第11話 淡いデートの計画

「止めろ」


「あんなにしてくれたんだ。次は俺の番でいいだろ」


 自分のベルトを外し、ズボンを脱がそうと誰か知らない男が河出を襲っている。河出は必死に暴れている。こちらを見た河出の目で覚悟は決まった。少しかゆの残った耐熱皿を男の背中に振り上げた。


 衝撃で驚いたのか、男は振り返り、声を震わせた。


「俺の男に手を出すな」


「なんだと?」

 あのサラリーマン風の男だった。


「俺はな、河出で出したぞ」

 正式には河出に犯されそうになったあとにトイレで致しただけだ。


「なんだと」

 興奮か俺の体が震えている。


「お前は河出の弱いところを知っているか。河出は」


「言うな言うな、言うな!」

 奇声きせいをあげ、カバンを持って部屋から出て行った。二人だけの空間、安堵あんどというより緊張感が続いている。


「なぁ、いくふべ。僕の弱いところ知っているの?」


「知っていたらどうする」


「酒飲んでめちゃくちゃに犯してやる」


「俺は酒飲んでいない河出なら致してもいいぞ」


「強気にいいやがって、皿片付けないとな」

 幸い割れてはいなかったが、大きくひびが入っていた。もう使えない。


「ま、これも何回か使ったし、仕方ねぇな」


「いくふべ。次の休みはいつだ」


「予備校に休みは無いぞ。自習だからな」


「違う、講義が無い日」


「明後日の日曜なら休みだ。自習に行くけどな」


「耐熱皿買いに行くぞ」


「いいよ。気にするな」


「僕が買いに行きたいんだ。付き合え」

 ということで日曜。予備校はスルーして、予備校近くの大型ショッピングモールにやってきた。


「手、繋ぐ?」

 俺が聞くと河出は反射的に。

「馬鹿野郎。調子に乗るな」

 と、言った。

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