EP.056 新天地
お久しぶりです。
本日2話更新のこちら2話目。前話を見ていない方は前の話から先にご覧くださいませ。それと両方の話で応援コメントなど待っております!
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『──クロウ。もう間もなく、目的地に到着するわ』
通信機越しにそうキャシーに言われて、愛機〈アスター・ラーヴェ〉を操縦するクロウは「そうか」と言う風に返事を返す。
「了解した。ハルカさん。周辺環境を精査してくれ」
鏡越しに視線だけ後ろを見て告げるクロウに、後席へ座る銀髪のオペレーター……ハルカ・エーレンベルクが頷きをもって答える。
「了解しました。周辺を精査します」
言って、広域レーダーで周辺の精査を行うハルカ。
近場にガイストがいないか、それを真剣な表情で確かめるハルカを見やった後、ふとクロウは、視界を外部カメラへ。そこに映る広漠とした森林地帯へ視線を向ける。
「ずいぶん、と遠くまで来たな……」
海外深いように呟きを漏らすクロウ。
……もともとクロウはこの世界とは別の世界の住民であった。
そこでフルダイブ型VRゲーム〈フロントイェーガーズ〉の世界最強プレイヤーであったクロウは、しかしゲームのサービス終了と共に、なぜかそのゲームによく似たこの世界へ愛機であるXTM‐001WC〈アスター・ラーヴェ〉と共に飛ばされることに。
サービス終了直前に受けた【最終高難易度ミッション】とやらと関係して謎の声に導かれたクロウは、その先でガイストに襲われ、命の危機に瀕していたハルカと出会う。
そんな彼女や当時の彼女の上司であったシティ所属のFOF乗りラストと共に、シティ〝カメロット〟に訪れたクロウは、そこで傭兵となり新たに活動開始。
初のミッションで準災害級ガイストである
特に第45観測拠点で起こった
災害級を超えた、人類殲滅級とでもいうべき災厄との戦いに無事勝利し、生存したクロウは、その後キャシーの依頼を受けて一人シティを旅立とうとしたが、それを察知していたハルカが一計を案じたことで、結局彼女と共にシティを飛び出ることとなった。
いま、クロウはそんな母体型ガイストを倒した後に、謎の声から示された新たな目標へ向かうため、その前準備としてキャシーを護衛しながらとある場所へ向かっているところだ。
「キャシー。今から向かう場所は、あんたが普段使っている拠点だったよな?」
『ええ、そうよ。運び屋達の憩いの場。秘密裡に運営されている拠点〝ネスト〟──秘密結社である運び屋ギルドが有する拠点の一つよ』
はたして彼女が言うと同時──
──突然、目の前の森が拓けた。
「うお、なんだ⁉ いきなり森が消えたぞ⁉」
突如として森が消えた。直前までそこにあった木々が消え、光景が様変わりする。
『私達のギルドが持つ環境秘匿フィールドよ。エーテルをバカ食いするって欠点を持つけど、その代わり、こうやってFOFのレーダーすら誤魔化せる隠蔽力を誇るの』
言いながら彼女は自身が操縦する輸送機を降下させていく。
クロウもそれに合わせて〈ラーヴェ〉を
そのまま愛機の両足を地面につけたクロウは、目の前に広がる光景を見やった。
「すげえ、普通に街が広がってやがる」
正しく街であった。3階から5階建てのビルが立ちならぶその光景。
道路は整然と整備され、そこを何台もの自動車が駆け巡る。
シティ〝カメロット〟ほどの大都市とは言えないが、それでも十分に都市と言える光景が広がっているそこを見て驚き固まるクロウとハルカにたいし、輸送機を無事着陸させたキャシーは機体の主機を切りつつ、通信機越しにクロウ達へ話しかけてきた。
『歓迎するわ、世界を救った英雄さん達。ようこそ私達の街〝ネスト〟へ──』
そうしてクロウとハルカは新天地となるその街へたどり着く。
☆
「本当にすごいですね。まさか、運び屋達がこのような拠点をもっていたなんて」
クロウと共に〈ラーヴェ〉から降りたハルカが、発展した街の様子を前にそのような呟きを漏らす。それにクロウも同意するように頷いた。
「ああ、俺も正直ここまで発展しているのは予想外だった」
かなり多くの人々が行き交うその光景は、まさに都市と言うのにふさわしい規模感をしていて、ありていに言えば活気にあふれている。
「確かに疑問には思っていたんです。運び屋と言えば、どこにでも物を運ぶことで知られていますがそれにしては、彼らはどこから来てどこに帰っていくのか、それは知られてなくて……」
「その答えが、このネストっていうことか」
ハルカとクロウが口々と言う中、そんな二人にキャシーが近づいてきて、
「正確には、私達運び屋ギルドが保有する拠点の一つってところだけどね。似たような拠点が他にもいくつかあって、そこには運び屋ギルドに登録されている人間と、その上層部に許可を受けた一部の人達以外は入れない場所なんだから」
歩み寄ってくるキャシーからそう言われて、しかしクロウは怪訝な顔を浮かべた。
「許可を受けたって……俺そんなの受けた覚えないんだけど」
「そりゃあ、クロウ。私が出したに決まっているじゃない。こう見えて私は運び屋ギルドの副ギルドマスターなんだから」
胸を張ってそういうキャシー。そんなキャシーにしかしクロウは首をかしげる仕草をして、
「キャシーが、ギルドの副ギルドマスター……? でもキャシーってずいぶんと若いよな? そんな高い地位の役職に就ける人間じゃないと思うが……」
「それを、母体型ガイストを倒すようなあなたが言うのはどうかと思うけど……ここら辺はまあ血筋とかそういう系の面倒な事情があるのよ。ただ、だからと言って私は地位に甘えるような人間じゃない、とは言っておくわよ」
まあ、それは母体型ガイストを討伐する際に友軍となる傭兵達を運んできてくれたことや、その後の脱出時のあれやれこれやでクロウも実感している。
「まあ、そんな立場の私だから、いまからいろいろと会議とか待っているの……極超音速輸送機も勝手に持ち出したりとかしちゃったし……そういうわけで、あなた達を案内とかはできないけど、ホテルは取っておいたから、とりあえず今日はそこで休んでおいてちょうだい」
一部ボソボソと小声で呟いていて聞き取れなかったが、どうやら滞在先を用意してくれたらしいキャシーが自身の
すると、クロウとハルカのPDにそれぞれホテルの場所とそのためのルームキーが送られてきたので、二人はそれを確認。
「ああ、ありがとう。俺達も長時間旅をしたからな、ありがたく休ませてもらうよ」
ちらり、とホテルの情報を確認しながらそう告げるクロウに、ヒラヒラと手を振りながら、笑みを浮かべるキャシー。
「いえいえ、こちらこそここまで護衛ありがとうね。まあ、とりあえずはお楽しみに」
「……? ああ、わかった。またなキャシー。次、仕事する時もよろしく」
最後の最後になぜかニマニマした笑みを浮かべて去っていったキャシーに首を傾げる。
「それでクロウさん、この後はどうします?」
キャシーが去ると同時に声をかけてくるハルカ。その問いかけは、単純にこれからの予定を聞く物であると同時に……この後のクロウの旅路についての方針を問うものでもあった。
「あー、まあせっかく用意してもらったし、とりあえずはホテルに行くとしてその後は──」
と、そこで言葉を切ってクロウは背後へ──そこにある愛機を見やる。
漆黒をした機体。クロウにとっては前の世界から相棒と言えるそれを見つめた後、改めてハルカの方へと振り返り、そして。
「──エリュシオンライン。そこへ至るための方法について探ろうか」
クロウをこの世界に導いた謎の声。それが示した新たな目標。
そこへ至るための手法を、クロウ達は見つけ出さないといけなかった。
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