。半分持ってやる」


 全額持てよ。


「今から来るぞ」


「情報は?」


「どこの部に入れば、ハーレムになるかを真剣に悩んでいる」


「失礼します。探偵さんは」


「私だ」


「その僕、重山克治と申しまして、中学では地味で色恋には関心の無い生活でしたが、高校はデビューをする場と考え、ハーレムを作ってから方向性を考えようとしまして」

 えらくボソボソ話す男だ。なんとか聞こうとしなければ聞こえない。


「つまり集まった女の子に高校デビューの手解きを受けたいと」


「そういうことです! さすが探偵さん、すごい!」

 いきなり大声になった。唾を飛ばすな。


「僕は何も変な気持ちでハーレムを作ろうとはしておりません。確かにお胸様が大きいお姉様やプライドが高い姫君。内向的な女の子やテストでは一番成績の悪い元気な子。その上末っ子なのにしっかりしている子がいたらいいですけど難しいので半分諦めている次第です」


 無い無い、そんなハーレムは存在しない。勉強が出来る主人公がいないと成立しない。


「ちなみにテストの点数?」


「百点ほど」


「それは全教科で?」


 今、まひろと俺は同じことを考えている。重山の無言が答えを表している。


「ほら、その勉強出来るようになってから、デビューしてはどうだろうか」

 まひろは困惑の表情をしているだろう。俺の仕事は観測をした時点で役目を終えるので、あとは書類処理をするだけだ。


「どうせもう中古品だらけでしょ。僕は隠された原石を探し出したい。その為のハーレムです」


 まひろ、こっちを見るな。


「先輩からのアドバイスとしては長い髪の毛をカットして、通学かばんは洗って、コンタクトにすれば女の子の目も変わるよ」


「ほうほうなるほど、お姉様勉強になります。お姉様は中古品ですか?」


 今、発言すると最悪かつ失礼な事を重山は言った。

 まひろは軽く注意しているが、内心は…。


 重山を素直にさせて帰らせたまひろは本当によく頑張った。


「あー。腹たった。バッセンよ、バッセンで重山だと思って打ち込むぞ。金は払ってやるから、隣で打ちなさい」


 珍しく金を出すらしい。前に出たまひろの逆鱗にこれ以上触れないように慎重についていった。


 本日の探偵部の営業は終了しました。またのご依頼お待ち申して上げております。

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