第14話 僕たちの初めて

 今度はこちらから乱暴なキスをした。それは男が男をむさぼる本能的なキスだった。舌を入れるとか、歯茎はぐきを舐めるとかテクニシャンではない。


「返事、たこ焼き器の火」


「消したんだろ。そうじゃない、今は俺だけを見ろよ」

 とは言え、河出が弱いところを知らない。押し倒したもののプランは無い。


「いくふべの好きにして」

 穴に入れたいこいつの中を俺まみれにしたい。もうすでに立っていたものをほぐしていない穴に挿入しようとしても入らない。


「ちょっと痛いかも」


「分かった。これからいっぱい勉強しような」

 頭をなぜると河出の顔がとろけた。


「僕、もう限界。いかせてください」


「その前に俺を満足させろ」


「なんで?」


「お前の体を俺まみれにしてから、屈辱的にお前を汚す。手でこすれよ」


「こんな感じで気持ちいい?」

 正直、気持ちよくはない。下手でつたない手つきはそれだけでは達するには足りない。

 だが、あんなに強気だった男が一生懸命に俺をこすっているシチュエーションに興奮して達した。


 達しそうになり、手から外し、河出の手のひらからあふれたソレは河出がいつも使っているベッドシーツに落ちる。ほうけている河出に違和感を覚え、河出の下半身を見ると触っていないのに達していた。


「触ってないのにいくなんて、お前はクソ変態だな」


「はぁはぁ、恥ずかしい。そんなことを言わないで」


「その俺まみれでたこ焼き食べるつもりか」


「シャワー入る。もうだしすぎだよ」


「俺も汚されたから二人で入ろう」


「僕の体、見たいだけでしょ」


「悪いかよ」


「いいよ」

 たこ焼きは二人でハフハフいいながら食べた。ビールを買っておいて良かった。五百を三缶目に突入した辺りから河出が船をこき始めた。疲れたのだろう。

 火を消して残りを食べることにした。幸せそうな寝顔に少し癒される。何か重要なことを忘れている気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る