第19話 それから

 この日から俺は違う町の予備校に転校した。確かにたまにあの肉感かんしょくは思い出す。それぞれ付き合った女の子に過去のことを正直に話せと言われ素直に話すと連絡が取れなくなる。

 

 汚い、汚らわしい。ただの恋愛で無いので、生々しく相手も不快だろうと思う。


 運よく入った大学で出会った女は最初から打ち明けた俺に「女は好きでなくていいが、私を好きにさせてみせる」と言い、少し時間をかけて彼女を好きになり、おはようとお帰りを一番に言えるような家庭を会社員になり手に入れた。


 隣人は今日も男を漁っているのか今更考えることでは無い。


「伊福部君、この久保田荘っていう物件なんだけど、家主が変わって確認を取って欲しいけど、いいかな」


「そこの人、昔」


「変なことに巻き込まれたって言っていたね。分かった他に回すよ」

 河出聡。前の大家は死んだのか。

 

 自ら危険地帯に行くほどのアホではない。

 今日も俺は一番にお帰りを貰って、たくさんのおはようを貰おう。

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