第7話 続くいじめ



 オレは登校中にふと思った。なぜ学校はこんなにも退屈であるのか、と。

 有名な学者でも専門家でもなんでもいいから、誰か説明してほしい。月曜日の学校がなぜこんなにも億劫であるのかを。


 しかし世の中にはラブコメのような毎日を送ったり、群れてワイワイする人種もいる。そいつらはこの憂鬱な気持ちなどほとんど理解できないだろう。

 

 くそ、そこのリア充め! 今に見てろ! あと一ヶ月したら別れてるからな!

 目の前でくっ付いたり離れたりとイチャイチャを繰り返すカップルに呪いをかけたところで不意に疑問が湧く。


 茜は恋人がいるんだろうか。

 あれだけの容姿なのだ。そりゃ恋人の一人や二人や三人くらいいても何ら不思議はない。というかそもそも彼女は何歳だ? 18歳? おそらく同い年かそれ以上といった感じ。少し年上にも見えるが……いや、今いくら考えても答えはでない。

 

 考えていると、気づけば自分の教室に辿りついていた。

 オレはそのまま教室に入ると、


「お~無能! やっと来たか。おせーよザコ。早く俺の実技服持ってこいよ」


 いや、まだ教室に入って一秒だぞ。

 しかし拒否権などないのだ。仕方ない。甘んじるか。

 いつも通り実技服を持っていく。


「おい、無能菌つけてないだろうな!」


 はい、またこれ。


「はははっ! 無能菌ついてたらどうなるんだよっ!」

 

 腹を抱え笑う取り巻き達。

 すげえよ、毎回これで笑えるのはある意味才能だ。頭の病院に行くことを強くお勧めする。


「そりゃレベル数値がみるみる減っていって……とうとう最後は『-1』になるんだぜ! くはっ!」


 残念、不正解だ。モテ男A。

 能力レベルの数値はあくまで体内のマナを試験用水晶玉に光学的情報として反射させ算出される数値。つまり反射している時点でそのマナの数値を形式上しているのだ。

 みるみる減る、ではなく二次関数的に減る、が正しい。


 そして二乗して「-1」になる解などこの世には存在しない。そう、実際の数字では。

 4は確かに2×2だ。同じく「7=√7×√7」と表せる。

 全ての能力レベルには「実数解」が存在する訳だ。


 じゃあ「-1」は?


 モテ男A、あんたがオレを蔑むのもイジメるのも別にいい。興味もない。だがオレはお前をいつでも捻り倒せる。そうしないのは、その行動に意味などないし、お前達にそんなエネルギーを使う価値もないと判断しているからだ。


 オレは白愛さえ守れれば……養えればそれでいい。

 そのために異能士として働いて収入を得る必要があるだけ。


「おい、なんだその目は!! ああ?? やんのかコラ!」

 

 言ってオレの腹を蹴り飛ばしてくる。直後腹部に広がる火傷のような痛み。

 いや、言いがかりだろ。完全に。


「はっ、受ける、意外と耐えてやんの!」

「もっとやれよ、無能の分際で!」


 その後も何度も何度もぶん殴られた。

 あー、体中いてえ。


 そして一時間目からこの実技服を使う授業がスタートした。

 今日は異能実習、またの名を実技演習の日。内容はご察しの通りである。

 高二からは異能決闘などもあるそうだが、高一の現在は許可が下りた者同士しか決闘できない。


 そしてオレがこの実習を嫌っている最大の理由……それは、オレには異能がない……そう周知させているから。

 それによって何もすることが無いので、毎回演習場の隅でマナを練り上げる訓練(フリ)をしている。


 実際はオレにも異能がある訳だが、オレの異能領域は少々特殊で『虚数術式』という虚構を扱う術式モノ。オレの場合は「空間」を制御・操作する異能『境界』。


 茜などは常識的に知っているだろうが、試験の水晶玉へ入力するマナのレベルは頑張れば操作できる。入試の時、オレもレベル「5」くらいにセットしようとして誤って虚数のマナを流してしまった次第だ。

 

 まあ別にその事はどうでもいい。厄介ごとに巻き込まれたくないし、オレとしてはわざわざ自分の実力を他人にばらす必要性が皆無という訳だ。

 こっちの方が断然楽に卒業できるしな。マナを練るフリをしていればいいのだから。


 演習場に入るとオレ以外の一年はほとんどが来ているようで、既にグループを作り談笑中。

 普段自由に異能の能力を使えないからストレスが溜まっていたのだろう。


 担当女性教師が来ると、途端静かになり整列し始める。

 巨乳教師・沢谷 凛子(29歳独身)が見回る演習場で行われる実習は、それぞれの区分けフィールドで異能をぶっ放したりする授業。


「それでは今から異能実習を始めます。これは最近多発している急な影人出現の際に自分の身を守る為の非常に大切な授業です。真剣な気持ちで臨むように」


「はい!」


 特に男子生徒が元気よく声を上げる。

 変態ばっかだなこのクラス。


「それではそれぞれ区分けのフィールドについて、各自異能を展開させてください。私が各々に見回り、指導します」


 その言葉を皮切りに、全員が異能を発動させる。

 空気抵抗を操る者、波動を発生させる者など多種多様。


 オレは演習場の端の方へ行くと、マナを練る訓練(フリ)を始める。


「さて」


 他人に悟られぬよう「浄眼じょうがん」を発動。

 瞬間、視界が情報次元に移り演習場全体を手に取るように視認する。特に思念とマナがよく見える。


 一年の中で一番強いのはやっぱり異能『氷霜ひょうそう』の一条 冷華だな。この人は正直別格。

 モテ男Aも悪くはないが、まあ普通か。威張ってるわりには、という感じがする。


「あ~くそ! うまくいかねぇ!!」


 地団太を踏むモテ男A。

 預言しよう。あのストレスは後にオレへと放出されるのだ。

 

 面倒極まりない。





――――――――――――――


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


面白そう、続きが気になる、という方は☆☆☆やブクマをしていただけると嬉しいかぎりです。


作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします


あと、のちにちゃんとざまぁするので安心してください(?)。



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