第18話 別れ
「魚を焼いてどうすんの? 出ていく? 禁断症状出るよ。今のままでいいでしょ」
「炭火で焼くからいいんだよ。あるんだろ」
「明日またさせてあげるしさ。いいじゃん、このままで」
「予備校のバイトでひとまず八万もたまった。仕送りもほとんど使っていない。バイトを続けたらどんどんお金も入る。明日から
「ここだったら安いよ。いい物件だと思うよ。ちょっと田舎だけどいいじゃん」
「セフレでは無理なんだ。いくら性欲を満たせても未来が見えない」
「セフレから本命になるかもしれないよ」
「二十倍に賭けたくない。俺はさ、朝起きたら一番におはようって言って、帰ってきたら一番早くお帰りっていう関係になりたかったんだ」
「今でも出来るよ。お願い、僕を捨てないで」
鱈を買うまでも無かった。ここでさよならだ。
きっと河出は嫉妬させたかったのだろう。二十人もきっとほらを吹いただけだ。そういう嫉妬させる為に策略を実行する人間は嫌いなんだ。
「もっと君のこと大切に出来るよ。ショッピングモール楽しかったでしょ。うどんトンカツやアイスクリーム。お揃いのマグカップ大事にするよ」
「今までありがとうな。
「最後なんてやめてよ。待って」
僕は振り返らずに扉を閉めた。そして大家さんに電話した。
「明日出ていくんで、河出を出さないでください」
「迷惑かけたね。今日はどうするんだい」
「予備校近くのネカフェで過ごします」
「分かった。すぐに帰るね」
「よろしくお願いします」
朝に一度帰った。荷物は参考書程度だ。リュックでこと足りる。対策ノートにはこう書きだした。
『隣の河出という男はノンケでも構わず食う。嫌なら関わらないこと、酔って襲っても本人は覚えている。伊福部明』
これでいいだろう。
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