第2話 瀬名先生の場合

「探偵部の二人にお願いがあるの」

 事前にまひろに「結婚相談所でいつも話がまとまらないのでわらにもすがる思いだ」と、伝えている。


 子どもにお願いする事案では無い。とっとと帰れ。

 ただでさえ、低身長の童顔女子生徒なのに。

 あ、嫌な顔をされた。超能力か。超能力者は俺だけでいい。


「何がお好きなんですか?」


「バッティングセンターでボールを教頭だと思って打ち込むことよ」


「ストレス発散では無く、何が好きですか?」


「そう言えば私、最近幸せ度数少ないかも。趣味と言えば手芸かな。それだけだから、何の応用も効かない。もう三十よ」


「では手芸を一緒にしてくれるような大人がいればいいんですね。容姿にこだわりは?」


「私を拾ってくれるなら、デブでもハゲでもいいわよ」

 またネタがあったら来るわねと言い瀬名せな先生は探偵部から出て行った。


「今回は難題そうだな」


「三人に絞った。これ以上は難しい」


「じゃ、部長さんの推理を聞かせてもらおうか」


「手の内を晒してやるもんか、べー」


 それにしても難解そうだ。

 二日後の金曜日、晴れ晴れとした面持ちでまひろは部室に来た。


「いや、今回はよく練った。結果は大成功だ」


「何をどうした」


「昨日、三人が立ち寄る場所にわざと人形を落としたのよ」


 おとり作戦か。


「喫煙所で清掃員のおじさんは興味が無さそうにしていて、食堂のお兄さんはかわいいとは言ったけど、興味が無さそうだった」


「待て」


「待てない」


「あ、ダメだ。期待を持って瀬名先生が部室に来る」


「見つかったって手紙ありがとうね。それで誰だったの? どんな人?」


 まひろは清掃員のおじさんと食堂のお兄さんの事を伝えた。お兄さんに関してはリストに入っていたらしい。悔しそうにしていた。


「それでですね。唯一、ある人が熱心で作り込みがしていて、大切に作られた人形ですねってかなりめてましたよ。その方が瀬名先生の作った人形を持っています」


「イケメン? ちょっと筋肉質で包容力のある爽やかイケメンよね!」

 デブでもハゲでもいいわよって言ったじゃん。


「教頭先生です」


 うわぁ、人って落胆らくたんした時にこんな声が出るんだ。

 教頭先生は少しふっくらして、未婚の背の低いおじさんだ。


「マタクルワネ」

 そう言って、瀬名先生はフラフラと出ていった。


「見た目では無く心だと思っていた瀬名先生は気の毒だけど、二人は上手くいくと思うな」


「バッセン通っているうちはダメだろ」


「さて、喫茶匙きっささじのメロンソーダが所望しょもうだ」


「味の似た炭酸飲料で我慢しろ部長さん」


 本日の探偵部の営業は終了しました。またのご依頼お待ち申して上げております。 

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