EP.051 鬼子母神を討てⅩⅤ/Escape!
カクヨムコンもラストスパート! 〝★〟を! 一つでも多くの〝★〟をおくれ!!
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母体型ガイストの中をクロウは駆け抜ける。
エーテルの臨界爆発。
母体型ガイストがコアを失ったことで、その内部にため込んでいた膨大なエーテルは、その行き場を失くし、結果エネルギーの奔流としてすさまじい破壊を巻き起こした。
暴走するエーテルが爆裂と化して、母体型ガイストの内部で火柱を上げる。
破壊の嵐が、クロウの目の前で次々と巻き起こった。
「クロウさん……!」
後席で叫ぶハルカ。
それと共にクロウの目の前で、すさまじい熱量をもった爆発が発生。
緑色の火柱となって吹き上がったそれは、膨大なエーテルの奔流であり、これを受ければAPRAで守られているFOFとてひとたまりもないだろう。
目の前で起こったそれをクロウは紙一重で避けた。そのまま超高速で飛行する。
「気張れよ、ハルカ! ここからはかなり荒い操縦になるぞ!」
クロウが告げる通り、その操縦は普段よりも荒く。結果HbEが効いているとはいえ、それでもすさまじい重力加速度がコックピット内の二人を襲う。
「……⁉ エネルギー反応多数! すさまじい熱量の爆発が起こっています!」
ハルカの告げる通り、母体型ガイストの内部にはもはや安全な場所など存在しない。
あちこちで起こる爆発。
崩れ行く巨大な構造物。
あまつさえ母体型ガイストそのものも傾き、エーテルの加護を失った巨体が凄絶な軋み声をあげて崩壊しつつあるという状況。
もはや侵入直後に見た景色はそこになく。レーダーに映る地形情報ですら毎秒ごとに変化するような凄惨機割りない状況にハルカが顔を青ざめさせる。
「く、クロウさん。本当に脱出できるのですか⁉」
平静を保つことすら難しいのだろう。普段のハルカならば決して口にしないそんな質問すら飛び出る中で、はたしてクロウは──
「愚問」
一言でハルカの言葉を切って捨てた。
「この程度のこと、俺が乗り越えられないわけがないだろ!」
叫び、愛機をさらに加速させるクロウ。
吹き上がるエーテルの奔流を紙一重で避け、落下してきた構造物は超低空飛行でもって潜り抜けた。地面からの距離わずか数センチというギリギリを駆け抜けその状態で機体を旋回。
そのままクロウは狭い通路を抜け、そうして飛び込んだのは最初に訪れた無人都市だ。
「出口まであと少し……!」
この街の中央。そこに立つ尖塔に出口がある。
広い空間を駆け抜け、そこへ飛び込もうとクロウは最高速まで愛機を加速させた。
だが、その時。
「──⁉ 超高熱源反応⁉ クロウさん、回避してください!」
ハルカの叫び声に機体を旋回させるクロウ。
結果、それがクロウとハルカの命を助けた。
すさまじいエーテルの奔流が二人の目の前で起こる。
これまで見てきたそれよりも、さらに太いそれが生じた。
それだけでも絶望に足るが、それ以上に二人の心胆を寒からしめたのは──
「──脱出口が! 脱出口がエーテルの奔流で塞がれました……‼」
悲鳴じみたハルカの叫び声。
彼女が告げる通り、目の前で起こったエーテルの爆発によって、立っていた尖塔が飲み込まれ、完全に脱出口が防がれてしまっている。
「……ッ‼ ハルカ! 他の出口を探してくれ!」
とっさにクロウがそう指示を出した。それを受けてレーダーに目を走らせるハルカ。
だが、崩壊に伴い刻一刻と形状を変える母体型ガイストの内部は、もはや〈ラーヴェ〉の高性能レーダーをもってしても、その詳細を把握することは不可能で。
「だ、脱出路が見つかりません!」
顔を歪ませ、悲痛な叫び声をハルカが上げた。
周辺をいくら精査しても、その瞬間から情報が意味をなさなくなるがゆえに、ハルカですら脱出路を見出すことができない。
脱出路が見つけられなければ、いくらクロウが高い操縦技術を持っていても無意味だ。
かくしてクロウ達は無暗に母体型ガイストの内部をさまよう羽目となる。
周囲に視線を向け、なんとか脱出路を探そうとするが、しかし見つからない。
そうこうしている間に、崩壊はのっぴきならない状態にまで加速していた。
「どうする、どうする。どうする……!」
焦りを浮かべ、一秒ごとに悪くなっていく現状にクロウは歯噛みする。
活路は本当にないのか、とクロウが内心で絶叫した──その瞬間。
《クロウ! 頭を伏せろ!》
通信機に絶叫が轟く。
突如入ったそれに、半ば無意識で従ったクロウはいっきに低空飛行へ。
地面すれすれまでクロウが愛機を降下させるのと同時、それは起こった。
ドガガガアアアアアアアンンンッッッ‼‼‼
すさまじい爆音がクロウの頭上で巻き起こる。
それは極太のエーテルビームだった。
おそらくは外部から撃ち込まれたそれが、母体型ガイストの体表を抉りながらクロウ達の頭上を擦過──そうして、外部装甲を打ち砕き、出口をクロウ達の目の前に生じさせる。
《猟兵クロウ! 活路は作り出しました! すぐに脱出しなさい!》
再度の通信。今度は女声のそれが響き、指示を下すので、クロウはそれに従う。
開かれた出口へ超高速で吶喊。
飛び込んだ出口は、確かに外部へと繋がっていた。
「クロウさん! 外です! 脱出に成功しました!」
目の前に広がる青空。
凄惨な戦場とは打って変わって清々しさすら感じるそれがクロウ達の視界に広がる。
巨大極まりない鉄の怪鳥が飛び込んできたのは、まさにその時だった。
《クロウ! 私の機体に乗り込みなさい!》
キャシーだ。
彼女が駆る極超音速輸送機〈ホルヴァルプニール〉がクロウ達の目の前に飛び込んできて、そのウェポンベイを解放する。
「───」
とっさの動きで、その内部へと飛び込むクロウ。
それを確認すると同時にウェポンベイが閉じられる。そうしてクロウを格納した輸送機はいっきに加速準備へ入った。
《飛ばすわよ、中の人間は衝撃に備えなさい!》
通信機越しに絶叫を上げるキャシー。
瞬間、〈ホルヴァルプニール〉の後部にある超大型五連エーテルプラズマジェットが膨大な熱量を吹き出した。超絶的な推力を発生させて機体を蹴っ飛ばす。
一瞬で極超音速にまで加速した〈ホルヴァルプニール〉
その速度は爆発圏から離脱するに十分で、そうしてクロウ達が安全圏に退避するのと──
──それが、起こるのは同時だった。
────────────────────ッッッ‼‼‼
臨界点を迎えた母体型ガイストが爆発する。
地上に太陽を顕現するがごとき熱量を生じさせ、大地を抉るエーテルの爆炎。
発生した巨大な火球は大地を抉り、母体型ガイストの巨体はおろか、その周囲に展開する配下ガイスト達すらも巻き込んで蒸発させていく。
地上にあってはならない熱量により、空気が膨張して音速の壁を軽々と突破。結果、数百キロ先のカメロットにまで届くほどの衝撃波が生じた。
地面の地表がめくれ上がり、途中にあるブレド高原がはじけ飛んで平らな平地へと変貌。
さらにはグラム渓谷の半分以上が吹き飛び、弾き飛ばされた岩塊があちこちに降り注いで、渓谷に大穴を開けていく。
そうして地形を大きく変えながら巻き起こった大爆発。
クロウはそんな光景を機体外のカメラと接続した上で目撃した。
「……なんとか、生き残ったな」
安堵の息を吐きながら告げるクロウの言葉に、同じ光景を見ていたハルカも頷きを返す。
「ええ、私達は生き残れましたね」
《私達は、だけじゃないぜ》
通信。
自分達へ呼びかけたそれに顔を上げた時、クロウはウェポンベイに存在する複数の機影を見る。その内の一機、黄色いカラーリングが施されたそいつがクロウを見やり、
《俺も、A‐2も、傭兵達だって生き残ったぞ、クロウ》
「ラスト……!」
ラストがそこにいた。
いや、彼だけでなく、カノンバスターを必中させるため観測任務に出た浮遊型フレームや、傭兵達の機体までもがそこへ確かに存在している。
《ったく、とんだ面倒事だったぞ。もう二度と同じことはしたくない》
《はは、そういうな。我々は人類を救ったのだ。これは誇るべきことだろう》
《じ、自分も生きて帰れるとは思ってもいませんでした……!》
口々にそう告げるFOF──否、
彼らの機体は決して無事とは言えない。誰も彼もが機体に酷い損傷を負っていた……たが、それでも全員が無事だという事実にクロウは顔を歪ませる。
「……そうか、勝ったんだな、俺達」
クロウの言葉に、ハルカもまた同じような表情を浮かべて、ええ、という頷きを返した。
両目の涙をぬぐいながらハルカがそれを告げる。
「はい、勝ちました、私達は滅びの運命に──」
顔を上げるクロウ。
決して少なくない犠牲を出し、それでもなお生き残ったというその事実を噛みしめながら、クロウは両眼を閉じる。
そうして目を見開いたクロウは、戦友達にそれを告げた。
「帰ろう、カメロットに」
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カクヨムコンもラストスパート
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