第4話 王様からの命令
町が魔族による襲撃を受けてから一週間、町の復興も進みボクやアレンのケガも回復し、皆と一緒に瓦礫の撤去をしている。
住民への被害はなし、町に魔物が入ってから全員が教会に立てこもることが出来たのが大きかったのだと思う。兵士の人たちは何人も死んでしまった。衛兵長はあの規模の襲撃でこの程度の被害で済んだのは君たちのおかげだって言ってくれたけど、守れなかった人たちのことを思うと悔しくて、苦しかった。
ボクが復興作業を手伝っているとアレンが来た。
「そろそろいいだろう、僕たちがいなくてももう町は大丈夫だ。騎士団の人達もいるし、騎士団長に言われた通り、王都へ行こう。今度商人が来るらしいから、帰りの馬車に乗せていってもらう予定だ」
「うん…、でも王様の命ってなにかな?」
「さてね、ただ僕たちがただの村人ではいられなくはなるかもね」
なにやら難しい顔をしたアレンがボクの質問に答える。難しいことは全部アレンに任せていればいいや、ボクはそう思うとなんだか安心してしまった。
次の日、商人の人が来て、アレンが事情を説明して送ってもらえることになった。
「王都までは馬車で二日ってところだ、途中野営をするから護衛として雇う形でいいかな?」
「構いません、街道は安全ですし、僕達もある程度は戦えます。魔物の一匹や二匹なら問題なく処理できると思います」
「そりゃ心強い、さすがは町の英雄だな」
商人が荷物を店に卸して、空間の空いた馬車にアレンと二人で乗り込む。
王都への道のりは順調だった。一日野営をしたけどなにもなかったし、問題なく王都へとたどり着くことが出来た。
ボクたちは商人の人にお礼を言うと、お城に向かって歩き始めた。
お城に入ろうとすると兵士の人に止められた。
「ここは王城だ。予定の無いものの入場は許可されていない。紹介状はあるか?」
「いえ紹介状はありません。僕たちの町が先日魔物の群れに襲撃されて、その際増援に来てくださった第三騎士団の騎士団長に、後から王城へ来るようにと命令されたので、こちらに参上させて頂きました」
「む、そうか、確認してくるのでしばし待たれよ」
そういうと兵士の人が他の兵士の人に命令して、確認しにいってくれたみたい。来いって言ったのに入れてくれないなんて変なの。
二人でしばらく待っていると、兵士の人が帰ってきた。
「確認が取れました。アレン様とエミリ様ですね。明後日玉座にて授与が行われます。それまで待機せよとのことです」
「!!ありがとうございます。あとすみませんがあまり高くない宿を教えていただけないでしょうか、手持ちも多くありませんので」
「それならこのここから左手の道に沿って歩くと、食事処があります。その道を右に曲がってしばらくすると宿があります。そこがちょうどいいかと」
ありがとうございますとエレンがお辞儀するのを見て、ボクもそれに遅れてお辞儀をする。アレンが歩きながら言う。
「これで宿泊代が浮いたな。騎士団長から金貨10枚貰っているからこれで魔術の本が買えるぞ」
「え~アレン、お金ないって言ってたじゃん。嘘はだめだよ嘘は」
「心もとないのは本当のことだ。2泊するんだ、抑えられる出費は抑えたほうがいい。元々快適な寝具なんて僕達には遠い存在だろう?王都の基準であまり高くない宿なら僕達には十分なものだよ」
「そういうものかな」
「そういうものだ」
アレンは口がうまい。でもアレンが必要っていうならそうなんだろう。
「そんなことよりボクおなかが減った、何か食べに行こうよ」
「そうだね、さっきの兵士が言っていた通りならこっちにいけば、食事処がある。そこで昼食をとることにしよう」
「もうおなかペコペコだよー」
ご飯を食べた後は、そのまま宿に泊まった。
次の日は王都を散歩した。初めての王都は目新しいものばかりで、色々な買い物をしたり、屋台で買い食いとかをした。アレンは魔術の本を値切っていた。金貨1枚得したらしい。すごいなあ。
王都に来てから二日目、予定していた王様との面会をしに再び王城へときた。今度は兵士の人が案内してくれた。ボク達は王様がいるなにやら煌びやかで、大きな柱のある大きな部屋に入った。部屋に入る前にアレンが、僕の後をついて同じようにするんだ、エミリは何も言わなくていいよ、と言ってくれたのでアレンの一歩後ろをついていくように歩く。
部屋に入り、王様の前まで進んでいくと、アレンが片膝をついて顔を下げるので、慌ててボクも同じ姿勢を取る。
「よくぞ参った、英雄達よ。面をあげよ」
顔をあげていいのかな?チラリとアレンを見て同じように顔をあげる。
「此度の魔族による魔物の襲撃、その撃退に多大な尽力をしたと聞いている。名を述べよ」
「はっ、アレンでございます」
「え、えーとエミリと言います」
ばか、僕に合わせろと、アレンが肘でつつく。
「よい、作法など気にしておらん。ところでアレンよ、現在の魔王軍の戦況は知っておるか」
「はい、王国への魔王軍の侵攻続いており、各地で被害が多発していまます
「ふむ、そこまで分かっておるならよい。現在我々は魔物の脅威に晒され続けておる。その防衛には人員が足りておらん。辺境の村までに騎士団の手が回っていないのが現状だ。そこで国としては強力な力を持つものを勇者として支援いていることも知っておるな?それをお主らに担ってほしい」
「待ってください。確かに平民からの登用もあると聞いていますが、それはあくまで志願とのこと、私達では力不足かと存じます」
アレンがなにやら焦ったように王様に返事をしている。
「しかしだな、今は一人でも多くの人員が必要なのだ。お主らが参加してくれることで、多くの人が、ひいては今回のような被害を減らすことも出来るのだ」
町を救える……、今回はたまたま上手くいったけどまた守り切れるとは限らない。それに死んでいった兵士の人、その人たちにも家族がいる。
「……ボク、なります。勇者になって皆を守る」
「ばか、何をいって、危険なんだぞ。命の保証もない。そんな危険な旅に僕達が参加しなくても他の勇者の人たちが守ってくれるさ」
「でも、ボクには力がある。それにアレンがいるならボク達は負けない。魔王を倒して皆を守るんだ」
「そうか、そちは参加してくれるのか、ではそちらの男は不参加ということでいいかの?」
「いえ、私も参加します。彼女を一人には出来ないので」
「一人になどさせんよ、安心してもらっていい。こちらからも人員を出そう騎士団から一名、教会からも一名寄こす。その四人で是非民達を救って欲しい」
「はい!!」
「よろしい、それではエミリには勇者、アレンには賢者の称号を与える。精進するように」
ボクが勇者!なんだか似つかわしくないけど王様に言われたなら名乗ってもいいかな。アレンは賢者だって、賢いアレンにはぴったりの称号だ。
喜んでるボクの横で、悔しそうな顔をしているアレンがいた。皆を守れるならアレンも喜んでくれると思ったのにな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます