EP.032 可能性の開拓者Ⅵ/鴉は駆ける、人狼は食む
【謝罪】
本日の投稿分について、間違えて別作品で投稿してしまいました。
それをここに謝罪いたします。
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エーテルビームブラスターを破壊するため、クロウはさっそく行動を開始した。
「こちら、クロウ。ラスト聞こえているか?」
『ああ、聞こえている。通信の環境は悪いが、どうした?』
クロウの呼びかけに、即座の返答を返すラスト。
いまも激しい戦闘が続いているらしく、その奥で激音を響かせる相手へ、クロウも手短に要件を告げた。
「こっちであのデカブツ……エーテルビームブラスターを叩く。許可をくれ」
『……! ああ、頼む!』
ラストからの許可ももらい、さっそくクロウはエーテルビームブラスターを破壊するため、加速。愛機〈アスター・ラーヴェ〉を人型モードから
スラスターから青白い光をたなびかせながら、グングンと上昇したクロウは、古の都市の頭上へと飛び出す。
「クロウさん! エーテルビームブラスターの方角を表示します!」
ハルカが機器を操作し、エーテルビームブラスターの位置を示す。それを受けてクロウは機体の機種を翻し、そちらへ向かって一直線に突っ切るクロウ。
すさまじい速度で古の高層ビル群の頭上を突き進むクロウに対し、もちろん、相手もそれを許しはしない。
チカッ。
「───」
光。
それを感じた瞬間、クロウはほとんど勘だけで、機体を大きく旋回させた。
直後、それまでクロウがいた場所を一筋の閃光が貫く。
「狙撃⁉」
「厄介な!」
クロウは、舌打ちを漏らしながら一度機体を降下させた。狙撃から逃れるため、ビル群を遮蔽に使おうと意図してのことだ。
「いまのはいったい誰が──」
「照合取れました。いまの狙撃はバルチャー〈ウェヴォルフ〉によるものです! エーテルビームブラスターのそばに陣取って、こちらを狙撃しています!」
クロウの疑問に対し、先んじて情報を精査していたハルカが答える。
それと同時に、ダイレクトリンクで機体のカメラアイと接続していたクロウの視界内に、各種の情報が表示された。それは事前ブリーフィングで配られていたバルチャーの情報の一つ。
頭部は遠隔狙撃に特化した、精密精査型。
ほとんどの武装を廃した代わりに、両腕に抱えるように持った大型の狙撃仕様エーテルパルスライフルがそのFOFへクロウは視線を向け、
「狙撃とはまた珍しい」
基本的にFOFはAPRAという絶対的な装甲によって守られている。
これを削るには、エーテルを纏った武装で攻撃する必要があるが、このエーテル自体、距離によって減衰する作用を持っていた。
ゆえに、通常長距離狙撃というのは減衰率が高すぎてFOF相手には意味をなさない。
またガイストを相手にする場合も、大量のガイストをいちいち遠くから狙撃するより、中近距離からエーテルランチャーやビームライフルによる連射で爆撃したほうがよっぽど効率的に倒せるとあって、あまり普及した武器とは言えなかった。
ゆえに狙撃武装を珍しいと評したクロウ。
それに対してハルカがこう返してきた。
「相手の武装はエーテルパルスライフルです。威力自体はそこまで強くありませんが、被弾したら確実にFOFの動力系が不具合を起こします!」
「そりゃあ厄介」
クロウの〈ラーヴェ〉が武装している三連エーテルビームランチャーと同じだ。
被弾すれば、APRAを貫通し、内部の駆動系に異常を起こすエーテルパルス。
バルチャー〈ウェヴァオルフ〉の武装は、それを引き起こすエーテルパルスライフルであり、狙撃と言えども、飛行するクロウとしてはできれば着弾したくはないものだった。
「なら、ビルの合間をかいくぐって近づきますかね!」
言いながらクロウはビルの間を超速度で突っ切っていく。
ビルとビルの間は場所によっては100mもないような隘路。
それをしかしクロウは臆することなく〈ラーヴェ〉で飛行していき、大回りながらも着実にエーテルブラスターへ接近していった。
「あと少し!」
もう少しでエーテルビームブラスターを射程に捕らえる。
射程圏内に入れば、あとは超速度で接近するだけ。相手が狙撃してこようが、それよりも早くエーテルビームブラスターを破壊できる自信がクロウにはある。
接近できれば、自分の勝ちだ、と唇の端を吊り上げるクロウ。
……だからこそ、クロウにとっても次に起こった現象は完全に予想外であった。
「え──」
光。ビルとビルの合間、FOFですら通り抜けることすら難しいその隙間の向こう側で、生じたそれをクロウは見て──
──直撃。
放たれたエーテルパルスビームが、クロウが駆る機体の中央を貫き、その導力系を大きく乱した。機体が墜落する。
「───⁉ 野郎、ビルの間を抜けて狙撃しやがったッッッ!」
ビルとビルの隙間。
もはや10メートルもないのではないか、というそこを通り抜け、さらには音速に近い速度で飛行するクロウへ精確に直撃させたウェヴァルフ。
さらにそこへ──
「……ッ⁉ クロウさん、複数の敵影です!
悲鳴じみたハルカの叫び声が響く。
機体搭載の広域レーダーに無数の直立重機の接近が感知された。
普段ならば敵ともいえない存在である直立重機。
だが、一時的に機体の制御が不能になっているクロウにとっては、決して侮れない存在となっていた。それにクロウが唇をかみしめる。
「とにかく一度、機体を人型にする!」
言いながら〈ラーヴェ〉を人型モードへ変形させたクロウ。
そうしながらもまだエーテルパルスの影響を脱し切れておらず、動きが鈍い。
「……こりゃあ、いつもみたいに高速戦闘ができねえな……」
表情を険しい者に変えながら、そう呟くクロウ。そうしている間にも近づく直立重機たち。
そうしてクロウ達が危機的状況に陥っていた──まさに、その時。
《──もし、手助けが必要ですか?》
通信。突如として入ってきたそれに、クロウとハルカが目を見開く。
通信機に目を走らせれば、クロウ達に回線を接続している存在がいた。
表示されている名称はB‐1〈ブリューナク〉
シティ〝カメロット〟の爆轟機士団において機士団長を務める女性FOF乗りがクロウ達へ話しかけてきた。
《こちら、爆轟機士団機士団長B‐1。独立傭兵クロウ。あなたに対する支援をF‐1より要請されました。もし必要ならばこちらから爆撃を行います》
長距離砲撃仕様の
それを受けて、クロウは即座に反応を返す。
「頼む! いま直立重機に囲まれているんだ!」
《承知いたしました。では、諸元をお送りください》
落ち着いた声音で、そう要求されたので後席のハルカが周辺の情報を諸元としてB‐1に対して送る。
それから間もなく。
砲撃。
B‐1が放ったエーテルの砲弾が頭上より降り注ぎ、爆発を起こして、クロウの周囲に展開していた直立重機たちが一機残らず破壊された。
「うわ、すげえ」
通信から間もなく、諸元を送られただけで精確に砲撃してのけたB‐1の技術に驚く。
《独立傭兵クロウ。要請は達成しました……ほかに支援はいりますか?》
B‐1からの再度の問いかけ、それに対して返答したのは、ハルカだった。
「マ……B‐1。そちらからエーテルビームブラスターを砲撃できますか⁉」
ハルカの問いかけ。それに対してB‐1はと言うと、
《ふむ。エーテルビームブラスターですか、報告は聞いていますが、すみませんこちらからでは砲撃のために必要な情報が拾えませんので砲撃ができません。また、砲撃したとしても、膨大なエーテルを纏うそれに対して砲撃がはたしてどれほど効力があるかと言うと……》
周囲を切りで覆われている遺構都市リヴァイア。それに対してB‐1はそこから離れた場所に陣取っており、どうしても砲撃の──それも目視圏外への間接射撃のため必要な情報というのをB‐1側で取得できない状況にあった。
加えて一発撃つのにFOF30機分ものエーテルを必要とするエーテルビームブラスターはそれ自体が、APRAとも似て非なるエーテルの守りをブラスター本体に与えており、とてもではないが、遠距離の砲撃では破壊が不可能だ。
ハルカとてそれは百も承知。
その上で、彼女が告げたのは次のような言葉だった。
「ええ、ですから、その近くに展開しているFOFを攻撃してほしいんです。一時的にでも、その機体を行動不能にできれば、それで……!」
通信機越しにそう嘆願するハルカ。それに対してB‐1は──
《ああ、それならば可能です》
さらり、となんでもないことのように請け負うB‐1。
いっそ、軽い調子でそう告げた彼女の態度にハルカどころかクロウですら拍子抜けする中、やはりB‐1はどこか軽い口調のままこう告げてくる。
《わかりました。それでは、爆轟機士団機士団長B‐1〈ブリューナク〉──その腕前を、ご覧に入れて見せましょう》
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本日は用語集なし、単なる宣伝をば。
【新作宣伝☆】
タイトル「転生恋戦~転生者の俺だけど、国から決められた婚約者がすっごく甘やかしてきます。どうしよう~」
作品ページURL:
「https://kakuyomu.jp/works/16817330666083845260」
第1話URL:
「https://kakuyomu.jp/works/16817330666083845260/episodes/16817330666083892476」
魔法あり、バトルありの男性向け異世界ファンタジーラブコメです! ぜひご覧ください!
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