第17話 出会った頃に

「女の子と付き合ったことがあるってだけだよ」


「そいつは可愛かったか」


「可愛くて恥ずかしがり屋さんでキスに半年もかかった。今でも会うよ。セフレだけどね」


 え、なんで。河出はホモで男だけを抱いて、男だけと出かけるやつでは無かったのか。


「僕はバイなんだ。話すのは初めてだね」


 いちにさんし。


「止めろよ」


「止めないよ。いくふべ君が聞いたんだよ。今繋がっているだけでも二十人くらいかな。パパもいて、お小遣い貰っているよ。あれれ、僕が清純で初めてだって思った? いくふべ君にはこういう対応がいいかなって思ったからだよ。僕無しでは生きてけない体になってかわいそう。君の体、僕が満たしてあげるよ」


 夢を見ていた。


 いつか家族に紹介する。


 理解を得られなくても二人で生きる未来を。


 それはもう既に叶わない。


 暴力的な河出には何度も満足させられた。


 それは確かにそうなんだ。


 きっとこの部屋の片隅にたくさんのプレゼントが入っている箱がある。


 それぞれと会う時に持ち出すのだろう。



「最後にさ、炭火でたらを焼こう」


「すぐにくっつくよ」


「アルミホイルの上で焼けばいいだろ」


「鱈なんて持ってないよ」


「買いに行けばいいだろ。どうせ大家さんの車もあるし」

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